女性の頭皮のかゆみの原因は?治療方法と放置するリスクを医師がわかりやすく解説

女性の頭皮のかゆみの原因
この記事を監修した医師

竹内 想 医師

名古屋大学医学部附属病院

医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務。

「頭皮がかゆい……」そんな悩み、女性なら誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。特に女性はホルモンバランスやライフステージによって頭皮の状態が変わることも多く、その原因や対策は一筋縄ではいきません。

今回は、頭皮のかゆみが起こる一般的な原因から、女性特有の原因、さらにはその対策を詳しく解説します。かゆみが気になるあなたも、これからかゆみに悩まされる可能性があるあなたも、ぜひ一読して、頭皮の健康を取り戻しましょう。

目次

頭皮にかゆみが発生する一般的な原因

頭皮にかゆみが発生する一般的な原因

頭皮のかゆみが気になると、日常生活にも影響が出てきますよね。その原因は一体何なのでしょうか。ここでは、頭皮のかゆみが発生する一般的な原因について解説します。

皮脂の過剰分質

皮脂の過剰分泌は、頭皮がテカテカとしていたり、シャンプーしてもすぐにべたつくと感じたりする場合の主な原因です。皮脂が多いと毛穴が詰まり、それがかゆみを引き起こします。特に暑い季節やストレスが多い時期には、この症状がよく見られます。

過度な洗髪による乾燥

逆に、シャンプーをしすぎると頭皮が乾燥してしまい、それがかゆみの原因になることもあります。頭皮の自然な油分を取りすぎてしまうと、皮膚が乾燥し、小さなひび割れから炎症を起こしやすくなります。

アレルギー

シャンプーやトリートメント、ヘアカラーなど、頭皮に直接触れる製品に対するアレルギーも、かゆみの一因です。特に新しい製品を使い始めたら、かゆみが出た場合はすぐに使用を中止し、皮膚科に相談することをおすすめします。

脂漏性皮膚炎

頭皮から白いフケが多く落ち、そのかゆみが治らない場合、脂漏性皮膚炎が疑われます。脂漏性皮膚炎は頭皮だけでなく、鼻や頬、耳など皮脂の分泌が多い部位にも出現します。

特に男性に多い疾患ですが、女性にも症状が現れることがあります。生後数週間から40歳くらいまでの幅広い年齢層で発症します。明確な原因は不明ですが、皮脂の貯留、マラセチア菌の増加、ストレス、食生活の偏りなどが影響しているとされています。

アタマジラミ

子供が集団で遊ぶ場所でよく見られるのがアタマジラミです。アタマジラミは小さな寄生虫で、頭髪に寄生して吸血し、かゆみや湿疹を引き起こします。感染は主に子供同士の接触や、家庭内での布団、バスタオル、ヘアブラシなどの共用によって広がります。

アタマジラミ自体はウイルス感染症などを引き起こすわけではありませんが、かゆみを引き起こし、それが原因で皮膚が傷ついて二次感染を起こす可能性があります。

頭皮にかゆみが発生する女性特有の原因

頭皮にかゆみが発生する女性特有の原因

女性にとって、頭皮のかゆみは特に厄介な問題です。なぜなら、女性特有の生理や、ホルモンバランスの乱れが影響している場合が多いからです。ここでは、頭皮にかゆみが発生する女性特有の原因について解説します。

女性ホルモンのエストロゲンの低下

女性ホルモン、特にエストロゲンは、皮脂の分泌を抑制する働きがあります。生理の前にはエストロゲンが多く分泌され、肌がしっとりとして皮脂の過剰分泌が抑えられます。

しかし、生理中などのエストロゲンが低下する時期には、皮脂の分泌が活発になり、それが頭皮のかゆみを引き起こす可能性があります。エストロゲンの減少によって肌の乾燥が進むと、頭皮もその影響を受け、かゆみが発生しやすくなります。

妊娠・出産

妊娠と出産は女性にとって大きなイベントですが、この期間はエストロゲンの分泌が大きく変動します。特に出産後はエストロゲンの分泌が急激に減少し、皮脂の分泌が増加します。

さらに、新生児の世話で忙しく、セルフケアに時間を割く余裕がなくなることも多いです。結果として、妊娠・出産期は頭皮のかゆみが発生しやすい時期であるといえます。

更年期障害

40代半ばから50代にかけては、更年期と呼ばれる時期が訪れます。更年期にはエストロゲンの分泌が減少し、それが頭皮のかゆみや乾燥に影響を与えます。更年期障害の症状としては、イライラや不眠、頭痛などがありますが、頭皮のかゆみも症状の一つといえるでしょう。

女性が頭皮のかゆみを放置するリスク

女性が頭皮のかゆみを放置するリスク

頭皮のかゆみはすぐに治るなら良いのですが、放置してしまうと思わぬトラブルが待っています。特に女性は、美容や健康に直結する問題も多いため早めの対処が必要です。ここでは、女性が頭皮のかゆみを放置するリスクについて解説します。

ふけの原因になる

頭皮のかゆみが続くと、その部分をかきむしりたくなるものです。しかし、かきむしることで皮膚が傷つき、その結果としてふけが発生する可能性が高まります。ふけは見た目にも美しくないだけでなく、別の頭皮トラブルを引き起こす可能性もあります。

薄毛の原因になる

頭皮の健康が乱れると、その影響は髪の毛にも及びます。特に、頭皮のかゆみを放置すると、毛母細胞にダメージが与えられ、髪の成長が妨げられる可能性があります。結果として、薄毛や抜け毛が進行することも考えられます。

より強いかゆみの原因になる

かゆみを放置すると、その部分がさらに刺激を受けやすくなります。特に、かゆみはストレスによっても引き起こされるため、かゆみのストレスがさらなるかゆみを生む悪循環に陥る可能性があります。

女性の頭皮のかゆみの原因別治療方法

女性の頭皮のかゆみの原因別治療方法

ここまで、さまざまな原因によるかゆみについて解説してきました。ここでは、それぞれの治療法について解説します。一般的なかゆみから女性特有のかゆみまで、どのように対処すべきか紹介します。

一般的なかゆみの治療

一般的な頭皮のかゆみには、主に以下の2つの治療方法があります。

ステロイド

ステロイドは、強力な抗炎症作用を持つ薬剤です。頭皮のかゆみや赤み、腫れなどの炎症症状を速やかに抑えることができます。ただし、長期間の使用は副作用が心配されるため、医師の指示に従って使用することが重要です。

抗ヒスタミン剤

抗ヒスタミン剤は、アレルギー反応によるかゆみを抑える薬です。頭皮がアレルギーでかゆい場合、この薬が有効です。眠気を引き起こすものもあるので、運転などの作業をする前には注意が必要です。

疾患によるかゆみの治療

特定の疾患が原因で頭皮のかゆみが発生する場合、治療方法はその疾患に特化したものとなります。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、特に頭皮に発生することが多く、炎症とともにかゆみを引き起こします。治療には主にステロイド外用薬抗真菌剤が用いられます。抗真菌薬であるミコナゾール硝酸塩配合の洗髪料は市販されており、自宅でのケアとしても非常に有用です。この成分は炎症を抑える作用もあります。

また、医師の処方により、シャンプータイプの外用剤であるコムクロシャンプーも使用可能です。このシャンプーには薬剤が含まれており、頭皮に塗布した後、15分間放置してから洗い流します。

かゆみが強い場合、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服が推奨されます。また、皮脂分泌をコントロールするためにビタミンB剤の内服も行われることがあります。

アタマジラミ

アタマジラミの治療には特定の殺虫剤が用いられます。これらの薬剤は医師の指示のもとで適切に使用する必要があります。また、感染が広がらないように、家庭内での布団やタオル、ヘアブラシの共有は避けるようにしましょう。

女性特有のかゆみの治療

先述の通り、女性は更年期障害が頭皮のかゆみの一因となることがあります。

更年期障害

更年期障害の主な治療法としては、ホルモン補充療法(HRT)があります。この治療法は、エストロゲンの不足を補うことで、更年期障害による症状を改善するものです。特に、ほてりやのぼせ、発汗などの症状に対して効果が高いとされています。

HRTにはいくつかの方法があり、症状や体質に応じて選ばれます。たとえば、子宮が存在する女性には、子宮体がんの予防のために黄体ホルモンも併用されることが多いです。また、HRTに使用される薬剤には、内服薬と経皮薬(貼り薬、塗り薬)があり、それぞれに特有の特徴と利点があります。

HRTには副作用も存在します。不規則な子宮出血、はき気、乳房の張りなどが報告されていますが、これらは多くの場合、治療を続けることで自然に改善されます。副作用が出た場合には、自己判断で治療を中止するのではなく、医師に相談することが重要です。

また、HRTの長期使用は、乳がんや子宮体がんのリスクを高める可能性が指摘されています。特に、5年以上の使用には注意が必要です。そのため、HRTを行う際には、定期的な乳房と子宮の検査が推奨されます。

女性の頭皮のかゆみに対する対策

女性の頭皮のかゆみに対する対策

頭皮のかゆみは、日常生活において非常に不快な症状であり、その対策は怠ることができません。ここでは、女性が頭皮のかゆみに対して取るべき具体的な対策について詳しく解説します。

女性の頭皮にあったシャンプーを選ぶ

シャンプー選びは、頭皮の健康に直接影響を与えるため非常に重要です。特に女性は、月経周期や更年期、妊娠・出産などでホルモンバランスが頻繁に変わるため、その都度適したシャンプーを選ぶ必要があります。無添加オーガニック成分を含むシャンプー、頭皮のpHバランスに合った製品など、自分の頭皮に合ったものを選びましょう。

正しいシャンプー方法を実践する

シャンプーの方法もまた、頭皮の健康に大きく影響します。適切な温度でしっかりと泡立て、頭皮を優しくマッサージすることで、血行を促進し、皮脂の過剰分泌を抑制することができます。また、シャンプー後は必ずすすぎ残しがないように注意し、頭皮に負担をかけないようにしましょう。

保湿ケアを欠かさない

頭皮の乾燥は、かゆみの主な原因の一つです。特に女性は、エストロゲンの影響で皮膚が乾燥しやすい傾向にあります。そのため、シャンプー後の保湿ケアは非常に重要です。頭皮専用の保湿ローションやオイルを使用し、頭皮の水分バランスを整えることで、かゆみを予防することが可能です。

まとめ

女性特有の頭皮のかゆみに焦点を当て、その原因から治療方法、日常での対策までを網羅的に解説しました。特に、ホルモンバランスの影響を受けやすい女性にとって、エストロゲンの低下が頭皮の健康に与える影響は大きいです。治療にはステロイドや抗ヒスタミン剤が一般的ですが、症状や原因に応じた専門的な治療も必要です。

参考文献

  • 脂漏性皮膚炎
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    竹内 想

    東京都

    医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務。

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