田尻 友恵 医師
北里大学卒業。東京医科歯科大学、慈恵医科大学、都内クリニックで皮膚科、一般内科、美容皮膚科等で研磨を積み、2022年7月錦糸町皮膚科内科クリニックを開院。皮膚科・内科を始めとしアレルギー・ペインクリニック・美容皮膚科まで幅広く疾患を診る。
麻酔科専門医、日本医師会認定産業医、日本抗加齢医学会、日本美容皮膚科学会、麻酔科学会、ペインクリニック学会 所属
「お腹や胸辺りにブツブツができた」「赤みがかった発疹が体の半分にだけ出ている」そんな方は帯状疱疹の可能性があります。帯状疱疹は突然できることが多く、症状に不安も抱えている方も少なくありません。
今回は、帯状疱疹の原因や症状について解説します。帯状疱疹になりやすい人の特徴や治療方法・予防方法も紹介するので、ぜひご参考ください。
帯状疱疹の原因や症状
帯状疱疹は、「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因の感染症です。同じウイルスが原因で幼少期の頃に発症するのが「水ぼうそう」です。水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、水ぼうそうとなり、一度、水ぼうそうになったことがある人に対して、水痘・帯状疱疹ウイルスが形を変えて発症するのが帯状疱疹です。
水ぼうそう自体の症状は、痒みを伴う水ぶくれと発熱が主な症状で、1週間ほどで症状は治ります。しかし、その後もウイルスは体内に潜伏し続け、過労やストレスなどによって免疫機能が弱まると再びウイルスが目覚めます。
ここでは、帯状疱疹の症状や原因について解説します。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹になると、身体の一部に帯のように痛みのある赤いぶつぶつができます。 帯状疱疹の初期症状として、チクチクした痛みとかゆみが特徴です。
続いて赤い皮疹と水ぶくれが現れ、かさぶたになり3週間ほどで治癒します。 帯状疱疹は、左右どちらか片側に出ることが特徴で、身体の一部に細長く集まって出ることが多いです。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水ぼうそうの原因でもある「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。水ぼうそうは幼少期にかかることが多く、一度水ぼうそうになると、症状が治った後も水痘・帯状疱疹ウイルスは体内に潜伏し続けます。
潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスは宿主の免疫機能の低下によって再活性化し、帯状疱疹となって発症します。免疫機能が低下する要因として代表的なものには次のものがあります。
【免疫機能が低下する要因】
- 加齢
- ストレス
- 過労や睡眠不足
- 過剰な運動
帯状疱疹は人にうつる?
帯状疱疹になったら、子供や家族にうつらないか心配になるかと思います。帯状疱疹が人から人へ感染することは稀ですが、水疱となっている箇所に直接触れたり、潰れた水ぶくれに触ってしまい洗わずに放置したりしていると感染する可能性は高まります。
特に、水痘にかかったことがない人や水痘ワクチン未接種の人との接触は控えたほうが良いです。帯状疱疹になった箇所は衣類などで覆っておくようにしましょう。水痘・帯状疱疹ウイルスへの抗体を持たない人が帯状疱疹患者と接触すると、水痘を発症する可能性があります。
帯状疱疹になりやすい人の特徴
帯状疱疹の症状や原因についておわかりいただけたかと思います。特にメカニズムや原因がわかると、帯状疱疹になりやすい人の特徴も自ずと見えてきます。
大前提として、水ぼうそうになったことがない人は帯状疱疹にはなりません。水ぼうそうになったことがある人が帯状疱疹を発症する可能性を持っています。本章では、帯状疱疹になりやすい人の特徴について詳しく解説していきます。
50代から発症率が上がる
帯状疱疹の発症には、年齢が大きく関わり高齢になるほど発症率が高くなります。これは加齢による免疫低下が原因と言われています。高齢になって免疫低下を防ぐために、適度な運動やバランスの良い食事を心がけましょう。また、50代になると帯状疱疹を予防するためのワクチン接種が受けられるようになります。詳しくは後述の「帯状疱疹の予防方法」で解説しています。
過労などで免疫機能が低下した人 年齢に関わらず、不規則な生活やストレス、過労、睡眠不足、過剰な運動などで免疫が弱まると発症することがあります。健康的な生活習慣が予防の第一歩となるのは帯状疱疹でも同じことです。
帯状疱疹の治療方法
帯状疱疹になってしまったり、帯状疱疹の疑いを感じたりする場合、皮膚科を受診することで治療ができます。帯状疱疹の治療には、主に次の3つの方法があります。
抗ウイルス薬による治療
帯状疱疹の治療法として、抗ウイルス薬による治療が一般的です。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑制し、急性の炎症や痛みの症状を改善するだけでなく、合併症や後遺症を防ぐ効果が期待できます。
抗ウイルス薬の中には内服薬、塗り薬、点滴薬がありますが、一般的には内服薬が処方されます。具体的には、次のような薬が処方されます。
アシクロビル
アシクロビルは、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスに使われる医療薬です。ウイルスの増殖を抑制する作用があり、古くから帯状疱疹の治療薬として使用されています。他の抗ウイルス薬に比べて服用回数が1日5回と多くなっています。
バラシクロビル
バラシクロビルは、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスに使われる医療薬です。ウイルスの増殖を抑える作用があります。通常1日3回の服用が必要となります。
ファムシクロビル
ファムシクロビルは、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスに使われる医療薬です。ウイルスの増殖を抑える作用があります。通常1日3回の服用が必要となります。
アメナメビル
アメナメビルは、帯状疱疹や単純疱疹の症状で処方される医療薬です。他の医療薬に比べて新しい抗ウイルス薬で、1日に1回の服用で済むことが特徴です。腎機能への影響が少なく、腎機能が低下した患者にも使いやすい医療薬です。
点滴による治療
帯状疱疹が重症化した場合には、入院治療が必要となることがあります。入院治療では、抗ウイルス薬をより効果的に作用させるために、抗ウイルス薬の点滴が1週間程度投与されます。
帯状疱疹が重症化すると、皮膚の炎症が治った場合でも神経に損傷が残り、神経痛が長期間残るケースがあります。そのため、帯状疱疹になった際はなるべく早期に皮膚科へ受診することが重要となります。
帯状疱疹後神経痛に対する痛み止め治療
帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹が治った後に残る痛みの後遺症です。神経因性疼痛と呼ばれる「チクチクする」ような痛みが長期間続く状態で、帯状疱疹が重症化した場合や、顔面に発症した場合、高齢で帯状疱疹になった場合に起こりやすいといわれています。
帯状疱疹後神経痛に対する治療には、主に鎮痛剤が使われます。鎮痛剤には、さまざまな種類がありますが、ロキソニンのような非ステロイド性消炎鎮痛剤は効果がありません。
帯状疱疹の予防方法
帯状疱疹は、体の免疫低下によって発症しやすくなる病気です。そのため、免疫力をつけるような生活を送ることが、そのまま予防へと繋がります。ここでは、帯状疱疹の予防方法について詳しく解説します。
規則正しい生活習慣を送る
免疫低下を防ぐためには、規則正しい生活習慣を送ることが大切です。そのためには、食事のバランスに気をつけ、適度な運動と十分な睡眠を心がけましょう。また、過労や過度のストレスなども免疫力低下の引き金となるため、ストレスを溜め込まず適度な休息やリフレッシュを取るようにしましょう。
予防接種を受ける
帯状疱疹は、ワクチンを接種することで発症予防、重症化予防が期待できます。ワクチン接種は50歳になるとできるようになるので、50歳を越える方はワクチン接種を検討してみてください。
前述の通り、高齢になると帯状疱疹の発症率が上がり、重症化のリスクも考えられますので、早めの予防が今後の健康のために大切となります。
帯状疱疹のワクチン接種では、副作用が出る可能性があります。接種後の副作用については、接種前に医師からしっかりと説明を受け、接種後に異常があった際にはすぐに医師に知らせるようにしましょう。
帯状疱疹になったらやってはいけないこと
帯状疱疹になった場合、ご自身の判断でやったことが症状を悪化させてしまうこともあります。そのようなことがないように、次のことに注意をしてください。
水ぶくれを潰すこと
水ぶくれを意図的に引っ掻いたり潰したりしないように注意しましょう。潰れた箇所に細菌が入って感染症を引き起こしたり、後遺症の原因となったりすることがあります。
水ぶくれが潰れたら、そのまま放置せずに早めに皮膚科を受診しましょう。後遺症のリスクを軽減するためにも早期受診が大切です。
市販薬を自己判断で塗ること
市販薬を自己判断で塗らないようにしましょう。帯状疱疹は自分で判断しにくい病気と言われています。違う皮膚病を自己判断で帯状疱疹と判断してしまう可能性は十分にありうるのです。
その際に、帯状疱疹に作用しない市販薬を使い続けるのでは、費用も時間ももったいないです。最悪の場合、悪化するケースも考えられます。ご自身で判断せず、早期に皮膚科を受診して適切な治療を受けることが、早く症状を改善することにつながる近道となるのです。
まとめ
帯状疱疹の症状や原因について解説しました。帯状疱疹は水ぶくれになったことのある人が、年を重ねて免疫低下が原因で発症しやすい病気です。免疫低下を防ぐためには、食事のバランスに気をつけることや適度な運動を行うなど日頃から規則正しい生活習慣を送ることが大切です。
また、高齢の場合はワクチン接種をして予防することもできます。帯状疱疹は、重症化したり、顔面にできると神経痛を引き起こしたりすることもある決して油断できない病気です。帯状疱疹になった際は、なるべく早めに皮膚科を受診して早期治療に臨めるようにしましょう。