おりものの異常や外陰部にかゆみがある場合の疾患は?医師がわかりやすく解説

おりものの異常や外陰部にかゆみがある場合の疾患
この記事を監修した医師
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対馬 杏奈 医師

女性ライフクリニック新宿伊勢丹

2016年 帝京大学医学部 卒業、昭和大学横浜市北部病院研修、昭和大学 産婦人科入局、昭和大学 江東豊洲病院、東京ベイ・浦安市川医療センター、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院、女性ライフクリニック銀座、新宿伊勢丹(現職)

専門医:産婦人科専門医、学会:日本産科婦人科学会、女性医学学会、日本抗加齢医学会、日本思春期学会

女性の健康において、おりものの変化は非常に重要なサインです。時にはおりものの異変が、体の中で何かが起きていることを教えてくれることもあります。特に、おりものが原因で起こる外陰部のかゆみは多くの女性が経験する一般的な症状ですが、これにはさまざまな原因があります。

今回は、おりものの種類とそれが示す可能性のある症状や疾病について解説します。外陰部のかゆみの原因となる疾病や、それぞれの症状と原因についても紹介します。

目次

おりものとは

おりものとは おりものは、女性の健康状態や生理周期に密接に関連しています。ここでは、おりものの基本的な性質と、正常な状態と異常が疑われる状態の違いを詳しく解説します。

正常なおりもの

おりものは、女性の健康状態を示す重要な指標の一つです。生理周期によって量や質が変わることがあり、この変化には個人差があります

たとえば、生理後の卵胞期ではサラッとした状態ですが、排卵期に近づくとトロッとした質感に変わります。排卵時には量が増え、水っぽくなるのが一般的です。その後、生理が近づくにつれておりものの量が増え、ドロッとした状態になります。

おりものは、基本的に無臭か、わずかに甘酸っぱい酸性の香りがします。おりものシートや下着についた際には、薄いクリーム色を呈することもあります。

排卵日にピンク色や血の混じったおりものが見られることもありますが、これは「排卵出血」と呼ばれ、必ずしも異常ではありません。おりものの量や質は個人差があるため、自分にとっての「正常」を理解することが大切です。

異常なおりもの

おりものが普段と異なる場合、特定の疾患が疑われるため注意が必要です。

たとえば、チーズ状の白いおりものはカンジダ腟炎の兆候であり、免疫機能の低下が原因で起こることが多いです。日常生活のストレスや疲労、風邪などによる免疫力の低下、または抗生物質の使用、妊娠、糖尿病、HIVウイルス感染なども症状を引き起こす原因となり得ます。この場合、規則正しい生活やデリケートゾーンの清潔保持が重要で、入浴後の完全な乾燥や、通気性の良い下着の使用を心がけると良いでしょう。

黄緑色や泡立つおりものは腟トリコモナス症のサインで、性行為だけでなく、下着やタオル、浴槽や便座などからも感染する可能性があります。この疾患は自然治癒しないため、医療機関での治療が必要です。

灰色や白濁した、生臭いおりものは細菌性腟炎の可能性があります。腟内環境が乱れると雑菌が増え、炎症を引き起こすことがあります。腟内の過洗浄や多すぎる性行為、ストレスや疲労による免疫力の低下などが原因で起こり得ます。

おりものの異常を伴う疾病の症状と原因

おりものの異常を伴う疾病の症状と原因 異常なおりものは、さまざまな疾病のサインである可能性が高いです。ここでは、おりものの異常を伴う代表的な疾病について、それぞれの症状と原因を詳しく解説します。

細菌性腟炎

細菌性腟炎は女性にとって一般的な疾患であり、多くの場合は治療可能です。腟内の常在菌のバランスが崩れることによって引き起こされる場合が多く、日常生活の中で注意を払うことで罹患するリスクを軽減できるでしょう。

症状

細菌性腟炎の主な症状は、灰色または白色で生臭い匂いを伴うサラサラとしたおりものの大量分泌です。おりものの量や質感が通常の状態とは明らかに異なるためわかりやすいでしょう。感染が進行すると、外陰部の不快感や軽いかゆみを伴うこともあります。

原因

細菌性腟炎は、常在菌のバランスが崩れることによって起こります。健康な女性でも、ストレスや疲労、抵抗力の低下により発症することがあります。性行為が発症のきっかけとなることもあるため、性感染症と誤解されることがありますが、細菌性腟炎自体は性感染症ではありません。

クラミジア感染症

クラミジア感染症は、一般的な性感染症(STD)です。クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされ、特に10代後半から20代の若年層に多く見られる特徴があります。

症状

クラミジア感染症の典型的な症状には、おりものの増加、下腹部の痛み、排尿時の痛み、性交の痛み、不正出血などがあります。女性は男性に比べて症状が軽い場合が多いですが、そのために感染に気づかないことも少なくありません。感染が進行すると、不妊症の原因など、より深刻な健康問題につながることもあるため、症状に気づいた場合は迅速に医療機関で受診する必要があります。

原因

クラミジア感染症の感染源は主に性行為です。感染は女性の子宮頸管や男性の尿道、または喉の粘膜などに起こります。感染時期や順番を特定するのは困難であり、無症状の場合が多いため、定期的な検査による早期発見が重要となります。性行為を通じての感染リスクを減らすためには、安全に性行為することが重要です。

ヘルペス感染症

ヘルペス感染症は、ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症で、主に性器ヘルペスと口唇ヘルペスの2種類があります。

症状

ヘルペス感染症の症状は、感染部位に小さな水疱や赤い発疹が現れることが特徴です。性器ヘルペスの場合、性器や肛門周辺に痛みを伴う水疱や潰瘍が現れることが一般的です。

その他の症状には、かゆみ、灼熱感、排尿痛があります。初感染の際には発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなど全身症状を伴うこともあります。一度感染すると、ストレスや疲労、生理周期などの体調変化により症状が再発することがあります。

原因

ヘルペス感染症の原因は、単純ヘルペスウイルス(HSV)です。このウイルスには、HSV-1型(主に口唇ヘルペスを引き起こす)とHSV-2型(主に性器ヘルペスを引き起こす)の2つのタイプがあります。

性器ヘルペスは、主に性行為による直接の接触で感染します。また、口唇ヘルペスのウイルスが性器に感染することで性器ヘルペスが発症することもあります。感染後ウイルスは数日間体内に潜伏し、免疫力の低下やストレスなどの要因で活動を再開し、症状が現れます。

淋病

淋病は、淋菌という細菌によって引き起こされる性感染症です。全世界で広く見られる病気で、若い成人に特に多く見られます。

症状

淋病の症状は感染部位によって異なりますが、一般的には性器や咽頭(のど)に現れます

性器に感染した場合、排尿時の痛みやおりものが黄色くなるなどの症状が現れることがあります。これらの症状は比較的軽微であるため感染に気付かないケースが多く、放置すると子宮内膜炎を引き起こし、強い下腹部痛や発熱を伴うことがあります。また、淋病は不妊症の原因となる可能性もあるため、注意が必要です。

咽頭に感染した場合は症状がほとんど現れないことが多いですが、のどの腫れや痛み、イガイガする感覚など、風邪に似た症状が見られることがあります。この状態を放置すると、咽頭炎や扁桃腺炎を発症するリスクが高まります。

原因

淋病は性行為によって主に伝播します。淋菌は、性器、肛門、口の粘膜などに感染し、これらの部位の接触を通じて感染が広がります。また、淋病は妊娠中の女性から赤ちゃんにも伝わる可能性があり、新生児の目に重大な感染を引き起こすことがあります。

おりものの異常に加えて外陰部のかゆみを伴う疾病

おりものの異常に加えて外陰部のかゆみを伴う疾病 続いて、おりものの異常と外陰部のかゆみを引き起こす主な疾病について、それぞれの症状と原因について解説します。

カンジダ腟炎

カンジダ腟炎は、カンジダ菌という真菌によって引き起こされる一般的な腟感染症です。女性の腟内には腟内環境を保つために乳酸菌が存在していますが、腟内環境のバランスが崩れることでカンジダ菌が増殖し、症状が現れることがあります。

症状

カンジダ腟炎の主な症状は、厚く白いチーズ状のおりものと外陰部のかゆみです。これに加えて、外陰部の赤みや腫れ、痛み、時には性交痛や排尿痛も伴います。おりものには特有の臭いはほとんどありませんが、状態によっては量が増えることもあります。

原因

カンジダ腟炎の原因は、腟内のpHバランスの変化や免疫力の低下、抗生物質の使用、高糖血症などによるカンジダ菌の過剰な増殖です。また、締め付けの強い下着や衣類を装着している場合や、ストレス過多の場合などで症状が悪化することがあります。

トリコモナス腟炎

トリコモナス腟炎は、トリコモナスという原虫によって引き起こされる性感染症です。

症状

トリコモナス腟炎の主な症状は、泡立つような黄色や緑色をしたおりものや、外陰部の強いかゆみや不快感です。外陰部や腟が赤くなったり、腫れたりすることもあります。さらに、性交時に違和感があったり、排尿する際に刺激や痛みを感じたりすることがあります。軽い出血が起こることもあります。

原因

トリコモナス腟炎は、トリコモナス原虫が直接接触することによって感染します。性行為によって伝播することが一般的で、感染力が非常に高いとされています。感染リスクを減らすには、安全な性行為やパートナーとの定期的な検査が重要です。

接触皮膚炎

接触皮膚炎は、外陰部が特定の物質に触れたことによって引き起こされるアレルギー反応です。

症状

接触皮膚炎の主な症状は外陰部のかゆみが一定の強さで継続することもあれば、時折強くなったり軽くなったりすることもあります。これには赤みや腫れが伴うこともあれば、外見上は何も変わらないこともあります。

原因

石鹸、洗濯洗剤、生理用品、コンドーム、下着など、肌に直接触れるさまざまな物質によって起こり得ます。

感染症と外陰部のかゆみの治療方法

感染症と外陰部のかゆみの治療方法 おりものの異常や外陰部のかゆみの適切な治療方法は、症状の原因によって異なります。ここでは、おりものに異常がある場合と、おりものが正常であるが外陰部にかゆみがある場合の治療方法について解説します。

おりものに異常がある場合:婦人科を受診する

おりものの量が異常に多い、色や臭いが普段と違う、かゆみや痛みを伴うなどの症状がある場合は、婦人科を受診することがおすすめです。

感染症や内分泌系の問題、さらには子宮や卵巣などの器官に関連する病気の可能性が考えられるためです。早期発見と適切な治療が病気の予後に大きな影響を与えるため、症状に気づいたら迅速に受診するようにしましょう。

おりものが正常で外陰部にかゆみがある場合:皮膚科を受診する

おりものに特に異常がなく、外陰部のみにかゆみや炎症が見られる場合は皮膚科の受診を検討すると良いでしょう。

外陰部のかゆみは、アレルギー反応や皮膚疾患、ホルモンの変動など、感染症以外の原因で起こることがあります。皮膚科では皮膚の状態を詳しく診察し、必要に応じてアレルギーテストやその他の検査を行うことが可能です。また、日常生活でのスキンケアのアドバイスや、予防策についても指導してくれるでしょう。

まとめ

女性の健康において重要な指標であるおりものの状態と外陰部のかゆみについて解説しました。健康状態の変化に早期に気づき、必要に応じて専門医の診断と治療を受けることで、より良い健康状態を維持することが可能です。

自己判断に頼ることなく、専門医のアドバイスを求めることが、健康を守る上で重要なポイントの一つであるといえるでしょう。

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