指のしこりを押すと痛い場合の原因は?何科を受診する?主な病気と治療方法を医師が解説

指のしこりを押すと痛い場合の原因
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

「指にしこりができた」「関節を押すと痛い」「腫れがひかない」そのような手指の不調に関する悩みは意外と多いかもしれません。そのうち治るだろうと放置してしまいがちな指の疾患ですが、悪化すると日常生活に支障をきたす場合もあります。また、いざ病院に行くとしたら何科を受診するべきなのか、悩む方もいるでしょう。

今回は、押すと痛い指のしこりについて症例ごとに詳しく解説します。考えられるしこりの原因や治療方法なども解説しますので、ぜひ参考にして手指を大切にしましょう。

目次

押すと痛いしこりが指にできる主な原因

押すと痛いしこりが指にできる主な原因

まずは、押すと痛いしこりが指にできる主な原因について解説します。

手指の疾病には多くの種類があり、原因も人によってさまざまです。しこりのほとんどは無症状で良性の腫瘍ですが、悪性の場合もあるため、急に大きくなったり押すと痛みが出たりするときは注意が必要です。気になる症状があれば専門の医師の診断による適切な治療を受けてください。

  • ガングリオン
  • へバーデン結節
  • ブシャール結節
  • ばね指
  • 粉瘤(ふんりゅう)
  • 血管腫(けっかんしゅ)

ガングリオン

指の付け根や手の甲に不自然なしこりやできものができている場合は、ガングリオンの可能性があります。ガングリオンは、手関節や足関節などに多くみられる良性の軟部腫瘍です。痛みをともなわないものの、放置していると時間経過とともに大きくなります。

ガングリオンができる原因は、はっきりとは解明されていません。手指の付け根や関節の近辺にできやすいことから、関節包・腱鞘の滑液が内部で詰まりゼリー状に濃縮されるためではないかと考えられています。神経などを圧迫すると、痛み・しびれ・だるさなどを発症するため、見つけたら早めに整形外科を受診してください。

へバーデン結節

へバーデン結節は手指の第1関節に発症する変形性関節症で、関節の摩耗が進行する病気です。手指の第1関節が、曲がったり変形したりといった症状が現れ、痛みや腫れをともなうこともあります。

遺伝的な影響が強いと考えられており、母親や祖母にへバーデン結節の症状が現れた40代以降の女性に多く発症するとされていますが、今のところはっきりした原因はわかっていません。

ブシャール結節

ブシャール結節は、手指の第2関節の動きが悪くなり、赤く腫れたり、曲がって変形したりする疾患です。前述のへバーデン結節と同じく変形性関節症ですが、指の第2関節に痛みを伴います。

ブシャール結節の原因は、まだ明確にされていません。40歳以上の女性に多いことから、加齢や更年期による女性ホルモンの減少が一因ではないかと考えられています。また、家事などによる日常的な手のオーバーユースも主な要因です。

ブシャール結節を発症したら、消炎鎮痛効果のある塗り薬を使用してテーピングで固定して患部を安定させる保存的治療が大切です。ただし、消炎鎮痛剤を長期的に飲み続けると副作用の懸念が指摘されますので、医師に相談して適切な治療を受けましょう。

ばね指

ばね指は、指に起こる腱鞘炎です。家事などによる手指の使い過ぎが主な原因といわれていますが、はっきりとは解明されていません。曲がった指を伸ばそうとするときにばねのようにガクンと急に戻るため、こう呼ばれています。

手指を曲げたり伸ばしたりするときには、腱鞘というさやの中を腱が往復運動しているのですが、ばね指になると引っ掛かりが生じてしまいます。指の曲げ伸ばしが困難になるだけでなく、腱鞘が腫れて痛みを伴うこともあるので早目に病院で診察を受けましょう。

粉瘤(ふんりゅう)

触るとゴリゴリしたものや赤い腫瘍が皮膚の表面にできたときは、粉瘤(別称:アテローム・アテローマ)の可能性があります。粉瘤とは、皮膚の表皮が何らかの理由で皮膚内部に入り込んで袋状の構造物を作り、本来剥げ落ちるはずの垢や皮脂といった老廃物がこの袋の中に溜まって徐々に膨らみ、皮下腫瘍となった状態を指します。皮膚の中に袋を作る原因は解明されていません。

たとえば、指や手のひらの皮膚の一部が小さな外傷などをきっかけに内側に陥入すると、外傷性表皮嚢腫と呼ばれる粉瘤になります。粉瘤には、次のような多くの種類があります。

  • 外毛根鞘嚢腫(がいもうこんしょうのうしゅ)
  • 多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)
  • 脂腺嚢腫(しせんのうしゅ)
  • 炎症性粉瘤
  • 毛包腫

粉瘤は良性の腫瘍で、多くの場合は症状がなく、放っておいても問題はありません。しかし、老廃物が溜まって炎症を起こすと赤く腫れて痛みを生じます。押すと中から白い角質物が出て悪臭がすることもあります。放っておいても自然に消失することはないため、皮膚科を受診することを検討しましょう。

血管腫(けっかんしゅ)

血管腫は、血管の拡張や増殖など血管の異常により「赤あざ」の症状が現れる良性腫瘍です。根本的な原因は明らかになっていませんが、ホルモンバランスの変化や外傷、感染症など外的刺激が要因ではないかと考えられています。

血管内皮細胞の増殖があるものを血管腫、血管が異常に集合しており、出生時から大きさが変わらない血管腫を血管奇形と呼んで区別することもあります。

さまざまな種類がある疾患なので、それぞれ治療法も異なります。経過観察中に痛みなどの症状が出た場合は、硬化療法、薬物療法、圧迫療法などより総合的な治療を必要とすることもあります。

また、疼痛やしびれが出て日常生活に支障をきたしている場合は、外科的切除も検討されます。早い段階で治療を受けたほうが跡が目立ちにくくなるため、血管腫や血管奇形は早めに医師に相談しましょう。

指のしこりは何科を受診すればよい?

指のしこりは何科を受診すれば良い?

指の痛み、しびれ、指のこわばり、違和感などは、症状に応じて整形外科・形成外科・皮膚科を受診することになります。もし間違って受診したとしても紹介状を書いてもらえることもありますが、症状に応じた診察科の検討方法について解説するので参考にしてください。

  • 整形外科
  • 皮膚科

整形外科

手指にしこりがある場合、通常は整形外科を受診します。医療機関によっては整形外科のなかに手指の治療を専門とする「手外科」がある場合もあります。

たとえば、ガングリオンが大きくなって関節を圧迫したり、神経を圧迫したりして痛みやしびれを発症している場合は、整形外科での治療が必要です。

また、へバーデン結節など専門的な知見を必要とする疾患は、整形外科の中でも手外科の専門の医師がいる病院を紹介されるかもしれません。ばね指が疑われる場合は、超音波検査などで精査したうえで、形成外科的な手術を含む治療が行われる可能性もあります。

皮膚科

しこりの大きさが急に大きくなったような場合は皮膚科を受診しましょう。皮膚の上にできものができている場合は、脂漏性角化症の可能性もあります。色素性母斑(ほくろ)と同様に皮膚の良性腫瘍であることが多いですが、急に大きくなったときは悪性腫瘍の可能性もあります。

脂漏性角化症などが大きくなり、見た目を気にする場合は、レーザー手術で取り除くことも可能です。皮膚科のCO2レーザー治療は跡が残らないことが多く、再発も少ないのが特徴です。

押すと痛いしこりが指にできた場合の受診の目安

押すと痛いしこりが指にできた場合の受診の目安

しこりが指にできた場合、どのような状態になったら医療機関を受診すればよいでしょうか?ここでは、医療機関を受診する目安について解説します。

痛みが強い場合

ガングリオンがピンポン玉くらいの大きさの腫瘤になった場合、神経細胞を圧迫して痛みに加えてしびれや運動麻痺を引き起こす可能性があります。しこりの大きさが大きくなったり、痛みがだんだんと強くなったりしている場合は、なるべく早く整形外科を受診してください。

へバーデン結節は、放置すると少しの刺激でも激痛を引き起こし、関節が変形して戻らなくなることもあります。手指の痛みやしびれ、変形といった症状がある場合はなるべく早く整形外科を受診しましょう。

また、ばね指で関節に痛みがあるまま放置すると、ほかの指の動きにも影響が出たり手術を受けても十分に良くならないこともあるため、関節に痛みがある場合は早めに整形外科を受診しましょう。

粉瘤が赤く腫れていたり押すと痛みがある場合は、炎症を起こしている可能性が高いため、早めに皮膚科を受診して診察を受けましょう。

症状が続く場合

年齢や持病歴によっても症状はさまざまですが、たとえばガングリオンで無症状の場合は、放っておいても問題はありません。

ただし、ガングリオンに限らず上記のように関節に痛みや腫れなどがある場合や、症状が続く場合は早めに受診を検討することが大切です。

押すと痛いしこりが指にできた場合の治療方法

押すと痛いしこりが指にできた場合の治療方法

押すと痛いしこりが指にできた場合に考えられる治療方法は、大きく2つあります。

  • 保存療法
  • 手術

保存療法は、注射針で腫瘍内のゼリー状のものを吸引したり、炎症を抑えるステロイド注射を打つなどの治療方法です。根本治療は、手術などで根本的な治療を目指すことを意味します。それぞれ詳しく解説します。

保存療法

指・指の関節・指の付け根にできたしこりの痛みに対しては、非ステロイド系抗炎症剤や外用剤を投与しますが、これらで皮膚にできてしまったしこりを消すことはできません。

へバーデン結節・ブシャール結節のような変形性関節症では、基本的に手術しない保存療法が多いようです。保存療法の例として、患部のテーピングによる固定が有効で、家事や仕事など日常生活に支障をきたす場合には、非ステロイド性消炎鎮痛薬や湿布などを使用することもあります。

手術

薬物療法やステロイド注射による保存療法などでは十分な効果が得られないような場合は、手術による根本治療が検討されることがあります。

骨肉腫など悪性腫瘍との鑑別のため、手術前にはエコー検査やCT検査、MRI検査による画像精査が行われることもあります。また、疾患によっては、手術後のリハビリによる治療が必要になる場合もあります。

まとめ

指にできたしこりを押すと痛い場合の症状と治療方法について詳しく解説しました。

手指の疾患は多くの種類があり、その原因についてははっきりと解明されていないことも多くありますが、症状に応じて早めに適切な治療を受けることが大切です。「たかが指の痛みくらいで病院に行かなくても」と思って放置せず、痛みなどの症状が出たら医療機関で診てもらい、適切な判断を仰ぐようにしましょう。

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