頭のできものの原因は?何科に行けばよい?治し方・主な病気を医師がわかりやすく解説

頭のできものの原因
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

頭にできものができたとき、それは病気のサインの可能性もあります。しかし、何科を受診したらいいか悩む方も多いのではないでしょうか?今回は、頭のできものについて解説します。

目次

「できもの」とは

できものとは、皮膚やその下の組織に生じるさまざまな腫瘍やしこりを指します。これらは良性のものから悪性のもの、痛みをともなわないものから生活に支障をきたすものまで幅広く存在します。

良性の腫瘍には、放置しても生命に影響を及ぼさないものが多いですが、見た目の問題や日常生活への影響、時には炎症を引き起こすこともあります。一方で、悪性腫瘍はがん細胞が含まれており、早期の発見と治療が重要です。

頭のできものができる主な原因と病気

では、頭のできものができる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、頭のできものができる主な原因と、病気について解説します。

  • 尋常性ざ瘡(にきび)
  • 皮膚炎
  • 粉瘤(ふんりゅう)
  • 脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
  • 頭皮悪性腫瘍

尋常性ざ瘡(にきび)

頭にできるものの原因として尋常性ざ瘡(にきび)が挙げられます。

尋常性ざ瘡は、毛穴内に皮脂や老廃物が溜まり、皮膚常在菌のアクネ菌が増殖して炎症を引き起こす病気です。特に頭皮は皮脂の分泌が豊富で、不潔になりやすい部位であるため、尋常性ざ瘡が発生しやすい環境が整っています。

軽度の場合は毛穴が盛り上がったような白いできものが見られますが、炎症が悪化すると赤く痛みを伴うできものや、膿の塊を形成することもあります。頭皮の尋常性ざ瘡は、日常生活の中での不衛生な状態や、刺激の強いシャンプーや染髪剤の使用、または乾燥による皮脂分泌の過剰などが原因となることが多いです。

皮膚炎

皮膚炎も、頭のできものの原因としてあげられます。皮膚炎には、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などがあります。

これらの状態は、頭皮の炎症やかゆみ、赤みを引き起こし、場合によってはフケやかさぶたの形成を伴うことがあります。接触性皮膚炎は、頭皮が特定の物質に触れたことによる反応で、かゆみや赤み、腫れなどを引き起こします。

これは、刺激の強いシャンプーやヘアケア製品、染髪剤などによって起こることがあります。アレルギー性皮膚炎も似た症状を示しますが、これはアレルギー反応によるもので、しばしば繰り返し発生します。

脂漏性皮膚炎は、頭皮の過剰な皮脂分泌と関連があり、マラセチア菌という真菌の過剰な増殖によって引き起こされることがあります。この状態は、赤みを帯びた皮膚、フケ、頭皮のかゆみを特徴とします。

これらの皮膚炎は、適切なスキンケア、刺激の少ない製品の使用、必要に応じて医師の治療で改善することが期待できます。特に、頭皮の健康を維持するためには洗髪と保湿が重要です。また、アレルギー反応を引き起こす可能性のある物質を避けることも症状の管理に役立ちます。

粉瘤(ふんりゅう)

頭にできるものの中で、粉瘤もよく見られる原因の一つです。

粉瘤は、毛穴の一部が皮下に閉じ込められ、その内部に皮脂や角質が蓄積して形成される袋状の腫瘍です。通常は痛みをともなわず、触ると柔らかいしこりとして感じられます。

粉瘤は皮膚のどの部分にでも発生する可能性がありますが、特に皮脂の分泌が多い頭皮によく見られます。粉瘤が形成される主な原因は、毛穴の詰まりや皮脂腺の異常など、皮脂の排出が妨げられることにあります。また、遺伝的な要因や外傷なども粉瘤の形成に関与することがあります。

粉瘤自体は良性の腫瘍であり、多くの場合、健康に直接的な害を及ぼすものではありません。しかし、粉瘤が感染を起こした場合には、痛みや赤み、腫れなどの症状が現れることがあり、場合によっては膿がたまることもあります。

脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)

頭のできものの原因に、脂漏性角化症も挙げられます。老人性疣贅(ゆうぜい)とも呼ばれ、主に中高年の方に見られる良性の皮膚病変です。

脂漏性角化症は加齢や遺伝が主な原因とされており、頭皮のように皮脂分泌が多い部位に発生しやすい特徴があります。形状は円形または楕円形で、サイズは5mm以下の小さなものから、大きいものでは5〜10cmにも及ぶことがあります。

この状態は、皮膚の老化や紫外線の影響で皮膚細胞のターンオーバーが滞り、古い細胞やメラニン色素が排出されにくくなることで発生します。初期段階ではシミのように見えることもありますが、徐々に盛り上がってきてイボのような形状をとるようになります。

脂漏性角化症は良性であるため、がん化する心配はありませんが、見た目の問題や不快感から除去を希望する場合もあります。脂漏性角化症は自然に消えることはなく、放置すると数が増えたり大きくなったりすることがあるため、気になる場合は皮膚科で診断を受けることが重要です。

頭皮悪性腫瘍

頭皮にできる悪性腫瘍は、紫外線が一つの原因とされています。特に、有棘細胞がんや血管肉腫、日光角化症などが頭皮に発生しやすい悪性のイボとして知られています。

これらの腫瘍は、初期段階では小さなしこりや色素沈着として現れ、自覚症状がほとんどないことが多いとされています。しかし、放置すると徐々に大きくなり、出血や痛みをともなう潰瘍を形成することもあります。早期発見と治療が重要なため、気になる皮膚変化があるときは速やかに皮膚科で診断を受けることが推奨されます。

頭のできものができた際の受診のポイント

頭にできものができた場合、どのくらいの状態で受診を検討すればよいのでしょうか?ここでは、受診の目安と、何科を受診すれば良いかについて解説します。

受診の目安は?

頭にできものができた場合、その受診の目安は症状の性質や変化によって異なります。痛みを伴う膿が出る、徐々に大きくなる、または何年も変化がないやわらかいできものがある場合は、専門の医師の診断が必要です。

日常生活での対処法が効果を示さない、または症状が悪化する場合や、できものが急に大きくなったり、黒く変色したり、表面がジクジクして血や膿が出たりする場合は、悪性の可能性も考慮に入れて速やかに専門の医師に相談することが重要です。

何科を受診すれば良い?

頭にできものができた場合、受診すべき科は主に皮膚科とされています。頭皮は皮膚の一部であり、ニキビや湿疹、粉瘤など、頭皮に発生するさまざまな病気や状態を診察・治療するのが皮膚科の専門領域です。

症状が重い場合や、特定の病気が疑われる場合には、専門的な治療や検査が必要になることがあります。症状や状態によっては、形成外科や内科の受診がすすめられる場合もありますが、まずは皮膚科で不安や疑問について相談してみましょう。

頭のできものの治療法・治し方

頭のできものの治療法には、どのようなものがあるのでしょうか?ここでは、頭のできものの治し方について解説します。

薬を使用した治療法

頭のできもの治療において薬を用いる場合、治療は主に内服薬と外用薬の2種類に分けられます。

内服薬では、抗生物質や抗ウイルス薬が使用されることがあり、これらは細菌やウイルスが原因である場合に効果的が期待できます。また、痛みがある場合には鎮痛薬、痒みがある場合にはかゆみ止めが処方されることが多いです。

外用薬としては、直接患部に塗ることで、抗生物質や痛み止め、かゆみ止め、腫れを抑える成分が含まれた薬が使用されることが多いです。これらの薬は、症状や患者さんの年齢に応じて適切に選択され、症状の緩和や治癒を目指します。

手術での治療法

頭にできものができた場合の手術治療には、腫瘍の種類や大きさ、位置に応じてさまざまな方法があります。主に、ラジオ波メスを使用した切除、くりぬき法、外科用ハサミによる切除、メスによる切除などが挙げられます。これらの手術方法は、局所麻酔下で行われることが多く、日帰り手術が可能な場合もあります。

特に、小さな腫瘍や表面的な腫瘍には、ラジオ波メスやくりぬき法が適しており、傷跡を最小限に抑えることが期待できます。

大きな腫瘍や深部にある腫瘍の場合は、メスによる切除が必要になることもあります。手術後は、病理検査により腫瘍の性質を確認し、必要に応じて追加治療を行います。

冷凍凝固療法(液体窒素)での治療法

頭のできもの治療における冷凍凝固療法は、-196度の液体窒素を使用して皮膚の異常部分に意図的に凍傷を引き起こしてできものを破壊し取り除く方法です。

この治療は特にウイルス性イボや老人性イボなどに有効で、治療後にはできものが壊れてかさぶたになり、自然に剥がれ落ちることが期待できます。

治療は1〜2週間に1回のペースで保険適用内で行うことが可能で、ウイルス性イボの場合は複数回の治療が必要になることがあります。治療後は痛みや水ぶくれが生じることがありますが、これらは治療の一環として自然回復することが多いです。

頭のできものの予防法

頭のできものには、日常から予防が期待できる方法もあります。最後に、頭のできものの予防法について解説します。

  • 生活習慣を整える
  • 正しいヘアケアを行う

生活習慣を整える

頭のできもの予防には、生活習慣を整えることが重要です。規則正しい生活を送り、ストレスを適切に管理することがカギを握ります。

睡眠不足や不規則な生活は皮脂分泌を促進し、頭皮のトラブルの原因になり得ます。十分な睡眠を取り、バランスの良い食事を心がけることで、頭皮環境を健康に保つことが期待できます。

また、ストレスは皮脂の過剰分泌や免疫機能の低下を引き起こすため、リラクゼーションや趣味の時間を設けるなどして、心身ともにリフレッシュすることが推奨されます。

正しいヘアケアを行う

頭のできもの予防には正しいヘアケアが不可欠です。

まず、シャンプーは頭皮の皮脂や汚れをしっかりと落とすことが重要ですが、過度な洗浄は逆効果になり得ます。シャンプー前にはブラッシングで髪の絡みを解き、予洗いで皮脂や汚れを浮かせます。

シャンプーは手で泡立て、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗い、しっかりすすぎます。また、頭皮の乾燥を防ぐために、洗いすぎを避け、保湿成分を含むシャンプーやトリートメントを選ぶことが大切です。

これらのステップにより、頭皮環境を整え、できものの予防につながります。

まとめ

頭のできものについて解説しました。頭のできものについてまとめると次のとおりです。

  • 頭のできものには、尋常性ざ瘡(にきび)や粉瘤、脂漏性角化症、頭皮悪性腫瘍などがあげられる
  • 頭のできものの原因には、皮脂の過剰分泌や毛穴のつまりや紫外線があげられる
  • 頭のできものは、主に皮膚科を受診することが推奨され、症状によって形成外科や内科の受診が必要な場合もある

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てますと幸いです。

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