おでこにブツブツができると、人の目も気になり「早く治ってほしい」と思う方も少なくないでしょう。おでこのブツブツは、ニキビ以外の可能性もあります。
今回は、おでこのブツブツの原因や治療方法について解説します。
おでこのブツブツの正体
おでこのブツブツはニキビのほかに、ブツブツやカサカサなどさまざまな症状がある湿疹やしこりができる粉瘤、毛穴に炎症が起こる毛嚢炎の可能性があります。
ニキビ
ニキビは毛穴に皮脂が溜まることによって起きる皮膚の慢性炎症性疾患で、尋常性ざ瘡とも呼ばれます。
皮脂が多すぎたり、毛穴の出口がつまったりすることで毛穴の外に皮脂が出られずに溜まります。溜まった皮脂を栄養にアクネ菌が繁殖し、繁殖したアクネ菌や雑菌に対抗するために免疫が働いて炎症が起こり、赤く腫れたり膿や痛みを伴ったりする状態となるのがニキビです。
皮脂腺が発達している顔を中心に、胸や背中にもできます。ニキビには進行の段階によって次のような症状があります。
- 微小面ぽう(マイクロコメド):毛穴の中に皮脂が溜まった状態
- 面ぽう:皮脂の分泌が多く、毛穴が塞がってしまうことによって皮脂が溜まっている状態
- 赤ニキビ(紅色丘疹):面ぽうの中でアクネ菌が増殖して炎症を起こし、赤く盛り上がった状態
- 黄ニキビ(膿庖):赤ニキビが悪化して、化膿した状態
面ぽうには、閉鎖面ぽう(白ニキビ)と開放面ぽう(黒ニキビ)の2種類があります。閉鎖面ぽうは毛穴が角栓で詰まり、皮脂が排出されずに溜まって白い吹き出物ができます。開放面ぽうは、毛穴が開いて表皮のメラニンや酸化した皮脂で黒く見える状態です。黄ニキビは、毛穴に膿が溜まって黄色がかって見えます。炎症が真皮にまで広がっているので、炎症が治まった後に跡が残る場合もあるでしょう。
湿疹
湿疹は皮膚炎とも呼ばれ、皮膚の表面に炎症が起こる病気です。赤くなったり、ブツブツができたり、カサカサしたりなどさまざまな症状が見られます。おでこに湿疹ができた場合、考えられるのは接触皮膚炎と脂漏性皮膚炎です。
接触皮膚炎は特定の物質が皮膚に触れることで炎症を起こす病気で、かぶれとも呼ばれています。化粧品や洗剤などの刺激やアレルギー反応のほかに、軟膏などを塗った部分に日光が当たることによって起こる場合もあります。湿疹・赤み・水ぶくれ・かゆみ・痛みなどの症状がありますが、炎症が起こるのは原因物質と触れた部位に限られます。
脂漏性皮膚炎は頭皮や顔など、皮脂の分泌が多い部位に湿疹ができる病気です。顔面ではおでこ・眉毛・眉間・鼻のわきなどにできやすく、赤み・かゆみ・湿疹・皮膚のはがれなどの症状があります。
近年では皮膚に常在するマラセチアという真菌が脂漏性皮膚炎の発症に関係があると考えられており、マラセチア菌が皮脂を分解することで作られた遊離脂肪酸が、皮膚を刺激して脂漏性皮膚炎の発症につながると考えられています。
粉瘤
粉瘤とは皮膚の内側に袋のようなものができて、その中に垢や皮脂が溜まってできた良性腫瘍の一つです。顔・首・背中・耳の後ろなどにできることが多く、原因ははっきりとはわかっていません。半球状のしこりが盛り上がり、真ん中に小さな穴が開いていることもあります。
自覚症状がなければ様子を見ても構いませんが、おでこのように目立つ場所にできたり感染して炎症を起こしたりした場合は、外科手術で取り除きます。
毛嚢炎
毛嚢とは毛穴の内側で毛根を包んでいる部分を指し、毛嚢炎は皮膚の表面にできた傷が黄色ブドウ球菌や緑膿菌などに感染して毛嚢に炎症が起きることを指します。髭剃りや毛抜き、カミソリでムダ毛処理をする際に発症することも多く、毛穴のある部位ならどこにでもできますが、顔・背中・陰部・臀部などによく見られます。
赤いブツブツができたり、毛穴に膿が溜まって盛り上がった発疹(膿疱)ができたりして軽い痛みやかゆみがありますが、ほとんどが数日で自然に治ります。しかし毛嚢炎が悪化して硬いしこりができる「せつ」と呼ばれる状態になると、赤く腫れて強い痛みを感じます。発疹をつぶすと二次感染を起こして悪化する可能性があるので、触らないようにしましょう。
おでこのブツブツの原因
おでこのブツブツは皮脂の過剰分泌、細菌感染、ストレスやホルモンバランスの崩れといった原因が考えられます。ここでは、おでこのブツブツの主な原因について解説します。
皮脂の過剰分泌によるもの
皮脂には外部から異物が侵入するのを防ぐ・皮膚を滑らかにする・細菌の増殖を抑制するなどの役割があり、肌の健康を保つために必要な存在です。しかし、皮脂が多すぎることがニキビや脂漏性皮膚炎を引き起こす原因の一つです。
皮脂が過剰に分泌されるのは、男性ホルモンが関係しているといわれています。男性ホルモン(アンドロゲン)が増えると皮脂の分泌が促進され、さらに角質が厚く硬くなって毛穴が詰まりやすくなり、ニキビができやすくなります。
細菌感染によるもの
皮膚の常在菌にはさまざまな種類があり、代表的な常在菌は表皮ブドウ球菌・アクネ菌・黄色ブドウ球菌・マラセチア菌の4つです。
表皮ブドウ球菌は皮脂を分解して脂肪酸とグリセリンを作り、皮膚を弱酸性に保ったり潤いを与えたりします。
アクネ菌は毛穴や皮脂腺にいる菌です。皮膚を弱酸性に保って、病原菌の繁殖を防ぐ働きがあります。アクネ菌は酸素がないところを好むため、毛穴が詰まって酸素がなくなり皮脂が多くなると、毛穴の中で増殖してニキビの炎症を起こします。
黄色ブドウ球菌は多くの人の皮膚の表面や粘膜などに存在する菌です。皮膚がアルカリ性に近づくと増殖して、炎症を起こしたり傷口を化膿させたりします。
マラセチア菌は人間だけではなく、犬や猫にも常在する真菌(カビ)です。頭皮や顔などに多く存在し、皮脂を脂肪酸とグリセリンに分解しています。
これら以外にも数多くの常在菌が皮膚の表面に存在し、バランスを保っています。しかし、マラセチア菌が増加すると脂漏性皮膚炎を悪化させ、皮膚表面の傷に黄色ブドウ球菌が侵入すると毛嚢炎を発症するなど、それぞれのバランスが崩れると皮膚トラブルが発生しやすくなるのです。
表皮ブドウ球菌が減少すると黄色ブドウ球菌が増殖するため、表皮ブドウ球菌を減らさないようにすることが重要です。洗顔のし過ぎや長風呂は控えるようにしましょう。
細菌に感染している場合、化膿して重症化することがありますので、痛みや炎症が強いときは皮膚科を受診してください。
ストレスやホルモンバランスの崩れによるもの
女性は生理の周期によって肌が変化しやすくなります。女性ホルモンには肌の新陳代謝を促して潤いを保つエストロゲン(卵胞ホルモン)と、皮脂の分泌を促すプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。生理の前はプロゲステロンが優位になって皮脂の分泌量が増え、ニキビなどの肌荒れが起きやすい状態になります。生理後の1週間はエストロゲンが多くなり、肌の調子が良くなります。
またストレスを感じると自律神経が乱れて、交感神経が優位になります。交感神経は男性ホルモンの分泌を招くので、皮脂が増えて毛穴が詰まりやすくなることで、ニキビができやすくなるのです。
ニキビと間違えやすいおでこのブツブツ
続いては、ニキビと間違えやすい症状について解説します。
あせも
あせもは垢やほこりで汗管(汗の出口)が塞がり、皮膚の中に汗が溜まって起きる炎症です。汗をかきやすい夏によく見られますが、厚着や暖房が原因となって冬場でもあせもができることがあります。
あせもができやすいのは、おでこ・首・肘や膝の裏側・足の付け根などの汗が蒸発しにくい場所です。あせもには透明な小さな水ぶくれと、チクチクした痛みやかゆみをともなう赤いブツブツの2種類があります。
顔面ヘルペス
ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスに感染して起こる病気です。唇や顔にできるヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型に感染して発症し、小さな水ぶくれ・ただれ・痛みなどの症状があります。単純ヘルペスウイルス1型は非常に感染力が強く、一度感染すると再発することが多いのが特徴です。抗ウイルス薬を服用することでより早く治療することができるので、なるべく早く皮膚科で診察を受けましょう。
マラセチア毛包炎
マラセチア毛包炎は、マラセチア菌が毛穴で繁殖して炎症を起こす病気です。皮脂が多い胸や背中、顔ではおでこ・鼻・顎にニキビとよく似た赤いブツブツができますが、ニキビのように段階の異なる発疹はありません。マラセチアに効果がある抗真菌剤が配合された塗り薬で治療します。
おでこのブツブツを治す方法
最後に、おでこのブツブツを治す主な方法について解説します。ブツブツをなるべく早く治すためには、規則正しい生活を送ってよい睡眠をとること・十分に保湿すること・症状に合った塗り薬の使用が重要です。
規則正しい生活を送る
ブツブツを治して健康な肌を保つためには、規則正しい生活を送りましょう。睡眠不足が続くと、肌のターンオーバー(新陳代謝)が乱れて古い角質が剥がれ落ちにくく、毛穴が詰まりやすくなってニキビの原因になります。睡眠中に脳下垂体から成長ホルモンが分泌されて肌のターンオーバーが活発になりますが、寝不足になると分泌量が低下して、ターンオーバーの乱れにつながるのです。
寝不足は自律神経も乱れやすくなり、皮脂の過剰分泌を引き起こします。早寝早起きを心がけ、質のよい睡眠をとることが重要です。ウォーキングなど負担の少ない運動を就寝の数時間前に行うと、寝付きがよくなるといわれています。快眠には、就寝の2~3時間前の入浴も効果的です。
就寝前には、コーヒー・緑茶・チョコレートなどカフェインを含んだ飲食物の摂取や飲酒は避けましょう。
肌の保湿などを行う
ニキビができている場合は、朝と夜に優しく洗顔をして、肌を清潔に保ちましょう。洗いすぎはニキビが悪化する原因になるので注意してください。洗顔後はしっかりと保湿することで、肌のバリア機能が保たれます。
塗り薬を使用する
ニキビや湿疹の場合は、それぞれ外用薬があるので、市販薬を試してみるのもよいでしょう。ニキビの症状によって合う薬が違うので、薬剤師に相談してください。
しかし、皮膚に合わない場合は悪化してニキビ跡が残る可能性があります。肌荒れがなかなかよくならなかったり、痛みやかゆみがあったりする場合は早めに皮膚科医に相談しましょう。
まとめ
おでこのブツブツの種類や原因、治す方法などについて解説しました。おでこにブツブツができるのはよくあることですが、対処の方法を間違うと治るまでに時間がかかったり、悪化したりすることがあります。
ニキビをはじめとする皮膚トラブルでは、生活習慣の見直しも必要になります。睡眠時間の確保や運動など、できるところから始めてみてはいかがでしょうか?
放置して悪化すると、炎症が起こったり跡が残る可能性もありますので、ブツブツがなかなか治らなかったり痛みがあったりする場合は、皮膚科で診察を受けましょう。
参考文献