顔がかゆいのはなぜ?原因と対処法を医師がわかりやすく解説

顔がかゆいのはなぜ?原因と対処法を医師がわかりやすく解説
この記事を監修した医師

倉田 照久 医師

渋谷文化村通り皮膚科

2019~2021年 都立広尾病院病院 初期研修、2021年 東邦大学医療センター大橋病院 入職、2022年 東京オンラインクリニック 開業、2023年 渋谷文化村通り皮膚科 開業

顔のかゆみは、湿疹ができていれば痕が残る可能性や、掻いて傷をつけてしまう可能性など気になることが多い症状です。顔のかゆみが続く場合、思わぬ病気が隠れているケースもあります。

今回は、顔のかゆみの原因や考えられる病気、対処法について解説します。

目次

顔がかゆくなる主な原因

顔がかゆい時にはその原因を取り除くことが基本の対処法です。まずは顔のかゆみを引き起こす主な原因を解説しますので、思い当たるものがないか確認してみましょう。

  • 乾燥
  • 花粉
  • 虫刺され
  • 肌に合わない化粧品

乾燥

皮膚は細胞の隙間が水分で満たされることによりバリア機能を保っているため、乾燥して水分が足りなくなるとバリア機能も落ちてしまいます。これによって外部から刺激性物質が侵入しやすくなったり、体内の水分が蒸散してさらに乾燥したりと刺激に弱くなってかゆみが強くなります。

皮膚の乾燥により刺激を受けやすくなることをドライスキンと呼び、顔のかゆみの原因としてよく見られる症状です。特に、湿度が低く大気が乾燥している時期などは顔のかゆみを感じやすいため、日頃の保湿ケアが大切になります。

花粉

花粉は鼻や喉の粘膜だけでなく、皮膚表面にも刺激を与えることがあります。花粉症の患者さんは花粉に含まれるアレルゲンに反応しやすくなっているため、皮膚から侵入した花粉に反応して皮膚炎となる可能性があります。

特に花粉の飛散が増える2~4月は大気が乾燥しており肌のバリア機能も低下しているため、花粉によって顔のかゆみ・発赤・湿疹などが生じやすくなります。

花粉の飛散量が多く、鼻や喉、目の花粉症の症状がひどいときに顔のかゆみも強くなる場合は、花粉による皮膚炎の可能性が高いでしょう。

虫刺され

気付かないうちに虫に刺されていることが、顔のかゆみの原因となる場合もあります。顔のかゆみとともに赤いぶつぶつや水ぶくれなどがある場合には気が付きやすいですが、皮膚の症状が目立たなくても強いかゆみが出ることがあります。

虫刺されに対する症状の出方は、虫の種類や個人の体質などによって大きく異なります。刺された部位が顔でなくても、刺された際に身体に入った虫の毒に対するアレルギー反応で顔などにかゆみが生じるケースもあります。

肌に合わない化粧品

日常的に使用している化粧品が、顔のかゆみの原因となっていることは珍しくありません。化粧品にはさまざまな物質が含まれているため、個人の体質によって刺激を受けてかゆみや皮膚炎を生じることがあります。

初めて使う化粧品で強いかゆみなどが出た場合には気が付きますが、見た目には症状がないのに慢性的なかゆみが続く場合などは、化粧品が原因だと気付かないケースもあるでしょう。

化粧品だけでなく、整髪料や歯磨き粉などが肌に触れることで皮膚炎が起こることもあります。

顔がかゆくなる主な肌トラブル・病気の種類

顔が突然かゆくなって治らない場合、何らかの病気のサインかもしれません。皮膚の病気はさまざまな原因で発症し、治療方法も病気によって異なります。ここでは、顔のかゆみの原因となる主な病気を解説します。思い当たるものがあれば早めに皮膚科を受診しましょう。

  • 皮膚そう痒症
  • 接触皮膚炎
  • 蕁麻疹
  • あせも
  • アトピー性皮膚炎

皮膚そう痒症

皮膚そう痒症は、肌に発赤やぶつぶつなどの目に見える症状がないのに、強いかゆみが続く病気です。顔など特定の部位のみがかゆくなる場合と、全身の至る所がかゆくなる場合の2種類に大別されています。

皮膚そう痒症が発症する原因ははっきりわかっていませんが、次の3つが原因と考えられています。

  • 肌の乾燥によるバリア機能の低下
  • 服薬している薬が合っていない
  • 基礎疾患による内臓機能の問題

別の病気によって腎臓や肝臓などの機能が低下している場合、排出されるべき毒物が体内に残って皮膚のかゆみとして症状が出ることがあります。この場合には内臓の治療をすることで顔のかゆみもよくなっていきます。

接触皮膚炎

接触皮膚炎は、肌に刺激性の物質や麺気反応を起こす物質が接触することによって、かゆみや発赤、水ぶくれ、ただれなどの症状が起こる病気です。顔の皮膚はほかの部位に比べて薄いため、ほかの部位は反応しない物質にも反応してかゆみが生じることがあります。

接触皮膚炎は、症状を引き起こす物質や体質によって次の4つに分類されています。

  • 刺激性接触皮膚炎
  • アレルギー性接触皮膚炎
  • 光接触皮膚炎
  • 全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群

どのような種類の接触皮膚炎であっても、対処法の基本は原因物質を特定して接触を避けることです。接触皮膚炎の原因の特定や、ほかの皮膚疾患との鑑別は難しいため、皮膚科の医師とよく相談しながら治療しましょう。

蕁麻疹

蕁麻疹は、肌の一部が突然赤く膨れて盛りあがってかゆみを生じる症状です。突然発症して数時間~数日できれいに治ることが特徴で、全身に発症する場合と顔など特定の部位のみで発症する場合があります。

炎症を起こすホルモンであるヒスタミンが、何らかの理由で血管の周囲に分布するマスト細胞から大量に分泌されることが蕁麻疹の原因とされています。

蕁麻疹はアレルギー性と非アレルギー性に分けられ、非アレルギー性の蕁麻疹はストレスや一時的な刺激によって起こり、原因を正確に特定できないものが大半です。

蕁麻疹は数時間~数日で自然に消退することがほとんどで、この場合には特別な治療は必要ありません。しかし、頻繁に蕁麻疹を発症する場合には、アレルギーや内臓の病気の可能性もあるので、詳しい検査を受けた方が良いでしょう。

あせも

あせも(汗疹)は、大量の発汗によって汗腺が詰まって炎症を起こした状態です。皮膚に赤いぶつぶつができてかゆみを伴い、夏場など高温多湿下で起こりやすくなります。背中や股関節など汗が溜まって蒸れやすい部位にできやすいですが、顔の発汗量が多い方は額にあせもができることがあります。

特に乳幼児から小児は体表面積に対して汗腺が多いためにあせもができやすく、こまめに汗を拭いて肌を清潔に保つことが大切です。ほとんどの場合は自然に治りますが、炎症が悪化すると肌のバリア機能が低下して細菌感染を起こす可能性もあるため、症状がひどい場合は早めに皮膚科を受診しましょう。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、何らかの原因によって肌のバリア機能が大きく低下し、そこにアレルギーや刺激が加わって生じる皮膚の慢性的な炎症です。遺伝性疾患でもあり、家族に気管支喘息、アレルギー性鼻炎がある場合にもアトピー性皮膚炎の素因とされています。

軽い症状では肌の炎症は少なくかゆみを生じる程度ですが、重症になると肌のただれや水ぶくれなどを生じ、耐え難いかゆみとなる場合も少なくありません。

食べ物だけでなく、ダニやハウスダストなどの環境アレルゲンが刺激になっていることもあります。肌への刺激をなるべく避けることが治療の基本です。アトピー性皮膚炎にはステロイド外用薬だけでなくさまざまな薬があり、皮膚科医が症状に応じて使用する薬を判断します。

顔のかゆみが発生するメカニズム

かゆみは、身体が何らかの外部刺激から肌をまもろうとして起こる防御反応です。かゆみが起きるメカニズムはまだ詳しく解明されていませんが、何らかの外部刺激を受けるとかゆみ物質が細胞から放出され、このかゆみ物質が知覚神経に作用することで脳にかゆみや痛みが伝えられると考えられています。

かゆみ物質が放出される原因には、衣類とのこすれなどの刺激や食べ物、乾燥などさまざまなものがあり、その原因を取り除くことができればかゆみは治まります。

かゆみ物質には、大きく分けて次の2種類があります。

  • ヒスタミン
  • ヒスタミン以外の物質

ヒスタミンによるかゆみ

ヒスタミンは炎症やアレルギー反応、神経伝達に関与しています。蕁麻疹や花粉症に伴うかゆみに関係しており、抗ヒスタミン薬でかゆみを抑えることができます。

ヒスタミン以外の物質によるかゆみ

抗ヒスタミン薬を使用してもなかなかかゆみが収まらなかったり、何度も繰り返したりする場合には、ヒスタミン以外の原因によってかゆみが引き起こされていると考えられます。ヒスタミン以外でかゆみを引き起こすと考えられているのはセロトニンやサイトカイン、タンパク質分解酵素、脂質などが挙げられます。

顔がかゆい場合の対処法

ここまで解説したように、顔のかゆみにはさまざまな原因がありますが、肌の状態を健康に保つことがすべての治療の基本です。ここでは、顔がかゆい場合に、ご自身でできる対処法を解説します。

  • 洗顔・スキンケア・化粧品を見直す
  • 清潔を保つ
  • 改善が見られない場合は皮膚科を受診する

洗顔・スキンケア・化粧品を見直す

普段使っている洗顔料やスキンケア用品、化粧品などは、顔のかゆみを引き起こす刺激になっている可能性が高いものです。特に新しい商品を使い始めてからかゆみが出てきた場合は、いったん使用を中止して様子を見ましょう。

無添加や低刺激と記載のある商品でも、体質によっては刺激となってしまう場合があります。新しい化粧品を使う際には、二の腕の内側など皮膚が薄くて目立ちにくい場所につけて試してみるのがおすすめです。

清潔を保つ

皮膚のかゆみは皮膚に接触する物質によって引き起こされていることが多いため、皮膚を清潔に保つのはとても重要です。外部から付着する汚れだけでなく、皮膚から分泌される皮脂も、過剰に溜まると炎症の原因となります。こまめに顔を洗って清潔にしておくことで、皮膚のバリア機能が正常に保たれ、かゆみや炎症を起こしにくくなるでしょう。

ただし、清潔を意識するあまり洗いすぎてしまって、逆効果となる可能性もあるため注意が必要です。皮脂は肌の水分を保つために不可欠で、肌の状態によって皮脂の分泌量も調整されています。皮脂を落としすぎると乾燥によって肌がダメージを受け、それに反応して皮脂が過剰分泌されて毛穴の詰まりを起こしやすくなります。

石鹸を使った洗顔は朝と夜の1日2回で十分で、汗をかく量が少ない日なら1日1回でも問題ありません。汗をやわらかいタオルでこまめに拭くなど、肌に汚れがつかないケアを心がけましょう。

改善が見られない場合は皮膚科を受診する

上記の対策を行っても顔のかゆみが改善しない場合は、予期せぬ病気の可能性もあるため早めに皮膚科を受診しましょう。皮膚科の医師に診察してもらい、かゆみの原因を特定できれば、かゆみの症状を早く改善することができます。

中にはかゆみの原因をなかなか特定できないケースもありますが、その場合は対症療法でかゆみを抑えるといった方法もあります。かゆみが続き、引っ掻いて傷つけてしまわないよう、顔のかゆみは早めに対処した方が予後も良くなるでしょう。

まとめ

顔のかゆみの原因と対処法について解説しました。顔のかゆみが続く原因はさまざまですが、大きくまとめると特に注意したいのは次の3点です。

  • 皮膚の乾燥によるバリア機能の低下
  • 薬・化粧品・食べ物などが刺激になっている
  • 肝臓や腎臓など皮膚以外の病気

慢性的なかゆみは心身ともに衰弱させますが、適切に治療すれば改善するケースが大半です。「顔のかゆみくらいで」と思わず、症状が続く場合は早めに皮膚科を受診しましょう。

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