虫刺されで水ぶくれができた際の処置は?虫別の対処法・注意点を医師がわかりやすく解説

虫刺されで水ぶくれができた際の処置
この記事を監修した医師

大橋 一樹 医師

スミレ医院皮膚科

経歴
東京医科歯科大学医学部附属病院、国家公務員共済組合九段坂病院、NTT伊豆逓信病院、石心会狭山病院、埼玉県立がんセンター

所属学会・資格
日本皮膚科学会専門医、日本皮膚科悪性腫瘍学会正会員、日本小児皮膚科学会正会員、日本抗加齢医学会認定専門医、日本医師会認定産業医

アウトドアを楽しむ方々にとって、虫刺されは避けられない問題の一つです。特に、虫刺されの後に水ぶくれができると、痛みやかゆみだけでなく見た目にも気になるもの。

では、なぜ水ぶくれができるのでしょうか?また、どのような虫に刺されると水ぶくれができるのでしょうか?

今回は、虫刺されに関する基本的な知識から、水ぶくれの原因や対処法、予防方法をわかりやすく解説します。楽しい思い出を虫刺されのトラブルなしで過ごすための情報をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

虫刺されの症状

虫刺されの症状

虫に刺された場合、虫の種類や個人の体質によってさまざまな症状が現れます。虫刺されは大きく分けて、「即時型反応」と「遅延型反応」の2つのタイプに分類されます。まずは、それぞれの特徴や症状について詳しく解説します。

即時型反応

即時型反応は、虫に刺された直後から数分以内に現れる症状のことを指します。この反応は、虫の唾液や毒に含まれる成分が皮膚に触れることで、アレルギー反応を引き起こすことが原因とされています。 主な症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 赤みや腫れ
  • 強いかゆみ
  • 痛みや熱感
  • 小さな水ぶくれや発疹

これらの症状は、大抵の場合数時間から1日程度で自然に治まることが多いです。

遅延型反応

遅延型反応は、名前の通り虫に刺されてから時間が経過した後に現れる症状を指します。即時型反応とは異なり、数時間後から数日後に症状が出現することが特徴です。

遅延型反応の原因は、即時型とは異なるアレルギー反応や、炎症反応によるものと考えられています。主な症状としては、次のようなものが考えられます。

  • 皮膚の硬化や色素沈着
  • 持続的なかゆみや痛み
  • 大きな水ぶくれや潰瘍
  • 腫れや発熱

遅延型反応の症状は、放置すると数日から数週間続くことがあります。特に症状が強い場合や、改善の兆しが見られない場合は、医師の診察を受けると良いでしょう。

刺されると水ぶくれができる虫の種類

刺されると水ぶくれができる虫の種類

虫刺されの症状は、刺された虫の種類によって異なります。中でも、水ぶくれができる虫の種類について解説します。

  • やけど虫
  • ダニ
  • ネコノミ
  • ハチ

蚊に刺された際、多くの人が直後から強いかゆみを感じることが一般的です。このかゆみの原因は、蚊が吸血するときに皮膚に注入する「唾液腺物質」によるものです。

私たちの体はこの唾液を異物として認識し、それに対する反応として赤みやかゆみが現れます。症状の強さは個人差があり、中には水ぶくれができることもあります。特に、痒みを我慢できずに掻きむしってしまうと、傷口からの感染のリスクが高まります。

やけど虫

その名のとおり、やけど虫は刺されるとやけどのような症状が現れる虫です。やけど虫に刺されると、痛みや熱感を伴う赤い発疹が出現します。この発疹は、しばらくすると中央部が黒くなり、水ぶくれのような状態になることがあります。

やけど虫の唾液には、皮膚を刺激する成分が含まれており、これが刺された部位の炎症反応を引き起こします。症状の強さは、刺された部位ややけど虫の種類、個人の体質によって異なります。

一般的には接触後2〜3日で膿が入った水ぶくれができます。そして、1〜2週間後にはかさぶたとなります。

ダニ

ダニは、私たちの身の回りに生息している小さな節足動物で、一部の種類のダニは人間を刺すことがあります。ダニに刺されると、赤く腫れ上がった痕が残ることが多く、強いかゆみを伴うことが一般的です。

特に、マダニは感染症を媒介することが知られており、刺された後に発熱や筋肉痛などの全身症状が出ることがあります。

ダニに刺された痕は、他の虫刺されとは異なり、中央に小さな黒点が見られることが特徴です。この黒点は、ダニの口器が皮膚に残っていることを示している場合があります。

ダニに刺された場合、早めの対処が必要です。特に、マダニによる刺されは、感染症のリスクがあるため、医師の診察を受けることをおすすめします。

ネコノミ

ネコノミは、猫や犬などのペットを持つ家庭で見られることが多い小さな虫です。ネコノミは、人間を刺すことがあり、刺されると強いかゆみを伴う赤い発疹が出現します。

ネコノミは、人の皮膚にとりついて血を吸います。吸血する際、ネコノミは唾液腺物質を注入し、この物質に対するアレルギー反応が皮膚炎を引き起こします。

症状は、特にすねや足首周辺に赤いブツブツが現れ、強烈なかゆみを伴うことが一般的です。

多くの場合、ネコノミに刺された瞬間はわからないといわれています。しかし、前日に公園を散歩したり、庭の手入れをしたりしたという記憶をじっくりと振り返ることで、ネコノミと接触していた可能性が高いことがわかることが多いです。

ハチ

ハチは特に夏の時期に活動が活発になり、刺されると強い痛みを伴います。ハチの毒にはアレルギー反応を引き起こす成分が含まれており、刺された部位が腫れ上がることが一般的です。

アレルギー体質の人はハチに刺されるとアナフィラキシーショックという重篤な症状を引き起こすことがあります。

ハチに刺された場合、刺された部位を冷やして症状を和らげることが大切です。アレルギー反応の症状が出た場合や、何度も刺された場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

虫刺されの対処方法

虫刺されの対処方法

虫に刺された際の症状はかゆみや痛み、腫れなどさまざまですが、適切な対処をすることでこれらの症状を和らげることができます。ここでは、虫刺されの初期対応として役立つ方法について解説します。

  • 患部を冷やす
  • 市販薬を患部に塗る

患部を冷やす

虫に刺された直後は、患部が赤く腫れ上がることがあります。このような場合、まずは患部を冷やすことで、腫れや痛みを和らげることができます。

具体的には、冷水や冷たいタオル、保冷ジェルなどを使って、患部を5〜10分程度冷やします。ただし、冷凍物を直接肌に当てると、低温やけどの原因となることがあるため、タオルなどでくるんでから使用すると良いでしょう。

市販薬を患部に塗る

虫刺されのかゆみや痛みを和らげるには、市販の外用薬が効果的です。薬局やドラッグストアで手に入る、虫刺され用のジェルやクリームを患部に塗ることで、症状の軽減が期待できます。

成分は、抗ヒスタミン薬やステロイドが含まれているものが多いです。使用する際は、製品の説明書をよく読み、指定された量を守って使用してください。

虫刺されの水ぶくれで受診する目安と処置の内容

虫刺されの水ぶくれで受診する目安と処置の内容

虫刺されは日常的に起こりうることですが、受診した方が良い場合もあります。ここでは、受診の目安と、医療機関での処置内容について解説します。

受診の目安

次の場合は、セルフケアで済ませずに病院で受診するようにしてください。

  • 症状がひどい場合
  • 特定の虫刺され

症状がひどい場合

虫刺されによる症状は、多くの場合、かゆみや赤み、腫れといった軽度のもので、数日のうちに自然に治まることが多いです。そのため、まずは症状を悪化させないように、無理に掻いたり触ったりすることは避けて様子を見ることが大切です。

しかし、次の場合は、皮膚科を受診するようにしてください。

  • 刺された部分以外での症状や発熱などの全身的な症状が現れた場合
  • 症状が数日経っても改善しない、もしくは悪化している場合

受診の際には、症状の開始時期や具体的な状態、さらに活動の内容や場所などを医師に詳しく伝えることが重要です。

特定の虫刺され

刺した虫の種類によっては、受診すべき場合があります。

室内でのダニ刺されの多くはイエダニによるもので、特に腹部や太ももの内側などに症状が現れることが多いです。しかし、野外でマダニに刺されることもあり、その場合はすぐに医療機関を受診することが必要です。

また、クモに刺されると、痛みや腫れなどの症状が出ます。特に毒性の強いクモに刺された場合、全身に症状が出ることもあるため、医療機関の受診が必要です。 ムカデも要注意です。

ムカデに刺されると、強い痛みやしびれが生じることがあります。特にアレルギー反応が強く、アナフィラキシーショックのリスクも考えられるため、異変を感じた場合はすぐに医療機関を受診してください。

同様に、ハチに刺された場合もアナフィラキシーショックのリスクがあります。全身に症状が出た場合は医療機関の受診が必要です。

受診が必要な理由

このように虫刺されによっては受診が必要な場合もありますが、受診がすすめられる理由はただの虫刺されにとどまらず大きな疾患に繋がる場合があるからです。具体的には、次のような疾患につながる可能性があります。

  • とびひ
  • アナフィラキシーショック
  • 感染症

とびひ

とびひは、虫刺されの部位が細菌に感染して起こる感染症です。赤く腫れた症状が数日間続く場合や、黄色い膿が見られる場合は、受診を検討してください。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックは、虫刺されによるアレルギー反応が原因で起こる重篤な症状です。呼吸困難や意識障害などの全身症状が現れた場合、直ちに救急医療機関への受診が必要です。

感染症

マダニにはウイルスや他の病原体が潜んでおり、刺された場合は感染症を引き起こすことがあります。特に、マダニが媒介する感染症には日本紅斑熱やSFTSなどがあり、これらの感染症は重篤な症状を引き起こすことがあります。

SFTSは特に致死率が高く、現在のところ有効な治療法やワクチンは存在しません。

処置の内容

受診の際は、どのような処置がなされるのでしょうか?虫刺されによる症状や合併症に対する医療機関での処置は、症状の程度や原因となる虫の種類によって異なります。ここでは、主な処置内容について解説します。

薬の処方

虫刺されの症状を和らげるために、医師から薬が処方されることがあります。 ステロイド外用剤は、赤みや腫れ、かゆみなどの炎症症状を抑えるために使用されます。症状の程度に応じて、強さや使用頻度が指示されます。

また、抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。抗ヒスタミン薬はアレルギー反応によるかゆみを和らげるための薬で、内服薬として処方されることが多いです。

アドレナリン筋肉注射

アナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応が起こった場合、迅速な対応が必要です。アドレナリン筋肉注射は、血圧を上げて気管を広げるための緊急処置として行われます。注射は、専門的な知識と技術を持った医療従事者が行う必要があります。

マダニの除去

マダニが皮膚に取り付いている場合、正しい方法で迅速に除去することが重要です。無理に引き抜くとマダニの口器が皮膚に残ってしまうことがあるため、専用のピンセットを使用して、皮膚に垂直になるようにゆっくりと引き抜きます。除去後は、消毒液で傷口を消毒することが推奨されます。

虫刺されの予防方法

虫刺されの予防方法

虫刺されは日常生活の中で突然発生するものですが、適切な予防策を講じることでリスクを大幅に低減させることができます。ここでは、効果的な予防方法について解説します。

  • 掃除を徹底する
  • 露出を減らす
  • 虫除けスプレーを使う

掃除を徹底する

家の中には、ダニやノミ、ゴキブリなどの害虫が潜んでいることがあります。これらの虫は、埃やゴミ、食べ残しを餌として生息しています。そのため、家の中を清潔に保つことは、虫刺されの予防に非常に効果的です。 毎日の掃除を習慣化することで、害虫の繁殖を抑えることができます。特に、床やカーペット、ベッドの下など、埃がたまりやすい場所を重点的に掃除するようにしてください。

また、定期的な大掃除は忘れないようにしましょう。季節の変わり目や年末年始など、定期的に家全体を徹底的に掃除することで、隠れている害虫を駆除することができます。

その他、食べ物の管理も重要です。食べ物は密閉容器に入れて保存し、食べ残しやゴミはすぐに処分することで、害虫が寄ってくるのを防ぐことができます。湿度が高いとダニやカビが繁殖しやすくなります。除湿器やエアコンを使用して、室内の湿度を適切に保つよう心掛けましょう。

掃除を徹底することで、家の中の害虫を減少させるだけでなく、健康的な生活環境を保つことができます。虫刺されを予防するためには、日常的な生活習慣の見直しとともに、掃除の重要性を認識し、実践することが大切です。

露出を減らす

夏やアウトドア活動時には涼しい服装が好まれますが、皮膚が露出すればするほど虫刺されのリスクが高まります。長袖・長ズボンの着用、帽子や手袋の使用、サンダルではなく足全体を覆う靴を選ぶなど、適切な服装にして露出を減らすことが重要です。また、露出を減らすことは紫外線対策にもつながります。

虫除けスプレーを使う

虫除けスプレーは、虫刺されを予防するための効果的な手段の一つです。特に、蚊やダニなどから身を守るために活用することがおすすめです。露出している部分の皮膚や服に均一に吹きかけることで、虫刺されを予防できます。

市販されている虫除けスプレーには、さまざまな成分が使用されています。敏感肌の方や小さなお子様がいる家庭では、肌に優しい成分を含むスプレーを選ぶと良いでしょう。

アウトドア活動や夕方の散歩など、虫が多い場所や時間帯に出かける際には、虫除けスプレーを携帯することで、いつでも使用できるようにしてください。

まとめ

 虫刺されは、私たちの日常生活やアウトドア活動中に遭遇する一般的な問題です。蚊、ダニ、ハチなど、さまざまな虫による刺されがかゆみや腫れ、水ぶくれなどの症状を引き起こします。特に、一部の虫刺されはアレルギー反応や感染症のリスクを伴うことがあるため注意が必要です。

刺された際の対処方法としては、患部を冷やす、市販薬を使用するなどの基本的な手段がありますが、症状が重い場合や特定の虫に刺された場合は、医療機関を受診するようにしてください。

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