ぶつけてないのにあざができる原因は?主な病気と病院へ受診する際の目安を医師が解説

ぶつけてないのにあざができる原因
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

ぶつけた覚えはないのに、肌にあざができるのはなぜでしょうか?今回は、肌にあざができる原因や、あざができやすい人の特徴とその理由や、病院を受診する際の目安についても詳しく解説します。

あざの発生は、ときにはたんなる皮下出血の現れに過ぎませんが、場合によってはより深刻な健康問題の兆候であることもあります。それぞれのケースについて原因や正しい対処法を知り、適切な対応がとれるよう参考にしてください。

目次

あざの種類

あざの種類

皮膚の異常として現れるあざは、色や形状によって呼び方が違い、それぞれ異なる原因によって引き起こされます。このパートでは、それぞれのあざの特徴や原因、症状ついて解説していきます。

赤あざ

赤あざは生まれつきあることが多く、皮膚の表面に浮き出たような赤い斑点や斑紋として現れます。赤あざは一般的に血管の拡張や血液の流れが原因で起こり、単純性血管腫、いちご状血管腫、ポートワイン母斑などがあります。

赤あざが大きくなったり痛みをともなう場合や他の症状と併発している場合は、皮膚科を受診して相談しましょう。

青あざ

青あざは、皮膚の表面に青紫色の斑点や斑紋として現れるあざのひとつです。青く見えるのはメラニン色素の色で、皮膚の深部にあるためこのように見えます。蒙古斑は青あざの一種で、生後1週頃より青いあざがお尻や腰にみられるもので、5〜6歳に成長すると自然と消えていきます。

蒙古斑の他に、青あざには太田母斑、異所性蒙古斑、伊藤母斑などがあります。

茶あざ

茶あざは、皮膚の表面に薄茶色の斑点や斑紋として現れるあざの一種です。この色味からカフェオレ斑とも呼ばれ、医学的には扁平母斑といいます。生まれつきあざとして現れていることが多いですが、後発性の茶あざもあります。

他のあざと同様にメラニン色素の沈着が原因で自然に消えることはありませんが、悪性化することは稀です。

黒あざ

黒あざはいわゆる黒子(ほくろ)のことで、母斑細胞の密集で形成されます。色素性母斑とも呼ばれます。黒あざの原因は多岐に渡り、紫外線や加齢、ホルモンバランスの変化などが一般的な原因として挙げられます。

黒あざが増殖したり形状が変化したりする場合は皮膚がんの可能性があるため、医師の診察を受けることが重要です。

あざができやすい人の特徴とその理由

女性をはじめ、皮膚が薄い人、肥満の人、高齢者は特にあざができやすいといわれています。これらに当てはまる人は、知らぬ間にあざができたと感じやすく、他の人よりも注意が必要です。ここでは、あざができやすい人の特徴とその理由を解説します。

  • 女性
  • 皮膚が薄い人
  • 肥満の人
  • 高齢者

女性

女性は一般的に、男性よりもあざができやすい傾向があります。これは、女性の皮膚が男性よりも薄く、血管が皮膚の表面から浅く通っているため、ちょっとした刺激で毛細血管が切れてあざを作りやすいためです。

また、女性のホルモンバランスの乱れや生理周期によって、血管が脆くなることも要因のひとつです。肌の色が白いためにあざが目立ちやすかったり、過度なダイエットによって身体への負荷がかかり、血管が脆くなってあざを作りやすいことも考えられます。

このような理由で女性は日常生活での小さな外傷や衝撃にも注意が必要で、特にあざができやすいと感じる場合は、医師に相談することも検討してみてください。

皮膚が薄い人

皮膚が薄い人は、一般的にあざができやすいとされます。特に皮膚の表面から血管が透けやすい人は注意が必要です。皮膚の厚みは、遺伝的な要因や加齢によって個人差があります。紫外線を浴びる機会が多かったり、皮膚が乾燥する状態が続くと皮膚が薄くなることもあります。

皮膚が薄い人は皮膚の強度が低く、外傷や圧迫に対する耐性が低下しています。そのため、軽度の衝撃や圧力でも皮膚の下の組織や血管が傷つきやすく、結果としてあざができやすいのです。

肥満の人

肥満の人は、体重が増加することで身体全体の圧力が増大し、皮下組織や血管に負担がかかります。その結果、皮下組織や血管が簡単に損傷しやすくなり、軽い外傷でもあざができやすくなります。

また、肥満の人は血液の循環が悪くなりやすく、これもあざができやすい要因となります。血液の循環が悪化すると皮膚や組織への酸素や栄養素の供給が不足し、組織が弱くなるため、あざを作りやすくなります。

さらに、急激に肥満になると身体と空間の距離感がつかみづらく、家具や建物の一部などに当たってあざを作ってしまうケースもあります。

高齢者

高齢者は加齢にともなって肌のハリや皮膚の厚みがなくなり、皮膚が脆弱になります。皮膚の脆弱性が増すと、軽い外傷や圧迫によって血管が簡単に損傷し、あざができやすくなります。

また、皮下組織にある脂肪やコラーゲンが減少するため、血管が皮膚表面から近くなり、外部からの刺激や圧力によって血管が損傷しやすくなります。その他、高齢者は血管の柔軟性や修復能力が低下するので、一度できたあざが治りづらいことも理由の一つです。

以上のような理由から高齢者はあざができやすく、特に軽い外傷や圧迫によってあざが発生しやすい傾向があります。

ぶつけていないのにあざができる原因

ぶつけていないのにあざができる原因

ぶつけた覚えがないのにあざができている場合、たんに怪我をしたことに気が付かなかったという理由だけではないかもしれません。場合によっては、血管や臓器、血液の病気に関連することが原因の可能性があります。ここでは、ぶつけていないのにあざができる原因を、血管や臓器の病気と血液の病気という2つの観点から解説します。

血管や臓器の病気

まずは、あざができる主な血管や臓器の病気について解説します。

  • 老人性紫斑
  • 血管炎
  • 肝機能障害

老人性紫斑

老人性紫斑は、加齢などを理由に皮膚の下にある小さな血管が脆くなり、日常生活で受ける少しのダメージで皮下出血を起こし現れるあざです。このあざによる健康への影響は大きくないため、一般的に治療の必要はありません。

血管炎

血管炎は、血管の壁に炎症が生じる自己免疫疾患です。血管炎になると手足にかゆみをともなう小さな紫色のあざができ、むくみや関節の痛みなどをともないます。全身にわたって発生することもあるため、注意が必要です。

肝機能障害

肝機能障害により肝臓が正常に機能しなくなると、凝固因子の生成が減少し、血液が正常に凝固しづらくなります。このため、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの疾患によって肝機能が弱まると凝固因子が不足し、身体のさまざまな部位で出血が起こりやすくなることで、ぶつけていないのにあざができることがあります。

肝機能障害はアルコールの過剰摂取や慢性的な肝疾患に関連して発生することがあります。肝機能の異常が疑われる場合は、早急に医師の診断を受け、適切な治療を受けましょう。

血液の病気

続いて、あざができる主な血液の病気について解説します。

  • 血小板減少性紫斑病
  • 白血病
  • 血友病

血小板減少性紫斑病

血小板減少性紫斑病は、免疫機能の異常によって免疫系が誤って体内の血小板を攻撃する自己免疫疾患です。血小板が減少すると血液の凝固機能が低下し、ぶつけていないのに皮膚にあざができやすくなります。

血小板減少性紫斑病の治療は症状の重症度に応じて異なりますが、重度の症例では免疫抑制剤や血小板輸血が必要となることがあります。

白血病

白血病は、骨髄における異常な白血球の増殖によって引き起こされる血液がんです。白血病では、異常な血液細胞が正常な血小板を取り込むことがあります。その結果、血小板が減少し、あざできやすくなります。

白血病には急性型と慢性型があり、治療法は病型や進行度に応じて化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植などが検討されます。

血友病

血友病は、遺伝性の凝固因子の欠損または機能不全によって引き起こされる出血性疾患です。血友病の患者さんは軽度の外傷や圧迫でも血液が十分に凝固しないため、内出血や皮下出血によってあざが生じやすくなります。血友病の治療には、不足している血液凝固因子を注射で補う補充療法やその他の対症療法があります。

病院へ受診する際の目安

病院へ受診する際の目安 次のような症状や状況が見られる場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

  • 同じ場所に頻繁にあざができる
  • 出血以外の症状がある
  • 自分や家族に血液の凝固異常の病歴がある

同じ場所に頻繁にあざができる

意識していなくてもよくぶつけている可能性があるかもしれません。同じ場所に頻繁にあざができる場合は、日々の生活でぶつけたりこすっている家具などがないか気にして生活してみましょう。

あざが何度も繰り返し発生する場合は、血液の凝固異常や他の潜在的な健康問題のサインとなる可能性があります。定期的にあざができる場合は、医師による詳しい検査を行いましょう。

出血以外の症状がある

あざができるだけでなく、体の他の部位に異常が見られる場合は、潜在的な健康問題がある可能性があります。たとえば、発熱、関節痛、倦怠感などがある場合は、全身的な疾患や免疫系の異常が考えられます。

自分や家族に血液の凝固異常の病歴がある

自身に肝機能障害や血液の凝固異常に関する既往歴があったり、家族にも既往歴がある場合は、特に注意が必要です。遺伝的な要因や生活習慣による影響が考えられるので、可能であれば家族に付き添ってもらって病院へいきましょう。

まとめ

ぶつけてないのにあざができる原因には、血管や血液の病気、肝機能の異常などが考えられます。病院へ受診する際の目安としては、あざが頻繁にできる、出血以外の症状がある、自分や家族に血液の凝固異常の病歴がある場合は特に注意しましょう。これらの症状が見られる場合は、早めに医療機関での受診をおすすめします。

生まれつきあるあざは、皮膚科に相談することで治療できる可能性もあります。気になるあざがあるときは皮膚科の受診を検討してみましょう。

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