やけどの水ぶくれ対策は?応急処置~予防方法を医師が解説

やけどの水ぶくれ対策
この記事を監修した医師

藤堂 紗織 医師

Alohaさおり自由が丘クリニック

Alohaさおり自由が丘クリニック 院長
日本医科大学卒業。令和元年5月Alohaさおり自由が丘クリニック開院。
日本内科学会認定内科医、日本透析医学会、日本腎臓学会、点滴医療研究会、日本美容皮膚科学会。

やけどは誰にでも起こりうる症状の一つです。その中でも、水ぶくれができる場合は特に注意が必要です。この記事では、やけどと水ぶくれがどのようにして生じるのか、基本的な知識からすぐにできる応急処置、医療機関での対応、そして予防方法までを幅広く解説していきます。

家庭での緊急時はもちろん、普段からの予防にも役立つ内容となっています。ぜひ最後までお読みいただき、いざというときに備えてください。

目次

やけどと水ぶくれの基本知識

やけどと水ぶくれの基本知識

やけどになってしまったときの痛みはひどいもので、水ぶくれまでできてしまうとさらに気をつかってしまうでしょう。しかし、やけどがどのようなメカニズムで起こり、なぜ水ぶくれが発生するのか、理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?ここでは、まずやけどと水ぶくれについて基本的な知識を解説します。

やけどとは

やけどが発生するメカニズムについて解説します。やけどの発生原因は多種多様ですが、最も一般的な原因は熱源と皮膚が直接接触することです。接触によって、熱エネルギーが皮膚に移動し始めます。その結果、細胞内のタンパク質が変性し、細胞膜が破壊され、水分や栄養素が漏れ出してしまいます。

このような細胞の破壊が起こると、体は自動的に修復作業を開始します。この段階で炎症反応が起こり、皮膚に赤みや腫れ、痛みが現れるのです。我々が「やけどしている肌」と認識しているのは、こうして炎症が起きている肌のことなのです。

やけどの分類

やけどは重症度によって分類が存在します。この分類を理解しておくと、どのような治療が必要なのか、自宅でのケアが可能なのかがわかります。

Ⅰ度

最も軽度のやけどです。表皮(皮膚の一番外側の層)だけが損傷した状態で、症状としては、軽い赤み、腫れ、痛みがありますが、水ぶくれはできません。大抵の場合、数日で自然に治ります。

浅達性Ⅱ度

皮膚の真皮(表皮の下の層)の一部まで損傷が及んだ状態です。このタイプのやけどは、水ぶくれができる可能性が高いようです。水ぶくれが小さい場合、自宅でのケアも可能ですが、大きな水ぶくれや広範な損傷の場合は医療機関での治療が必要です。

深達性Ⅱ度

皮膚の真皮層が大部分または全て損傷している状態です。水ぶくれは大きくなりますが、損傷度が深くなるにつれて痛みが減少することが特徴です。このタイプのやけどは感染のリスクが高く、傷あとが残ってしまうことが多いです。必ず医療機関で治療を受けるようにしましょう。

Ⅲ度

最も重症で、皮膚だけでなく、その下の組織、時には骨まで損傷します。皮膚は黒ずんだり、白くなったりします。痛みは意外と少ないかもしれませんが、これは神経を損傷しているためです。Ⅲ度のやけどは、即座に救急医療にかかる必要があります。

やけどの分類によって、適切な対応が大きく変わります。特にⅡ度のやけどでは、浅達と深層で治療法が異なるため、その区別をしっかりと理解しておくことが大切です。

水ぶくれができる原因

水ぶくれができるのは、皮膚が熱や化学物質によって損傷を受け、その影響が真皮層まで達した時です。真皮層が損傷すると、皮膚の細胞が壊死し、細胞間にタンパク質や水分、血清が漏れ出してきます。これらの成分が集まることで、皮膚の表面に水ぶくれが形成されます。

水ぶくれが大きいと、その中には多量の水分とタンパク質が含まれているため、感染のリスクが非常に高くなります。また、水ぶくれができると、皮膚がさらに脆くなり、他の刺激にも弱くなるため、後のケアが非常にデリケートになります。

やけどの水ぶくれへの応急処置

やけどの水ぶくれへの応急処置

やけどが起きた際の最初の一手として、迅速な応急処置が非常に重要です。ここでは、自分でできる応急処置について解説します。

冷水で冷やす

やけどをした直後の処置として一番効果的なのが、冷水で冷やすことです。ただし、ただ患部に冷たい水をかければ良いというわけではなく、冷水のかけ方には適切な方法があります

たとえば、手や腕にやけどをした場合、水道から直接流れる冷水にその部位を15~30分ほどさらします。顔や大きな体の部位にやけどが広がっている場合は、冷水を含ませた布で優しく冷やす方法もあります。

なお、氷水や氷は使わない方が無難なようです。あまりに温度が低い場合、皮膚細胞にさらなるダメージを与えてしまう可能性があるためです。基本的に氷を使わずに、冷水で冷やす際には、絶えず水を流して皮膚が温まらないように注意すると良いでしょう。

冷水で冷やす行為は、やけどによる炎症や痛みを和らげるだけでなく、皮膚の損傷を最小限に抑える効果があります。ただし、Ⅲ度の重度のやけどの場合は、冷水ではなく、速やかに医療機関での治療が必要なので注意してください。

アクセサリー類を外す

やけどをした際、身につけているアクセサリー類(指輪、ブレスレット、時計など)を速やかに外すのを忘れないようにしましょう。特に金属製のアクセサリーは熱を保持しやすく、皮膚の損傷をさらに悪化させる可能性があります。また、やけどした部位が腫れると、アクセサリーが皮膚に食い込むため外れなくなるリスクもあります。

水ぶくれは破かない

やけどによってできた水ぶくれは、できる限り破らないようにしましょう。水ぶくれは皮膚の下の新しい皮膚が形成される過程を保護する役割があります。水ぶくれを破ってしまうと、感染リスクが高まり、治癒にも悪影響を及ぼす可能性があります。もし水ぶくれが自然に破れてしまった場合は、清潔なガーゼで優しく押さえ、破れた部分を清潔に保つよう心掛けてください。

軽度の場合は自宅でケア

Ⅰ度やⅡ度の浅達やけどの場合、特に水ぶくれが小さく広がりが限定されている場合は、自宅でのケアも選択肢となります。自宅でケアする際は、ワセリンが有用です。ワセリンは皮膚の乾燥を防ぎ、新しい皮膚が形成される過程を助けます。やけどした部位を清潔にした後に薄くワセリンを塗り、その上から清潔なガーゼや包帯で覆ってください。

ただし、水ぶくれが大きかったり、広範囲にわたる場合、または症状が改善しない、悪化する場合は、速やかに医療機関での診察が必要です。

やけどの水ぶくれで受診する場合

やけどの水ぶくれで受診する場合

やけどで水ぶくれができ、症状や状態がひどい場合は自宅でのケアではなく医療機関での診察と治療が必要となります。ここでは、やけどで医療機関を受診する場合について解説します。

受診の目安

どんなやけどから病院に行けば良いのか、いざ自分がやけどになったときに迷ってしまうかもしれません。やけどの症状が以下のような場合は、速やかに医療機関での受診をおすすめします。

広範囲に広がっている場合

やけどが手のひらよりも大きな範囲に広がっている場合は迷わず受診しましょう。

水ぶくれが深刻な場合

水ぶくれが大きく、特に変色していたり異臭がする場合は感染のリスクが高いため、専門医の診察が必要です。

感染症の症状が出ている場合

やけど部位が赤く腫れ上がり、熱を持っている、または膿が出ている場合、感染している可能性があります。

高齢者、乳幼児、基礎疾患を持っている場合

皮膚がデリケートであり、治癒力も低い場合が多いため、軽度のやけどでも受診することをおすすめします。

病院の選び方

やけどの治療において、病院の選び方は重要です。軽いと思われるやけどでも、まずは皮膚科を受診してみましょう。一見浅いと思われるやけどが、実は深いものであり、後に痕跡や引きつれを残す可能性があります。

やけどが特定の部位に集中している場合や、広範囲にわたる場合は、総合病院での治療が必要となる可能性があります。また、Ⅱ度熱傷が体表面積の15%を超える場合や、Ⅲ度熱傷が2%を超える場合は、基本的には入院が必要です。

さらに、体表面積の30%を超える極度の状態では、命に関わる可能性も考慮して、救急科や麻酔科が整備された大病院での治療が不可欠です。

治療方法

やけどの治療方法は、やけどの種類や深さによって異なります。ここでは一般的な治療方法を紹介します。

やけどが浅い場合

浅いやけどの場合、最も一般的な治療方法は軟膏や創傷被覆材を使用することです。これらの治療法は、痛みを和らげ、皮膚の治癒を促進する効果があります。軟膏は直接やけど部分に塗布し、創傷被覆材はやけど部分を密閉して治療します。

やけど深い場合

深いやけどになると、皮膚の再生が難しくなります。このような場合、手術が必要となることがあります。最も一般的な手術方法は植皮術(皮膚移植)です。植皮術(皮膚移植)は、健康な皮膚をやけど部分に移植する手術のことです。この手術は特にⅢ度のやけどなど、皮膚のダメージが深刻な場合に行われます。

やけどの水ぶくれは放置すると危険

やけどの水ぶくれは放置すると危険

やけどの水ぶくれができた場合、放置してしまうとさまざまな危険性が高まります。

感染リスク

水ぶくれができた場合、その内部にはタンパク質や水分、血清が含まれます。これらが外部の細菌と接触すると、感染のリスクが高まります。特に注意すべきは、緑膿菌という微生物です。緑膿菌が傷口に感染すると、やけどの治療が難しくなることがあります。

感染が進行すると、痛みや腫れ、熱感が強くなるだけでなく、重症化すると敗血症の危険性も考えられます。特に、水ぶくれが破れてしまった場合、感染が広がる速度が非常に早くなり、状態が悪化する可能性が高まります。

痕が残るリスク

やけどの水ぶくれを放置すると、皮膚の自然な治癒過程が乱れ、痕が残る可能性が高まります。やけどの痕は症状が治まった後も長期間にわたって残ることが多く、見た目にも悪影響を及ぼします。特に顔や手など、目立つ部分での痕はコンプレックスになる人も多いでしょう。皮膚がきちんと治癒するためにも、やけどの初期段階で適切な治療を受けるようにしましょう。

やけどで水ぶくれを作らないための予防方法

やけどで水ぶくれを作らないための予防方法

やけどや水ぶくれは、いざという時に大変危険ですが、しっかりとした予防をすることでリスクを減らすことができます。

家庭内でやけどの予防

家庭内でのやけどの予防では、料理をする際には火元から離れた場所で油や水を使うなどの基本的な注意が大切です。衣類にコンロやろうそくなどの火が燃え移ってしまい、やけどを負ってしまう着衣着火の事故が増えています。調理で火を扱う際やお香などを焚く場合は、裾や袖が広がる衣類の着用は避けるようにしましょう。

低温やけどに気をつける

冬季や寒い時期には、暖房器具や温熱グッズが手放せませんが、これらの使用にも注意が必要です。特に、カイロや湯たんぽ、電気毛布などを使う際には低温やけどのリスクがあります。使い捨てカイロは衣服の上から貼るようにし、繰り返し使えるハンディーウォーマーは布製の袋に入れるなどして肌に直接触れないようにしましょう

まとめ

やけどやその後に起こる水ぶくれは、日常生活で避けられない事故ともいえますが、知識と予防によってリスクを減らすことができます。本記事では、やけどの基本的な知識から、症状の程度に応じた対処法、そして受診の目安や病院の選び方まで網羅しました。

日常の中で起こりうるリスクに備え、適切な知識と対処法を身につけることが、最良の予防策と言えます。この記事が、皆様の健康と安全に少しでも寄与できれば幸いです。

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