皮膚にかゆみがあると、仕事や勉強に集中できなくなったり、いろいろと不快に感じることにつながります。それが全身ともなると、我慢できない状況もあるでしょう。かきすぎて皮膚を傷つけてしまうとそこから感染し、炎症を起こしてしまって皮膚の状態が悪化することにもつながりかねません。
かゆみの原因はさまざまで、乾燥、アレルギー、虫刺され、皮膚炎などが考えられます。今回は、全身がかゆい原因やその対処法について詳しく解説します。この記事が皮膚の健康を守るヒントになれば幸いです。
皮膚のかゆみとは
かゆみの定義
かゆみは医学的には”掻痒(そうよう)感“とも呼ばれ、皮膚の表面またはその下の組織に刺激があったときに感じる感覚です。かゆみはさまざまな原因によって引き起こされますが、「引っかきたくなるような不快な感覚」として定義されています。
皮膚のかゆみのメカニズム
皮膚のかゆみは、神経と免疫系の相互作用によって引き起こされます。刺激が皮膚に加わると、特定の神経受容体が刺激を感知し、信号を脳に送信します。これにより、脳はかゆみを感じることになります。
また、かゆみは免疫系の反応にも関与しており、アレルギーや炎症などの免疫反応によって引き起こされることがあります。このように、神経系と免疫系の相互作用が皮膚のかゆみを引き起こすメカニズムとなっています。
皮膚の状態とアレルギーが原因で全身がかゆい場合
皮膚のかゆみは、その原因や症状によってさまざまな要因が考えられます。ここでは、乾燥肌や湿疹、さらにはアレルギー反応によって全身がかゆくなる原因と対処法について解説します。
- 乾燥肌や湿疹によるかゆみ
- アレルギー反応によるかゆみ
乾燥肌や湿疹によるかゆみ
乾燥肌や湿疹によるかゆみは、皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激からの保護が不十分な状態のために起こります。乾燥した環境や過剰な洗浄、刺激物によって皮膚の水分が奪われると、皮膚は乾燥しやすくなります。
この乾燥した状態が持続すると、かゆみや湿疹が発生し、皮膚が荒れてしまうことがあります。乾燥肌や湿疹に対する対処法としては、適切な保湿ケアや洗いすぎに注意することなどが挙げられます。
アレルギー反応によるかゆみ
アレルギー反応によるかゆみは、免疫系が異物を認識し、過剰な反応を示すことによって起こります。身体がアレルギー反応を示す主な原因としては、食物、花粉、動物の毛、ダニ、薬品などが挙げられます。
これらのアレルゲンに触れることで、身体は過剰な免疫反応を引き起こし、かゆみや発疹などの症状を現します。アレルギー反応によるかゆみを和らげるためには、抗アレルギー剤の内服が必要です。
健康状態の変化が原因で全身がかゆい場合
続いて、健康状態の変化によって全身がかゆい場合の原因と対処法について解説します。
- 内臓疾患やホルモンバランスの影響によるかゆみ
- 病気やストレスによるかゆみ
内臓疾患やホルモンバランスの影響によるかゆみ
内臓疾患やホルモンバランスの変化が全身のかゆみを引き起こすことがあります。例えば、肝臓や腎臓の疾患では、体内の毒素が排出されずに蓄積されることがあり、これが皮膚のかゆみを引き起こす原因となります。
また、ホルモンバランスの乱れもかゆみの要因となり得ます。女性の場合、妊娠や更年期などのホルモンの変化によってかゆみが発生することがあります。これらの健康問題に対処するためには、医師の指示に従い、適切な治療と管理が必要となります。
病気やストレスによるかゆみ
病気やストレスが原因で全身がかゆくなることがあります。自己免疫疾患やがんなどの病気は免疫系の異常な反応を引き起こし、かゆみをともなう皮膚症状を引き起こすことがあります。また、ストレスは神経系やホルモン系に影響を与え、かゆみの感覚を増幅させることがあります。
外部環境の変化が原因で全身がかゆい場合
続いて、外部環境の変化によって全身がかゆい場合の原因について解説します。
- 外部刺激や化学物質の影響によるかゆみ
- 気候や季節要因によるかゆみ
外部刺激や化学物質の影響によるかゆみ
外部刺激や化学物質の影響によっても、全身がかゆくなることがあります。外部刺激や化学物質は、皮膚に直接作用してかゆみを引き起こします。たとえば、虫の毒、洗剤や洗顔料、柔軟剤などの化学物質が皮膚に残留し、刺激を与えることでかゆみが生じることがあります。
また、衣類や寝具の素材によってもかゆみが引き起こされることがあります。皮膚がこれらの刺激に過敏に反応する場合、かゆみを和らげるためには、刺激物を避けるか、肌にやさしい製品を使用しましょう。
気候や季節要因によるかゆみ
気候や季節の変化も、全身のかゆみの原因となることがあります。特に乾燥した冬季や乾燥した気候下でのかゆみに悩む人は多いでしょう。乾燥した空気が皮膚の水分を奪い、乾燥肌を引き起こすことでかゆみが生じます。
また、花粉やカビなどのアレルゲンが多い春季や秋季には、アレルギー性のかゆみが増加する傾向があります。これらの季節要因がある中でかゆみを和らげるためには、保湿ケアを行うことや、抗アレルギー剤の助けが必要です。
全身のかゆみを和らげる方法
続いて、全身のかゆみを和らげる方法3つ紹介します。
- かかずに冷やす
- 適切な洗浄と保湿ケアを行う
- 薬やサプリメントを処方してもらう
かかずに冷やす
かゆみを感じると自然とその部分をかいてしまい、かくことでさらに皮膚の炎症が悪化して、結果的にかゆみが増してしまうという悪循環に陥ってしまうことがあります。そのため、かくこと以外のかゆみを和らげる方法を知っておくことは大切です。
冷たさはかゆみの感覚を鈍らせるので、かゆみを和らげるためにはかかずに冷やすことが有効です。水を含ませて固く絞ったハンカチや冷たいおしぼり、氷を入れたビニール袋や保冷剤をタオルでくるみ、かゆみのある部分に当てるとかゆみが軽減します。ただし、冷やしすぎは皮膚にダメージを与える可能性があるので注意しましょう。
適切な洗浄と保湿ケアを行う
適切な洗浄と保湿ケアも重要です。過度な洗浄や強い洗剤の使用は皮膚の乾燥を促進し、かゆみを悪化させる可能性があります。そこで、肌にやさしい洗浄剤を使用し、肌を傷つけないように優しく洗い流しましょう。また、洗浄後には保湿剤を使用することで、皮膚の水分を保持し、乾燥を防いでください。肌をしっかりと保湿することで、かゆみを軽減することができます。
薬やサプリメントを処方してもらう
かゆみがなかなか治らない場合や症状が重度の場合は、医師に相談して薬やサプリメントを処方してもらいましょう。抗ヒスタミン薬はアレルギー反応によるかゆみを和らげるのに効果的で、ステロイド軟膏は炎症を抑えてかゆみを軽減するのに役立ちます。
また、ビタミンDやオメガ3脂肪酸などのサプリメントは皮膚の健康をサポートし、かゆみを和らげるのに役立ちます。医師の指示にしたがって適切な薬やサプリメントを使用しましょう。
全身がかゆい場合に皮膚科を受診すべき症状と疾患
全身がかゆいという症状は、時には単なる一時的なものかもしれませんが、特定の状況や疾患によっては深刻な問題のサインであることがあります。ここでは、全身がかゆい場合に皮膚科を受診すべき症状と疾患について解説します。
- 我慢ができないほどかゆい
- かゆみの範囲が手のひらよりも大きい
- 原因がわからずにかゆみが続く
我慢ができないほどかゆい
かゆみが我慢できないほど強い場合は注意が必要です。かゆみが激しく、掻破による傷跡や出血などの皮膚の損傷をともなう場合は、慢性的なかゆみや皮膚疾患の兆候の可能性があるので、皮膚科を受診しましょう。
かゆみの範囲が手のひらよりも大きい
通常、かゆみは特定の部位に限定されることが多いため、全身がかゆいと感じる場合は体からの異常のサインかもしれません。かゆみの範囲が手のひらよりも大きい場合は、全身性の皮膚疾患やアレルギー反応の兆候の可能性がありますので、全身のかゆみの原因を特定するために皮膚科の専門の医師に相談してください。
原因がわからずにかゆみが続く
もし何らかの外部刺激やアレルギー、皮膚の乾燥などの明らかな原因がないにもかかわらずかゆみが続く場合は、皮膚科の受診を検討しましょう。原因不明のかゆみはさまざまな疾患の兆候である可能性があり、早期の診断と適切な治療が必要です。
また、かゆみが継続することでストレスや不快感が増す可能性がありますので、できる限り早めの受診が重要です。
まとめ
全身がかゆい原因やかゆみの和らげる方法について解説しました。
かゆみの原因はさまざまで、皮膚の状態やアレルギー、健康状態の変化、外部環境の変化が関与します。かゆみを和らげる方法としては、かかずに冷やすことや適切な洗浄と保湿ケアを行うこと、薬やサプリメントを処方してもらうことが挙げられます。
また、全身がかゆい場合には、我慢できないほどのかゆみや広範囲のかゆみ、原因がわからず続くかゆみなどの症状が見られる場合は、皮膚科を受診することが重要です。早期の診断と適切な治療がかゆみの緩和につながりますし、かゆみは身体や心に影響を与えることがありますので、冷静かつ適切な対処をしましょう。
参考文献