宇井 千穂 医師
北里大学医学部卒業、公立福生病院で初期研修終了、平成24年土佐清水病院皮膚科にて勤務。皮膚科医として勤務しながら、銀座の美容皮膚科クリニックでも勤務。現在、やさしい美容皮膚科・皮フ科 院長。
日本美容皮膚科学会、日本レーザー学会、日本胎盤臨床医学会、アラガンボトックスビスタ注入認定資格、アラガンジュビダーム注入認定資格、JAPAN MENSA会員、Iuternational MENSA会員
おでこのニキビは一度できてしまうと目立つため、気になる方も多いことでしょう。おでこのニキビは不摂生やストレスが原因というのはよく聞く話ですが、原因はそれだけでなくさまざまです。
今回は、おでこにニキビができやすい原因や、おでこにニキビができた際にやってはならないことなどについて解説します。
ニキビの基本的な概要
おでこのニキビについて解説する前に、ニキビの基礎知識をおさらいしましょう。ここでは、一般的なニキビについておさえつつ、思春期ニキビと大人ニキビの違い、ニキビの種類について解説します。
ニキビとは
ニキビは皮膚の表面に現れる症状の一つであり、多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか?一般的には、皮膚の表面に見られる赤い発疹、黒い点、白い膿などとして認識されがちですが、これらは皮膚の深層部で生じている状態の一端が見えているに過ぎません。
ニキビは、皮膚の健康状態が何らかの形で不均衡になった際に発生することが一般的です。この不均衡は一時的なものである場合もありますし、長期にわたる場合もあります。
特に顔に発生するニキビは目立つため、多くの人がコンプレックスに感じ、早期の治療を望むことが多いでしょう。ニキビが発生する原因はさまざまなので、その対策や治療法も多岐にわたります。
ニキビの原因
ニキビの発生には多くの要因がありますが、代表的な3つの原因について解説します。
- 毛穴の詰まり
- 皮脂の過剰な分泌
- アクネ菌の増殖
毛穴の詰まり
毛穴の詰まりはニキビの発生において基本的な原因の一つです。皮膚には多くの毛穴が存在し、これらが正常に機能していると皮膚は健康を保ちます。しかし、毛穴が何らかの理由で詰まると、皮膚の自然な呼吸が妨げられ、炎症やニキビが発生する可能性が高まります。毛穴が詰まる主な要因は、皮膚の表面に存在する古い角質や汗、外部からの汚れです。これらが毛穴に詰まると、皮膚内での細菌の増殖が促され、炎症を引き起こす可能性があります。
皮脂の過剰な分泌
皮脂の過剰な分泌も、ニキビが発生する大きな要因の一つです。皮脂腺から分泌される皮脂は、本来は肌を保護して乾燥から守る役割を果たしています。しかし、その量が多すぎると毛穴が詰まりやすくなります。皮脂の過剰な分泌は、特に思春期やストレスがかかる状況で顕著になります。これには性ホルモンの活性化が関与しています。
アクネ菌の増殖
アクネ菌の増殖もニキビの主要な原因の一つです。このアクネ菌は、実は私たちの肌に常に存在しています。毛穴が詰まり、皮脂が過剰に分泌される環境は、アクネ菌にとって絶好の増殖地となります。このようにして増加したアクネ菌が、炎症を引き起こし、その結果として赤いニキビが形成されるのです。
思春期ニキビと大人ニキビの違い
ニキビができる原因は、年齢によって異なるといわれています。ここでは、思春期にできるニキビと大人になってからできるニキビの原因の違いについて解説します。
思春期ニキビ
大人になる過程である思春期は、性ホルモンや成長ホルモンが活発に分泌される傾向にあります。その結果、皮脂が過剰に分泌され、毛穴が詰まってしまうことが原因でニキビができやすくなります。また、思春期は感情の起伏が大きく、ストレスの影響を受けやすい時期です。ストレスはホルモンバランスを乱し、ニキビの発生を促進することがあります。
大人ニキビ
大人ニキビは、思春期ニキビよりも原因の可能性が多岐にわたります。不適切な方法での化粧やスキンケア、整髪料の洗い残しといった外的要因から、仕事や人間関係のストレスが原因でホルモンバランスを崩してしまうなどの内的要因が挙げられます。このように大人ニキビの原因は見極めが難しいため、根気強く向き合っていく必要があります。
おでこにニキビができやすい原因
一般的に、ニキビは毛穴のつまりや皮脂の過剰分泌が原因となります。ここでは、おでこにニキビができる主な原因について詳しく解説します。
- 食生活の乱れ
- 髪型や整髪料による刺激
- シャンプーやコンディショナーのすすぎ残し
- ストレスなどによるホルモンバランスの乱れ
- 間違った方法によるスキンケア
- 喫煙習慣
食生活の乱れ
食生活の乱れは、おでこにニキビができやすい原因の一つと考えられています。特に、糖質と脂質の過剰摂取は過剰な皮脂分泌を促し、毛穴詰まりの原因となります。また、ビタミン・ミネラル不足も皮膚の健康が損なわれる原因の一つで、皮膚の再生に関与している成分のため、不足するとニキビの治療が遅れる可能性があります。食生活がジャンクフードやお菓子などに偏らないよう、バランスの良い食生活を心がけましょう。
髪型や整髪料による刺激
前髪がおでこに長時間接触するヘアスタイルは、皮膚に摩擦刺激が伝わりやすく、ニキビの発生や悪化の原因となります。また、一部の整髪料には皮膚に刺激を与える成分が含まれています。これらの成分が毛穴を刺激し、過剰な皮脂分泌や炎症を引き起こしたり、アクネ菌の増殖を促進する可能性があります。
シャンプーやコンディショナーのすすぎ残し
シャンプーやコンディショナーには、洗浄剤や保湿剤、香料、染料などが含まれています。これらの成分が十分にすすぎ落とされないと、毛穴や皮膚表面に残って毛穴を詰まらせ、ニキビの原因となります。
ストレスなどによるホルモンバランスの乱れ
おでこのニキビも他の部位にできるニキビと同様に、ストレスなどによるホルモンバランスの乱れが原因となることが多いようです。ストレスが高まると、体内でコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。このホルモンが皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促進することがあります。その結果、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビが発生しやすくなるのです。また、ホルモンバランスが乱れて男性ホルモンが優位になると、皮脂腺が刺激されます。女性の場合、月経周期によってもホルモンバランスが変わるため、その時期にニキビができやすくなることもあります。
間違った方法によるスキンケア
過度な洗顔は皮脂を取りすぎ、肌のバリア機能を損なって肌を乾燥させる可能性があります。これにより、肌は乾燥からくる刺激に対抗しようと油分を分泌しやすくなり、ニキビの原因となります。また、洗顔後はすぐに保湿することが大切です。適切な保湿が行われていない場合、肌は水分を保つために皮脂の過剰な分泌を促進しようとするため、ニキビを引き起こす可能性があります。
喫煙習慣
喫煙は血管を収縮させ、血液の流れを悪化させる可能性があります。健康的な血行は、肌細胞への栄養供給と老廃物の排出に重要です。血行不良が起こると、皮膚の健康が損なわれてニキビが発生しやすくなります。
おでこにニキビができた際にやってはならないこと
いくらニキビに気をつけていても、ニキビはできることがあります。もし、ニキビができてしまったら、次の注意事項を守ってケアをしてください。
- ニキビを触ったり潰す
- 過度に洗顔する
- 熱湯で洗顔する
- 油分の多いクリームを使ってケアする
ニキビを触ったり潰す
多くの人が手でニキビを触ったりつぶしたりしますが、これはニキビにとってもお肌にとっても良くありません。手には見えない細菌が数多く存在しており、それがニキビに接触することで炎症を引き起こしたり、クレーターのような跡が残るリスクが増加したりします。
過度に洗顔する
ニキビが肌に現れると、清潔に保ちたいという欲求から、何度も顔を洗いたくなりますが、これも避けましょう。度を超えたクレンジングや洗顔は皮膚の表面を過度に刺激し、その結果として皮脂の過剰な分泌を促進してしまいます。
熱湯で洗顔する
熱すぎるお湯は肌を乾燥させ、それにより皮膚に不要な刺激を与える可能性があります。また、極端に冷たいお湯も肌を収縮させるため、避けるようにしましょう。洗顔の際は、肌に優しいぬるま湯を用いることが理想的です。
油分の多いクリームを使ってケアする
ニキビが気になると、その上から油分の多いクリームや化粧品を使用して皮膚を保護したくなりますが、これもニキビの原因となる毛穴を詰まらせるリスクを高めます。そのため、使用するスキンケア商品は、軽めのテクスチャーのものや、ニキビケアを目的とした製品を選ぶことが望ましいです。
おでこのニキビの治療方法
では、おでこにニキビができた際はどのように治療すれば良いでしょうか?最後に、おでこのニキビの治療方法を3つ紹介します。
- ケミカルピーリング
- イオン導入
- 外用薬・内服薬
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、専門的な薬剤を用いて古い角質層を取り除く施術です。これにより、肌のターンオーバーを促進し、新しい肌細胞の成長を助けます。ニキビだけでなく、ニキビの後の赤みや色素沈着、さらには細かなシワや毛穴の開きも改善することが期待されています。
イオン導入療法
イオン導入療法は、微弱な電流を利用して美容成分や治療薬を皮膚の深部へと浸透させるテクニックです。この方法により、通常の塗布では届かない肌の深い層まで有効成分を届けることができ、ニキビの原因となる細菌や余分な皮脂の除去が期待されます。
外用薬・内服薬
皮膚科や美容クリニックでは、患者の肌の状態やニキビの深さ、種類に応じて、最も適切な治療を選択して行います。こうした治療の中で、外用薬や内服薬の処方は非常に一般的です。外用薬は、直接肌に塗布することで、ニキビの炎症を抑えたり、皮脂の過剰分泌を抑制する効果があります。
また、抗菌成分を含む製品も多く、ニキビの主要な原因となる細菌の増殖を抑える助けとなります。使用する際は、指示通りの量を適切に塗布し、長時間放置せずに定期的に洗い流すことが大切です。一方、内服薬は、体内からニキビの原因を取り除くことを目的としています。
特にホルモンのバランスを整えるための薬や、細菌の増殖を抑制する抗生物質などが処方されることが多いです。内服薬は、体内全体の状態を改善し、長期的なニキビの予防や治療に役立ちます。しかし、いずれの薬も正しい使用方法や継続的な治療が必要です。短期間での効果を求めるのではなく、長期的な視点でのケアと専門家の指示に従った適切な使用がニキビ治療を成功へと導く鍵となります。
まとめ
おでこは前髪の刺激やシャンプーや整髪料の刺激など外部からの刺激を受けやすい分、特にニキビができやすい場所です。そのため他の部位以上に、日々のケアが必要となってきます。