倉田 照久 医師
2019~2021年 都立広尾病院病院 初期研修、2021年 東邦大学医療センター大橋病院 入職、2022年 東京オンラインクリニック 開業、2023年 渋谷文化村通り皮膚科 開業
鼻のニキビでお悩みでしょうか?鼻は皮脂の分泌量が多く毛穴に詰まりやすいため、ニキビができやすい部分です。鼻のニキビは顔の中心で目立つうえ、赤く腫れたり痛みを伴ったりすることが多く、悩まれる人は少なくないでしょう。
悪化させないためにも、鼻のニキビはまずはしっかり予防することが大切です。また、ニキビができてしまったら必要に応じて皮膚科を受診し治療してもらうことで再発防止になります。
今回は、鼻にニキビができる原因や治し方、予防法について解説します。
鼻にニキビができる主な原因
ニキビは、 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)という皮膚疾患です。大人のニキビは口元や顎の周辺(Uゾーン)にできやすいのに対し、思春期のニキビは鼻・額など皮脂の分泌がさかんな部位(Tゾーン)に多く見られます。
思春期のホルモン分泌の増加や、女性では月経前のホルモンバランスの乱れ、ストレス、睡眠不足、食生活などの影響により、皮脂の分泌は増加しニキビができやすくなります。
ここでは、鼻にニキビができる主な原因について解説します。
- 皮脂腺が多く皮脂が詰まりやすいから
- 鼻を触ることで雑菌が付きやすいから
- マスクによって蒸れるから
皮脂腺が多く皮脂が詰まりやすいから
鼻は皮脂腺が多いため皮脂が詰まりやすく、ニキビになりやすい場所です。では、どのようにしてニキビができるのでしょうか?ニキビのできる過程は次のとおりです。
- 皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まる
- アクネ菌が繁殖して炎症を起こす
皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まる
毛根を包み込んでいる袋状の組織を毛のうといいます。正常な皮膚では、皮脂は毛穴から皮膚表面に出ていき、皮膚を保湿・バリアする役割を担っています。角質層が正常に働いていると、余分な皮脂が毛のうにたまることはありません。
しかし、毛穴の近くで角化異常が起こると、厚くなった角質層が毛穴を塞ぎ、皮脂が毛のうに詰まります。皮脂が毛のうに詰まった状態を面皰(めんぽう)、またはコメドと呼びます。
皮脂の分泌が活発になって毛のうにたまり、毛のうが皮膚の表面に盛り上がった状態が白ニキビです。皮脂が空気に触れて酸化し、黒っぽく見えているニキビは黒ニキビと呼ばれます。
アクネ菌が繁殖して炎症を起こす
詰まった皮脂を栄養分とし、ニキビの原因菌である アクネ菌が増えやすい環境となります。
アクネ菌は、 正常な皮膚にも存在する常在菌です。通常は繁殖して炎症を起こすことはありませんが、アクネ菌が白ニキビの中で増殖してくると強い炎症が生じて赤ニキビと呼ばれる状態になります。見た目に膿がたまったような感じになるものもあります。
多くの場合、白ニキビや赤ニキビは混在してみられます。
鼻を触ることで雑菌が付きやすいから
鼻にできるニキビは目立ちやすく気になるため、鼻を触ることが増えます。鼻を指で触れた際に付着する雑菌により悪化することもあります。
マスクによって蒸れるから
マスクも原因の一つです。マスクによる皮膚への刺激やマスク内の湿気の多い環境が、ニキビが繰り返す原因になることがあります。
ニキビの種類
ニキビの種類は、ニキビの症状の進行状況により分類されています。ニキビの主な種類は炎症のないニキビと炎症のあるニキビの2つです。
炎症のないニキビの種類は次のとおりです。
- 微小面皰(マイクロコメド)
- 白ニキビ(閉鎖面皰)
- 黒ニキビ(開放面皰)
また、炎症のあるニキビには次の種類があります。
- 赤ニキビ(紅色丘疹)
- 黄ニキビ(膿疱)
ここでは、それぞれのニキビがどのような状態なのか解説します。
微小面皰(マイクロコメド)
微小面皰(マイクロコメド)は目に見えない段階で、皮脂が詰まり始めている状態です。
面皰(コメド)
面皰(コメド)は毛穴が詰まっている状態で、進行状態によって白ニキビと黒ニキビに分かれます。毛穴が詰まっているため、触ると肌がザラザラしていることが特徴です。
白ニキビ(閉鎖面皰)
白ニキビ(閉鎖面皰)は、毛穴が角栓により閉じて皮脂が詰まった状態です。表面に白いポツポツとした膨らみができ、皮膚の内側では毛のうが広がりアクネ菌が増え始めます。
黒ニキビ(開放面皰)
黒ニキビ(開放面皰)は白ニキビの毛穴が開き、皮膚の内側のメラニンや、詰まった皮脂や老廃物が酸化することにより黒く見える状態です。
赤ニキビ(紅色丘疹)
赤ニキビ(紅色丘疹)は白ニキビが悪化して、炎症が起きた状態です。毛のう内でアクネ菌が増殖していて、毛穴の中央に白い芯が見えるようになります。
黄ニキビ(膿疱)
黄ニキビは赤ニキビからさらに悪化し、炎症が激しくなった状態です。ニキビに黄色い膿が見えます。ニキビがつぶれると毛のう内の炎症を起こす物質が皮膚上に広がり、ニキビの炎症も広がっていきます。重症化するとニキビ跡ができることもあるので早めの治療が必要です。
鼻のニキビの予防法
ニキビを予防するためには、日頃の生活習慣の見直しが大切です。炎症がひどくなり治りにくくなる前に、しっかりとスキンケアやライフスタイルについても見直していくことを心がけてください。
ここでは、鼻のニキビの予防法について解説します。
- ストレスを溜めない
- 睡眠・食事などの生活習慣を整える
- 1日2回の洗顔を正しく行う
- ニキビ肌用のスキンケア用品を使用する
ストレスを溜めない
ストレスを溜め込むとホルモンバランスが崩れ、男性ホルモンの働きが優位になります。これが皮脂の分泌量の増加やニキビのできやすい状態へとつながります。
ストレスはニキビだけでなく身体にさまざまな影響を及ぼすため、日頃から趣味や運動などストレスを発散する方法を見つけておくことも必要です。
睡眠・食事などの生活習慣を整える
睡眠不足は、免疫力が低下し新陳代謝が遅れてしまい皮膚のターンオーバーの乱れにつながります。ターンオーバーが乱れると古い角質がたまりやすくなって毛穴が詰まり、ニキビの原因となります。
ニキビ予防に必要なのは、代謝を促し皮膚の状態を整えるビタミンやミネラルを摂取することです。皮膚の状態を整える栄養素を含む食品は以下のとおりです。日々の食事に取り入れてバランスの良い食事を心がけましょう。
- ビタミンC:柑橘類・パプリカ・ブロッコリー・キウイフルーツ・イチゴなど
- ビタミンB2:納豆・アボカド・たまごなど
- ビタミンB6:肉・魚・ジャガイモ・玄米など
1日2回の洗顔を正しく行う
洗顔は1日2回、刺激の少ないせっけんや洗顔料をよく泡立て、ゴシゴシとこすらないようにやさしく洗いましょう。ぬるま湯で洗い流し、清潔なタオルで肌をやさしく抑えるように水分を取ります。
水分を取ったらすぐに化粧水などで保湿します。しっかりと保湿することが、角質層をやわらかくし毛穴を詰まりにくくすることにつながります。
ニキビの原因に過剰な皮脂の分泌がありますが、そのために1日に何度も洗顔をするのは逆効果です。過剰な洗顔は皮膚の潤いを保つための皮脂まで落とし、皮膚を乾燥させ、過剰な皮脂の分泌を促してしまうことがあります。
メイクをしている場合は、最初にクレンジングを使用してメイクをしっかり落としてから洗顔しましょう。女性の鼻ニキビの原因の一つとして、メイクを落としきれていないことが考えられます。
鼻はほかの部位に比べ毛穴が大きいため、十分にメイクが落とせていない場合、メイク成分の粒子が毛穴に詰まりニキビの原因となることがあります。自分の肌に合うメイク落としや洗顔料、メイクアイテムの選び方も予防のポイントです。
ニキビ肌用のスキンケア用品を使用する
ノンコメドジェニックテスト済みと記載されたスキンケア用品は、ニキビができにくく処方されている化粧品のことをいいます。しかし、ノンコメドジェニックのスキンケア用品を使用して、すべての人にニキビができないわけではありません。
皮膚のターンオーバーは約28日といわれているため、1ヶ月使用して様子をみるとよいでしょう。皮膚科でも販売されていることがあるため、気になる方は相談してみてください。
鼻にできたニキビの治し方
鼻にできたニキビは、初期の段階であれば日頃の生活習慣を見直すことにより改善することもあります。しかしスキンケアやライフスタイルに気を付けていてもニキビを繰り返したり悪化したりする場合は、皮膚科で治療することが大切です。
最後に、鼻にできたニキビの治し方について解説します。
- 外用薬
- 内服薬
- 面ぽう圧出療法
外用薬
ニキビ治療に使用する外用薬には次のものがあります。
- アダパレン
- 過酸化ベンゾイル
- 抗菌薬
アダパレン
アダパレン(ディフェリンゲル)は、皮膚の角化を調節し、毛穴の詰まりを改善します。くり返すニキビの原因となる毛穴の詰まりを取り除くことによって、白ニキビや赤ニキビへ効果を示します。
使いはじめに皮膚の赤みや刺激感、皮むけ、乾燥などの副作用が現れることが多い薬剤です。副作用は使用量の調整と保湿により徐々に軽減します。塗布する際には、目に見えない毛穴の詰まりを意識して、ニキビの周りにも塗るようにします。
アダパレンの使用中に日光にあたりすぎると皮膚刺激感が増すおそれがあるため、外出時には日傘や帽子、日焼け止めを使用することが推奨されます。妊婦の方や妊娠している可能性のある女性は使用できません。
過酸化ベンゾイル
過酸化ベンゾイル(ベピオゲル・ベピオローション)は、アクネ菌を殺菌することで効果を発揮します。角質を剥がす作用(ピーリング作用)があり、ニキビの毛穴の詰まりも改善します。アダパレン同様、刺激感の副作用があるため、少量で開始して保湿も十分に行うことが重要です。
抗菌薬
炎症性ニキビには、クリンダマイシン・ナジフロキサシン・オゼノキサシンなどの外用抗菌薬が使用されることがあります。
他にも、これらを組み合わせた合剤を使用することもあります。
内服薬
症状により、次の内服薬を使用することもあります。
- 抗菌薬
- 漢方薬
- ビタミン剤
抗菌薬
炎症性ニキビには、ドキシサイクリン・ミノマイシンの内服抗菌薬が使用されます。
ドキシサイクリンなどテトラサイクリン系の抗菌薬は、アクネ菌に対しては耐性を作りにくい 性質があるとされています。マクロライド系抗菌薬耐性のアクネ菌が増えているため、抗菌薬の選択にも注意が必要です。
漢方薬
荊芥連翹湯や十味敗毒湯、清上防風湯などが使用されます。
ビタミン剤
ビタミン剤として、ビタミンC、ビタミンBなどが処方されることがあります。
面ぽう圧出療法
面ぽう圧出療法は、ニキビのなかに詰まっている皮脂や膿、角質などを押し出す治療法です。炎症が起こる前に行うと炎症を防ぐことができます。皮膚科専用の器具を使用し、ニキビの表面に小さな穴を開けて皮脂などを押し出します。
この方法では、皮膚にダメージを与えにくくニキビ跡が残りにくくなります。一方、自分でニキビをつぶしてしまうと、雑菌が入り必要以上に皮膚にダメージを与え悪化させてしまうことがあります。ニキビ跡を残さないためには、皮膚科を受診して相談し、治療することが大切です。
まとめ
鼻にニキビができる原因や治し方、予防法について解説しました。
思春期のホルモン分泌の増加や月経前のホルモンバランスの乱れ、ストレス、睡眠不足、食生活などの影響により、皮脂分泌は増加しニキビができやすくなります。
ニキビは初期の段階であればスキンケアやライフスタイルに気を付けることで改善することもありますが、悪化する場合はニキビ跡を残さないためにも皮膚科で治療することが大切です。
アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの外用薬が発売されてから、ニキビの治療は選択肢が増えました。鼻のニキビがストレスにならないように、早めに皮膚科を受診し治療をスタートさせることが重要です。
参考文献