佐藤 玲史 医師
東京都生まれ、国立 東京医科歯科大学 医学部医学科卒、大手美容外科にて千葉・新宿・上野の各院で院長・顧問を歴任、有名美容外科の銀座にて院長就任、2020年4月銀座にてOriginal Beauty Clinic GINZAを開院
日本美容外科学会認定専門医(JSAS) 、高濃度ビタミンC療法認定医、BOTOX VISTA認定医、日本化粧品検定一級、日本美容外科学会会員(JSAS)、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員、国際抗老化再生医療学会会員、日本再生医療学会
ニキビは、顔だけではなく頭皮にもできます。
顔のニキビと頭皮のニキビのどちらが発症しやすいかは、個人の肌質や生活習慣、ホルモンバランスに大きく依存します。
顔のニキビはよく見られる症状のため多くの方が経験しますが、頭皮のニキビについてはあまり知られていないかもしれません。顔ニキビと頭皮ニキビはどちらも適切なスキンケアと清潔を保つことが予防につながるため、対処法を知ることが大切です。
今回は、頭皮ニキビの原因やできやすい人、治療法や予防法を中心に頭皮ニキビについて解説します。
頭皮ニキビとは
ニキビは、専門用語ではざ瘡(ざそう)と呼ばれています。顔以外にも頭皮や背中など、全身にできる皮膚疾患です。
頭皮ニキビは自分の目で見つけにくく、知らないうちに引っ搔いて悪化させている場合もあります。痛みや痒みの原因になるだけでなく脱毛を引き起こすこともあるため、長引く前に正しく対処することが大切です。
頭皮ニキビができる原因や対処法を知り、頭皮ニキビができないよう気をつけましょう。
頭にニキビができる主な原因
頭にニキビができる原因はさまざまです。
ここでは、頭にニキビができる主な原因について解説します。
- 皮脂の過剰分泌
- ターンオーバーの乱れ
- 栄養バランスの乱れ
- 睡眠不足・睡眠の質が悪い
- ストレス
- 頭の洗い方の問題
皮脂の過剰分泌
頭にニキビができる主な原因の一つとして、皮脂の過剰分泌があります。皮脂の過剰分泌は、ホルモンバランスの変化やストレス、不適切なヘアケア製品の使用により引き起こされることがあります。
予防法には、自分の皮膚の状態に合う適切なシャンプーの選択、定期的な洗髪、バランスの取れた食生活が挙げられます。
ターンオーバーの乱れ
頭にニキビができる原因の一つに、ターンオーバーの乱れがあります。
ターンオーバーとは肌の細胞が一定の周期で新しく生まれ変わることで、このプロセスが乱れると古い皮脂や角質が毛穴に詰まりやすくなり、ニキビの原因となります。
ターンオーバーの乱れは、不規則な生活習慣、ストレス、不健康な食生活、睡眠不足などによって引き起こされることが多いようです。学校生活や仕事や育児などで忙しく、バランスの取れた食事や十分な睡眠をとることが難しいと、ターンオーバーが乱れてニキビ発生のリスクを高めることになります。
予防法としては、まず生活習慣の見直しを行うことです。規則正しい生活とバランスのよい食事、十分な水分補給、ストレス管理、適切な睡眠を心がけることが基本です。これらの日常生活の中での小さな心がけが、頭皮のニキビ予防につながります。
すでにニキビができてしまった場合や自己管理では改善が難しい場合は、皮膚科医に相談してみましょう。
栄養バランスの乱れ
適切な栄養が不足すると、皮膚の健康を維持するために必要なビタミンやミネラルが不足し、肌のターンオーバーや皮脂の分泌バランスに影響を与えることがあります。これにより、皮脂の過剰な分泌や毛穴の詰まりが生じ、結果としてニキビが発生しやすくなります。
予防法は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛など、肌の健康を支える栄養素を豊富に含む食品を積極的に食事に取り入れることです。また、過度の糖質や脂質の摂取は控えめにし、野菜や果物、全粒穀物、良質なたんぱく質をバランスよく摂取しましょう。
さらに、水分摂取を意識して体内の水分バランスを保つことも肌の健康には不可欠です。
日々十分な水分を摂ることで体内の老廃物の排出を促し、肌のターンオーバーを正常に保つ手助けになります。
これらを習慣化することで栄養バランスを整えて、頭皮にニキビができるリスクを減らしましょう。
睡眠不足・睡眠の質が悪い
先ほどお伝えしたように、睡眠不足や睡眠の質が悪いことは、頭にニキビができる原因の一つとなります。
質の良い睡眠は体のさまざまな機能を正常に保つために必要で、肌の健康においても重要な役割を果たします。
睡眠中には肌の細胞が修復され、再生されるため、不十分な睡眠はこのプロセスを妨げ、結果として皮脂の過剰分泌や炎症を引き起こす可能性があります。これにより、頭皮のニキビが発生しやすくなります。
寝室を暗く静かにすること、適度に涼しい状態になるよう調整すること、毎日同じ時間に寝て体内時計を整えることを心がけ、質の高い睡眠を目指しましょう。
また、就寝前にはカフェインの摂取を避けることも大切です。
深呼吸、瞑想などのリラクゼーション技法を試してみるのもよいでしょう。
これらの対策で睡眠の質を向上させ、頭皮のニキビを予防しましょう。
ストレス
ストレスが高まると、皮脂の過剰生産を促すコルチゾールというホルモンの分泌が増えます。
コルチゾールによって過剰生産された皮脂が毛穴を塞ぎ、ニキビの原因になり得ます。
また、ストレスは免疫機能にも影響を与えて皮膚の回復力を低下させるため、ニキビが治りにくくなる可能性があります。
ストレスによる頭皮ニキビを予防するには、適度な運動や趣味への時間を確保するなど、自分に合った方法でストレスを管理することが大切です。
頭の洗い方の問題
適切な方法で洗髪できていないと、頭皮の皮脂や汚れが過剰に蓄積されて毛穴を詰まらせることがあります。
蓄積された皮脂や汚れがバクテリアの増殖を促し、結果的に頭皮ニキビの原因となり得ます。
頭皮ニキビを予防するには、頭皮に合ったシャンプーを選ぶことが大切です。
洗浄力の強いシャンプーは刺激が強すぎる可能性があるため、使用するにあたって注意が必要です。
また過剰な洗髪は頭皮を乾燥させてしまうため、洗髪の回数は1日1回程度にして、爪を立てないように洗います。
リンスやコンディショナーは髪の毛にのみ使用し、頭皮には直接つけないようにすることも大切なポイントです。
薬剤が頭皮に残るとニキビの原因となることがあるため、薬剤が残らないようにしっかりと洗い流します。
これらのポイントを守ることで頭皮の健康を保ち、ニキビを予防しましょう。
頭にニキビができやすい人
頭にニキビができやすい人には、次のような生活習慣があることが多いようです。
当てはまるものがないかチェックしてみてください。
- 頭皮を蒸れたまま放置しがち
- ニキビを潰してしまう
- 誤ったシャンプーの習慣がある
頭皮を蒸れたまま放置しがち
頭皮の蒸れは、毛穴が詰まりやすくなってニキビの原因になることがあります。
そのため、帽子を被ることが多いなど、頭皮が蒸れた状態が長く続いてしまう環境にある人は頭のニキビができやすいとされています。
予防法は、通気性のよい帽子を選ぶ、定期的に帽子を脱ぐ、汗をかいたあとは早めに頭皮を洗うなど、通気性を意識して頭皮を清潔に保つことが挙げられます。
ニキビを潰してしまう
ニキビを潰すことは、傷口から感染するリスクや炎症によるニキビの悪化、瘢痕(はんこん)の原因になり得ます。
予防法としては、ニキビを触らないよう意識し、清潔な頭皮環境を保つことが重要です。
自身に合ったスキンケア製品を使用し、痒みが出ないようにケアすることも、ニキビを触ってしまう頻度を下げることにつながります。
誤ったシャンプーの習慣がある
先ほどお伝えしたように、刺激の強いシャンプーの使用やリンスやコンディショナーを頭皮につけてしまうなどの習慣がある人は、頭にニキビができやすくなります。
シャンプーやリンスの選び方を見直して頭皮に合わない製品の使用を避け、シャンプーやリンス、頭皮の皮脂や汚れをしっかりと洗い流して頭皮の清潔を保ちましょう。
頭のニキビの治療法
続いて、頭のニキビを治療する方法を、内服薬と外用薬に分けて解説します。
内服薬
頭皮のニキビ治療における内服薬として、抗生物質やホルモン治療などがあります。
抗生物質は、細菌による感染を抑えるために用いられ、アクネ菌の増殖を抑制して炎症を減少させる効果が期待できます。
ホルモン治療は、ホルモンバランスの乱れが原因であるニキビに対して行われることがあります。
女性ホルモンのバランスを整えることで、皮脂の過剰分泌を抑える働きが期待できます。
これらは主に皮膚科医による診断のもと、ニキビの原因や重症度に応じて処方されます。
外用薬
頭のニキビ治療における外用薬として、サリチル酸やベンゾイルペルオキシドが含まれる製品が挙げられます。
サリチル酸は皮膚の角質層を溶かして毛穴の詰まりを改善し、ニキビの原因となる過剰な皮脂や死んだ皮膚細胞を除去する働きがあります。
一方、ベンゾイルペルオキシドは強力な殺菌作用を持ち、アクネ菌を殺菌してニキビの発生を抑える働きがあります。また、皮脂の過剰な分泌を抑える働きもあります。
これらの成分はニキビ治療に広く用いられ、初期から中等度のニキビ向けに処方されることが多いようです。使用する際は肌の乾燥や刺激、そのほかの副作用にも注意する必要があります。
皮膚科医や薬剤師の指示を守り、適切に使用してください。
頭のニキビに似た症状
頭のニキビに似た症状には、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)や毛包炎(もうほうえん)、接触性皮膚炎があります。頭皮の赤みやかゆみ、腫れなどを引き起こすことがあります。ここでは、それぞれについて解説します。
- 脂漏性皮膚炎
- 毛包炎
- 接触皮膚炎
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌や特定の真菌の増加によって引き起こされる炎症性の皮膚病です。
主に頭皮、顔、胸部などの皮脂腺が多い部位に赤み、腫れ、かゆみ、フケなどの炎症症状が発生します。
症状が出たときは、自己判断せず皮膚科で相談することが大切です。
悪化を防ぐために、無理に潰したり触ったりすることを避けて清潔に保ちましょう。
また、使用しているヘアケア製品が刺激となっている可能性もあります。
成分をチェックし、必要であれば変更することも検討してください。
毛包炎
毛包炎は、毛包の周囲が細菌感染により炎症を起こす状態を指します。
毛の根元が赤、または白い吹き出物のようになり、かゆみやかすかな痛みを伴います。
毛包炎の治療には、抗菌洗浄剤や皮膚に外用の抗菌薬が使用されます。
毛包炎の範囲が広い場合は内服薬の服用が必要になることもあるため、早めに皮膚科を受診しましょう。
接触皮膚炎
接触皮膚炎は、特定の物質に触れることで起こる皮膚の炎症です。酸やアルカリ、植物などが皮膚に触れて発症する刺激性接触皮膚炎と、皮膚に触れた物質に対して免疫が反応して発症するアレルギー性接触皮膚炎に分けられます。どちらも発疹が生じ、かゆみや痛みを伴います。
発疹の状態はさまざまで、重度になると腫れや水疱ができることもあります。
発症した原因がわかっている場合は、その刺激物やアレルゲンとの接触を避けることで再発を防ぐことができます。そのため、肌を保護するために手袋を使用したり保湿剤を使って肌のバリア機能を保ったりすることが予防として考えられます。
しかし、接触皮膚炎の原因を特定することは容易ではありません。
何度も発症する場合や症状が重い場合は、迷わず皮膚科を受診して診察を受けましょう。
頭のニキビを繰り返さないために
頭のニキビを繰り返してしまう場合、これまでお伝えしたように、シャンプーやリンスなど使用しているヘアケア製品を見直したり、しっかりと洗い流して頭皮の清潔を保ったりすることを心がけてみてください。
日中使用している整髪料の成分を調べ、違うものに変えてみることも効果があるかもしれません。
また、バランスの良い食事を摂ることを意識し、睡眠の質を上げて、適度な運動や趣味の時間をとってストレスを管理することも大切です。できることから試してみてください。
それでも頭皮にニキビができる場合やニキビに痛みや痒みがある場合は、触れたり掻いたりすることで悪化させてしまう可能性があります。
皮膚科での診断と適切な治療薬の処方を受けることが重要です。
まとめ
頭皮ニキビができる原因や予防法について解説しました。
頭皮ニキビは、毛穴の詰まりや油分の過剰な分泌、バクテリアの増殖によって引き起こされる皮膚疾患です。
ニキビの症状は、個々の生活環境によっても皮膚の状態は大きく左右されますので、適切なスキンケアと清潔を保ち、予防につなげましょう。
また、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などニキビ以外の原因が隠れている場合もあるため、気になる症状がある場合は皮膚科への受診を検討してみてください。
参考文献