粉瘤ができる原因は?自分で治せる?治療方法を医師がわかりやすく解説

粉瘤ができる原因
この記事を監修した医師

西岡 弘記 医師

恵比寿ウエストヒルズクリニック

2000年東京慈恵会医科大学医学部卒業 同大学附属病院勤務、2004年東京慈恵会医科大学附属病院形成外科助教、2007年東京慈恵会医科大学附属第3病院 形成外科指導医 診療副部長兼任。大手美容外科での手術指導などを経て、銀座いけだクリニック顧問医師。東京皮膚科形成外科院長2011年恵比寿ウエストヒルズクリニック開業。

医学博士、日本形成外科学会認定専門医、日本形成外科学会領域指導医、日本美容外科学会(JSAPS)専門医、日本美容外科学会(JSAS)専門医、日本抗加齢医学会専門医

痛くはないけれど、何となく皮膚にしこりがあるように感じたことはありませんか?それは、もしかしたら粉瘤かもしれません。「放っておいたらどうなるの?」「何故できたの?」「おできだと思っていたけど、違うの?」と不安になったり、疑問を抱いたりすることもあると思います。顔などの目立つ場所にできてしまうと、人の目が気になることもあるでしょう。

今回は、粉瘤の特徴や原因、治療方法について解説します。

目次

粉瘤とは

粉瘤とは

粉瘤は、アテローム、表皮嚢腫とも呼ばれる良性の腫瘍です。皮膚にしこりがあるように感じ、通常はあまり目立ちません。痛みやかゆみなどもほぼありませんが、そのまま放置していると症状が悪化してしまうこともあるため、自覚症状がなくても、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。

粉瘤の基本情報

粉瘤とは、皮膚の下に袋状の組織(嚢胞)ができ、その中に皮脂、垢、角質などの老廃物が溜まった状態のことをいいます。半球状に盛り上がるできもので、大きさは数ミリほどの小さなものから、数センチと大きくなるものまであります。

ほとんどの場合、粉瘤の中央には黒い点のように見える小さな穴があります。これが皮膚の袋の口であり、「臍」や「開口部」などと呼ばれます。この開口部は蓄積して固まった老廃物によってふさがっていることが多く、その場合は周囲を圧迫しても中身を排出することはできません。爪などで強く押して中身を絞り出そうとする行為は、細菌感染を引き起こす可能性があるので控えるようにしましょう。

通常であれば自然と剥がれ落ちるはずの老廃物ですが、皮膚の内側に袋状になったところに溜まっていくので、そのまま蓄積されてしまいます。老廃物が少しずつ溜まっていくことで、粉瘤は徐々に大きくなっていきます。粉瘤は大きくなるにつれ、臭いを生じるようになったり、炎症を起こしたりする可能性が高くなります。炎症や化膿などの症状を伴うほどに悪化してしまった場合は、外科的治療が必要になります

粉瘤の種類

粉瘤は、その進行やでき方によって、次のように分けることができます。

  • 表皮嚢腫
  • 外毛根鞘性嚢腫
  • 多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫) など

表皮嚢腫

最も一般的な粉瘤の症状です。半球状に盛り上がり、表面に小さな開口部、臍が見られます。

外毛根鞘性嚢腫

見た目は表皮嚢腫に似ていますが、ほとんどが頭皮に発生し、表皮嚢腫に比べて固いことが多いです。散発的に生じる以外に、遺伝によって発生するケースもあります。腫瘍が大きくなると毛根にも影響を与えてしまい、毛髪がちぢれたり、その部分が禿げたりしてしまうことがあります。

多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫)

多発性という名のとおり、直径が3~30ミリ程度の腫瘍がブツブツと多発する疾患です。粉瘤と異なり、中央に開口部(臍)がありません。わきのした、胸、首、背中、腕などにできることが多いです。

粉瘤ができる原因

粉瘤ができる原因

では、粉瘤ができる原因は何なのでしょうか?ほとんどの場合、原因はわかっていません。皮膚の外傷がきっかけになることもありますが、元々の体質から粉瘤ができやすい人もいることが報告されています。

垢や皮脂、角栓などの老廃物が溜まるという症状から、不衛生な状態が原因ではないかとも思われがちですが、清潔にしていても粉瘤はできることがあります。

炎症を起こす理由

粉瘤は、放置しているうちに炎症を起こして腫れたり、それによって痛みが生じたりすることがあります。この炎症が起きる原因は、外的刺激によって嚢胞が壊れてしまい、皮膚の内部に角質や皮脂などが排出され、これに対する異物反応が起きるためだといわれています。さらに細菌感染が加わることで、炎症が悪化することもあります。

粉瘤の手術による治療

粉瘤の手術による治療

粉瘤は自然に治癒することはなく、治すためには外科的処置が必要です。しこりが気になって、自分でつぶしてしまいたくなることもありますが、仮につぶして内容物を押し出ししこりが小さくなったとしても、嚢胞の袋そのものは残ります

そのため、時間が経つとまたその袋に老廃物が溜まっていきます。飲み薬や塗り薬だけの治療についても同じことです。二次的な症状である炎症や痛みは、一時的には抑えることができるでしょうが、中の袋がある以上、粉瘤を根治することは難しいです。粉瘤は小さいうちに切除した方が、傷が残らず軽微な手術で済むため、できるだけ早く処置を受けることをおすすめします。

手術の種類

粉瘤の手術では、下記のいずれかの方法をとります。粉瘤の大きさや過去に炎症を起こしたことがあるかなどの状態を診断して治療方針が決定されます。

  • くり抜き法
  • 切開法

くり抜き法

局所麻酔を行ったうえで、表面の皮膚開口部(臍)や周囲の皮膚を、粉瘤の内容物とともにくり抜きます。このとき、直径4〜5ミリ程度の円筒形のメスを用います。くり抜いた後に、内容物の残りと嚢胞の袋部分も取り除きます。傷は縫合するか、傷口が小さい場合には軟膏処置を行います。粉瘤が小さい場合に用いられることが多い手術方法です。

切開法

切開法でも、局所麻酔を行ったうえで皮膚を切開し、嚢胞の袋部分と内容物の両方を一緒に摘出します。前述のくり抜き法とは違い、切開して粉瘤を摘出した後に縫合するため、傷が大きくなる場合もあります。しかし、全容を目視しながら処置できるため確実な摘出が見込まれ、取り残すことがなく再発の可能性も低いというメリットがあります。

手術の流れ

まず、診察で腫瘍が粉瘤であるか診断します。後述しますが、粉瘤に似た症状、外形であっても、原因や治療方法の異なる皮膚疾患は複数あり、それらと区別するためです。視診や触診での診断のほか、エコー検査やCT検査を行うこともあります。

また、化膿の有無や、過去の炎症による傷口付近の瘢痕化の有無など、状況に応じて手術方法が選択され、医師による説明が行われます。

手術にかかる時間

粉瘤の手術にかかる時間は、大きさや化膿の有無にもよりますが、大抵の場合は日帰り手術が可能で、局部麻酔を施す時間も含めて数十分から1時間程度です。

手術の際の注意事項

粉瘤の手術後は、ほとんどの場合において、すぐに仕事や運転などの日常生活に戻ることができます。術後の注意点を守って、清潔にして過ごしましょう。手術を受けた当日は飲酒や運動などは控えましょう。入浴については、医師の指示を仰いでください。

手術の一般的な費用

粉瘤の手術には保険が適用されます。手術費用は医療機関によって異なりますが、粉瘤の大きさと生じている部位で分けられていることが多く、健康保険が適用されて3割負担の場合は、部位や大きさによって異なりますが、1万円前後が相場です。

粉瘤の手術以外による治療

粉瘤の手術以外による治療

粉瘤は手術を行わない限り、根治することは難しいです。放置していても、症状が改善したり自然治癒したりすることはありません。粉瘤は老廃物の蓄積による嚢胞のため、徐々に大きくなります。大きくなってくると、気になって不衛生な手指で触れてしまったり、ニキビのように圧迫して内容物を押し出そうとしたりして悪化させてしまうこともあります。

粉瘤が大きくなると、摘出手術が大掛かりなものになり、傷痕を目立たないようにきれいに治療することが難しくなります。また、細菌感染による炎症のリスクも高まります。

粉瘤と似た症状が出る疾患

粉瘤と似た症状が出る疾患

皮膚にできるできものは粉瘤以外にもあり、自覚症状や見た目は似ていますが、原因や治療方法が異なります。ここでは、それらのうち代表的なものを紹介します。

脂肪腫

脂肪腫は、脂肪細胞が増えてできる良性の腫瘍です。粉瘤とは違い、開口部はありません。身体中のどこにでも生じますが、背中や首、肩などが多く、次いで、上腕やお尻などにもできます。粉瘤が固く弾力があるしこり状であるのに対し、脂肪腫は柔らかく皮膚と一体化しないで周囲の組織とは被膜で分かれているため、上から指で触れると動くことがわかります。

化膿性汗腺炎

化膿性汗腺炎もまた、赤いできものができる皮膚疾患です。アポクリン汗腺と呼ばれる汗を出す器官や、毛包で毛根を包んでいる組織に炎症が起きることで引き起こされる疾患で、腋や腿の付け根などにできることが多いです。できものの部分が硬いしこりのようになったり、内部に膿が溜まったりする特徴があります。

粉瘤との違いは、粉瘤が顔・身体のどこにでもでき、老廃物の蓄積によって大きくなるのに対し、化膿性汗腺炎は汗腺のあるところにでき、中身が炎症によって生じた膿であることです。

まとめ

 粉瘤の種類や原因、治療方法などについて解説しました。初期の粉瘤は小さなしこりに過ぎず、自覚症状も少ないです。しかし、大きくなると嚢胞が何かのきっかけで破れ、炎症を引き起こしてしまう場合があります。

また、肥大化した粉瘤の摘出手術は切開する範囲が大きくなり、費用やリスクが高まります。そのため、皮膚に気になるできものを見つけた場合は、医療機関を受診することをおすすめします。

参考文献

  • 粉瘤症例の検討
  • アテローム(粉瘤) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
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