蕁麻疹の対処法は?原因と症状、治療法を医師がわかりやすく解説

蕁麻疹の対処法は?原因と症状、治療法を医師がわかりやすく解説

蕁麻疹(じんましん)は、一過性で限局性の痒み、浮腫を伴う膨疹を特徴とする皮膚疾患です。今回は、蕁麻疹の対処法、蕁麻疹の原因や種類について詳しく解説します。

この記事を監修した医師

江野澤 佳代 医師

浅草橋駅前総合クリニック

東邦大学医学部卒業、東邦大学医療センター大森病院研修医、東邦大学医療センター大森病院皮膚科、東京高輪病院皮膚科、東京高輪病院皮膚科医長、2020年10月に浅草橋駅前総合クリニック開院

日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医

目次

蕁麻疹(じんましん)とは

まずは蕁麻疹の症状と診断方法について解説します。

症状

蕁麻疹は24時間以内に膨疹が完全に消退することが特徴です。
蕁麻疹は、「蕁麻疹診療ガイドライン2018」では、「特発性の蕁麻疹」、「刺激誘発型の蕁麻疹」「血管性浮腫」「蕁麻疹関連疾患」に分けられます。
特発性の蕁麻疹は、明らかな誘因なく自発的に出現する蕁麻疹で、急性と慢性に分類されます。

急性蕁麻疹は通常10日前後で軽快し、慢性蕁麻疹は6週間以上にわたって膨疹の出現・消退を繰り返します。
慢性蕁麻疹は、頻繁に発症し再燃するため、患者さんのQOLが大きく損なわれることも少なくありません。

一方、刺激誘発型の蕁麻疹は刺激ないし、負荷により皮疹が誘発される蕁麻疹であり、原因としてアレルギー性、非アレルギー性、物理的刺激によるものなどが挙げられます。

診断方法

膨疹の症状はさまざまですが、通常は視診と問診で蕁麻疹の診断を確定できます。

蕁麻疹の主な原因

特発性の蕁麻疹は明らかな誘因なく出現する蕁麻疹であり、蕁麻疹患者さんの約7割はこれに当てはまります。
したがって、安易なスクリーニング検査は控えるべきです。
増悪因子として、細菌・ウイルス感染が関与する急性蕁麻疹もあり、小児と成人ともにみられます。
慢性蕁麻疹でも病巣感染の関与を考慮する必要があります。

自己免疫疾患の中で、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスでは治療抵抗性の蕁麻疹を生じることもあります。
アレルギー性蕁麻疹が疑われる場合は、病歴から原因抗原を推定します。血清中の抗原特異的IgE抗体の検索と皮膚テストを行います。

非アレルギー性蕁麻疹は、ヒスタミン含有食物(サバ、マグロなど)の摂取により生じます。アスピリン蕁麻疹はアスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、食品添加物で膨疹が誘発されます。それぞれ問診にて、NSAIDsや食物の摂取歴を確認します。

物理性蕁麻疹は寒冷曝露、日光照射、温熱負荷などにより生じる蕁麻疹です。寒冷蕁麻疹は寒気や冷水にさらされた際に膨疹を生じます。全身性と局所性があります。診断には寒冷負荷試験を行います。

日光蕁麻疹は太陽光線に曝露した皮膚に限局して膨疹が生じるまれな蕁麻疹であり、その誘発波長はUVA,UVB,可視光線とさまざまです。これらの波長の光線照射試験にて診断を確定します。

コリン性蕁麻疹は入浴、運動などの発汗刺激によって小型の膨疹もしくは紅斑が誘発される蕁麻疹です。乏汗あるいは無汗を伴う特発性後天性全身性無汗症が疑われる場合は温熱発汗試験を行います。

蕁麻疹の種類

ここまで、蕁麻疹の症状や原因、発症する仕組みについて解説してきました。続いては、蕁麻疹の種類について解説します。

急性蕁麻疹

蕁麻疹の症状を発症して6週間以内のものを急性蕁麻疹と呼びます。感染症や体調不良、疲労やストレスなどさまざまな原因が絡み合って発症すると考えられており、原因をしっかりと特定することはできません。

皮膚の赤みや腫れ、発疹、かゆみが症状として現れますが、多くの場合は一日以内に症状が治まります。症状が長く続いても1週間程度で治まるでしょう。

急性蕁麻疹

症状の再発や持続には個人差がありますが、発症後1ヶ月以上、毎日のように症状が繰り返し現れる蕁麻疹を慢性蕁麻疹と呼びます。慢性蕁麻疹も原因が特定できないことが多いため、治療が長期に及ぶこともあります。

原因がわからない場合の慢性蕁麻疹の治療では、症状の管理と対処が課題となります。皮膚科医の指導のもと、適切な治療法を見つけることが重要です。

物理性蕁麻疹

物理性蕁麻疹は、機械的摩擦や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などの物理的刺激によって引き起こされます。そのため、個人によって異なる原因や症状を示すことがあります。

原因と考えられる刺激を避けると症状が緩和され、時が経つにつれて刺激に対する過敏性も低下する傾向があることが特徴です。

アレルギー性蕁麻疹

アレルギー性蕁麻疹は、特定の食べ物や薬剤、花粉、昆虫や植物などに含まれるアレルゲンに対する免疫の過剰反応によって引き起こされます。症状は皮膚の発赤、腫れ、激しいかゆみなどが現れ、場合によっては呼吸困難や血圧低下などの重篤な症状も発生することがあります。

アレルギー性蕁麻疹では、アレルゲンとの接触後約15〜30分以内に症状が現れることが多いようです。アレルギー性蕁麻疹はアレルギー反応が原因で起こるため、アレルゲンを特定できた場合はそのアレルゲンを避けることが重要です。

コリン性蕁麻疹

コリン性蕁麻疹は、入浴や運動などで体が汗をかくと現れる蕁麻疹で、小児から若年層に多く見られます。汗をかくことで発汗をつかさどる神経伝達物質であるアセチルコリンが増加し、蕁麻疹の症状の引き金となると考えられています。

主な症状はかゆみや腫れですが、一つひとつの膨疹が小さく、直径が約1〜4mm程度で、数時間から数日で自然に消えることが多いようです。かゆみや腫れの症状が激しい場合や日常生活に支障をきたす場合は、早めに皮膚科で相談しましょう。

蕁麻疹の治療法

蕁麻疹は真皮の肥満細胞の活性化に伴って放出されます。ヒスタミンを代表とする生理活性物質による真皮の浮腫です。多くは特発性であり、薬物療法の第一選択薬は第二世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬の投与です。治療抵抗例に対して、抗ヒスタミン薬の2倍量までの増量を行うこともあります。また、抗ヒスタミン薬の種類の変更も検討します。

効果不十分の場合は、抗ロイコトリエン薬、H2受容体拮抗薬などの併用も行います。難治例に対しては、抗IgE抗体であるオマリズマブの投与、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体であるデュピルマブの投与を行います。

刺激誘発型の蕁麻疹の治療は、それらの原因を除去、回避することです。アレルギー性蕁麻疹の治療では、原因抗原の同定とその回避です。日光蕁麻疹では日光曝露の回避と抗ヒスタミン薬内服による治療を行います。

まとめ

蕁麻疹の症状や種類、治療について解説しました。

蕁麻疹の増悪因子である疲労、ストレスをできるだけ避けることも大事です。特に慢性蕁麻疹は、頻発する症状とその再燃によってQOLが大きく損なわれることがあります。蕁麻疹でお困りの方は、一度皮膚科を受診しましょう。

参考文献

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