「消えない痣(あざ)」は注意が必要?原因・治療方法について医師がわかりやすく解説

消えない痣(あざ)
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

物にぶつかると痣ができることがありますが、ぶつかった記憶がないのに痣ができていることはありませんか?内出血による痣であれば自然消滅するため経過観察でも問題ないでしょう。しかし、消えずに残っている痣の中には、注意が必要な痣もあります。

今回は、痣の種類や原因、治療法について解説していきます。痣が消えなくて不安を感じている方、痣の治療法に原因や治療法について知りたい方はぜひ参考にしてください。

目次

消えない痣(あざ)は注意が必要?

何かしらの原因により皮膚の一部が変色し、周囲の皮膚の色が違って見える状態を痣と呼びます。

生まれつき痣がある場合は成長しても痣が消失することはなく、命を脅かす危険はないので治療の必要はありません。

一方で、ぶつけた記憶がないのに痣ができている場合は、身体の中が出血しやすい状態になっている可能性があるため注意が必要です。原因としては、加齢や血小板の減少、がんなどが挙げられます。

まずは、痣ができる原因や痣の種類について解説します。

痣ができる原因は?

痣ができる原因は、メラニンの部分的な増加・皮膚の透過性・内出血・病気が挙げられます。順番に見ていきましょう。

黒・茶・青痣はメラニンの部分的な増加によるもの

痣の中でも黒・茶・青に分類される痣は、メラニンの部分的な増加による可能性が挙げられます。通常であればメラニンは表皮内に存在しており、黒い色素(メラニン)を産生するメラノサイトと呼ばれる細胞があります。メラニンの量や時間経過により、痣が茶色や青色に変化することがあります。また、メラニンの量が多ければ色が濃くなるため、茶色の痣は黒っぽく変化します。

赤痣は皮膚に存在する血管が増えて赤く見える

血液中に存在するヘモグロビンは赤い色素を持っているため、血液は赤く見えています。赤痣は皮膚に存在する血管が増えて赤く見える現象です。赤痣は本来存在している血管よりも数が増える皮膚病変であり、血管腫とも呼ばれます。

出血斑は打ち身などによる内出血でできる

出血斑は内出血により形成される痣の1つです。物にぶつかったり、転んだりした際に皮膚に高い圧力がかかり、皮膚の下に出血が起こることで痣になります。皮膚が盛り上がった状態は、皮下血腫とも呼ばれます。内出血すると皮膚の色が紫になりますが、通常であれば数日〜数週間で体内に吸収され、痣は消失するでしょう。

皮下血腫になっている場合、血腫が大きかったり、血液をサラサラにする薬を服用していたりする方は注意が必要です。出血の量が多いと貧血を起こす可能性もあるため、必要であれば病院を受診しましょう。

皮膚がんや血液の病気が原因で痣のようなものができることも

皮膚がんや血液の病気が原因で痣と同様の症状が出現していることもあります。止血の働きがある血小板ですが、なにかしらの原因により血小板が減少している場合は止血されにくい状態です。可能性として考えられる先天性・後天性の病気は以下のようなものがあります。

  • IgA血管炎
  • 白血病
  • 再生不良性貧血
  • ビタミンK欠乏症
  • 骨髄腫
  • 腎不全
  • 肝硬変

思い当たる原因がない痣が点状、または斑状に出ている場合は、一度専門の医師に相談してみることをおすすめします。

消えない痣の主な種類は?

消えない痣の主な種類は以下のとおりです。痣が大きくなったり増えたりすると健康を害する可能性があります。順番に解説します。

  • 太田母斑
  • カフェオレ斑・レックリングハウゼン病
  • 扁平母斑
  • ベッカー母斑
  • 色素性母斑
  • 単純性血管腫

青痣:太田母斑

太田母斑とは、生まれて間もない頃に発症する早期型、また思春期に発症する遅発型に分けられる皮膚疾患です。顔の中でも、おでこ・目の周り・頬・上唇の局所的に出現する点状の青痣が特徴です。発症すると自然に改善することはなく、レーザー治療が確立されるまでは治療は困難でした。

現在では、レーザー治療で傷跡を残すことなく完治できる疾患へと変化しています。レーザー治療は成人してから治療するよりも年少期に行う方が高い治療効果を得られるといわれています。

茶痣:カフェオレ斑・レックリングハウゼン病

カフェオレ斑は生まれた時すでにある、または生後すぐに生じることがある茶色い痣で、大きさは直径0.2〜20cmと幅広いものまでさまざまです。10人に1〜2人に発症している頻度の多いものですが、直径1.5cm以上のカフェオレ斑が6個以上ある方はレックリングハウゼン病(神経線維腫症)の可能性があります。

レックリングハウゼン病は遺伝疾患です。レックリングハウゼン病の発症率は、100人に1人程度です。カフェオレ斑の他の症状として、指先程度のやわらかい神経線維腫のほかに、骨・眼などさまざまな場所に症状が現われます。神経線維腫は年齢が上がるとともに、腫瘍の数が増えて大きくなります。カフェオレ斑が6個以上ある方は、専門の医師に相談しましょう。

茶痣:扁平母斑

扁平母斑は茶色の痣が皮膚に出現する病気です。ほくろのように盛り上がることはありません。カフェオレ斑と痣の色が似ているため、扁平母斑ではなくカフェオレ斑といわれることもあります。生まれつきだけではなく思春期に発症することもあり、思春期に発症する場合は痣と一緒に毛が生えてくることが多くみられます。扁平母斑が悪性となることはほとんどありません。

茶痣:ベッカー母斑

ベッカー母斑とは、扁平母斑が思春期以降に発症した遅発性扁平母斑です。扁平母斑と同様に、悪性化する可能性はほとんどありません。お腹・脚・腕に症状がでることもありますが、肩から前胸部にかけて症状が出現することが多いようです。痣は平均125平方cmほどの大きさで、毛が生えることが特徴です。表面がざらざらしていたり、痣の境目がぎざぎざしていたりすることが多いともいわれています。

黒痣:色素性母斑

色素性母斑はほくろとも呼ばれます。先天性色素性母斑と後天性色素性母斑の2つに分類され、大きい先天性色素性母斑はがん化(悪性黒色腫)する可能性があります。明確な大きさの規定はないものの、どんどん大きくなる傾向があるものはがんの可能性が高くなるため注意が必要です。後天性色素性母斑の悪性化リスクは不明とされています。

治療法は手術による切除などがあり、切除することでがん化を防ぐことが可能です。皮膚の状態を確認するためにも、長期的な経過観察が必要になります。

赤痣:単純性血管腫

単純性血管腫(ポートワイン母斑)とは、生まれた時からある存在している平らな赤痣です。自然に消えることはありませんが、顔や頭に単純性血管腫がある場合、成人を過ぎると盛り上がってくることもあります。上まぶたに症状が出現すると、目に圧力をかけるため視力障害につながる可能性があるため、早めの治療をおすすめします。

治療法としてはレーザー治療が挙げられ、顔や首にある痣は70〜80%に有効である一方、脚に生じている痣には効果が少ないといわれています。

消えない痣の治療方法

消えない痣の治療方法には、レーザー治療・皮膚凍結療法・切除手術が挙げられます。順番に見ていきましょう。

レーザー治療

レーザーによる治療は、さまざまな痣に対する非観血的治療の1つです。レーザー治療には、以下のような種類があります。

  • Qスイッチ(ルビー)レーザー
  • Vビームレーザー

レーザー治療は、皮膚を切開せずに治療を行えるだけでなく、機器性能の上昇とともに治療効果も高くなっています。レーザー治療は幼い子どもでも受けることができ、太田母斑においては幼い頃に治療を開始する方が、成人よりも少ない回数で治療が完了します。
顔や首にできた単純性血管腫へのレーザー治療でも、年齢が若いほど治療効果が得られており、レーザーによる痣の治療は期待できるといえるでしょう。

レーザーは1回で効果を実感する場合もあれば、複数回の照射でも効果が得られない場合もあります。しかし、手足にできた場合の痣には効果が薄いといわれている点や、治療後に再発する可能性もあるという点に注意が必要です。

皮膚凍結療法

皮膚凍結療法とは、ドライアイスや液体窒素スプレーを使用して皮膚の表面を凍らせる方法です。痣がある皮膚を意図的に凍傷の状態にして細胞を壊死させ、壊死した皮膚がかさぶたのようになり剥がれ落ちることで治療する方法です。痣のほかにも、いぼの治療法として活用されている治療法です。単体で行う場合もあれば、レーザーや手術と併用して治療することもあります。

切除手術

切除手術とは外科的な治療法であり、痣の部分を切除する方法です。青痣・茶痣・赤痣ではレーザーによる治療法が一般的ですが、黒痣の場合は切除手術を行います。身体にメスを入れるため、傷跡が残る点はデメリットといえるでしょう。
また、太ももやお尻から皮膚を移植する手術方法もあります。移植のために太ももやお尻の皮膚を切り取る場合は、必然的に傷跡が残ります。

まとめ

痣の原因や種類、治療法について解説してきました。痣ができる原因はさまざまで、内出血によるものや生まれた時からすでに存在していることもあるでしょう。ただ、消えない痣の中には早めの治療が必要な痣もあります

日頃から自分の身体にある痣の種類や数を把握しておきましょう。痣を消したい場合や、痣の数や状態に変化が見られる場合は、皮膚科の受診をすることが大切です。

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