穏やかに過ごしたい夜の時間に、不意に体が痒くなってしまうことがあります。夜間に感じる痒みはただの不快な感覚になるだけではなく、何かしらの病気であることを示す体からのサインかもしれません。
今回は、夜に体が痒くなる主な原因とその対策、さらには痒みが現れる可能性のある病気について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
夜に体が痒くなる主な原因
夜になると体が痒くなる現象は、生活習慣や身体の自然な反応が原因で起こる可能性があります。ここでは、その主な原因について解説します。
- 肌が乾燥するから
- 体温が上昇するから
- ストレスや緊張が緩和されるから
- 寝具や寝巻きに対するアレルギーや擦れがあるから
肌が乾燥するから
一日の終わりに肌の痒みを感じる主な原因の一つが、肌の乾燥です。夜、多くの人がお風呂やシャワーで一日の疲れや汚れを洗い流します。この時、シャンプーやボディソープで洗浄することで肌の乾燥が促進されることがあります。また、温かいお湯で長時間の入浴をすると肌の自然な保湿成分が落ち、乾燥による痒みを招きます。
さらに、入浴後の着替えや布団に入る際の擦れが肌を刺激し、痒みを強く感じさせることもあります。特に暖房が効いた部屋や乾燥する季節では肌の水分が奪われやすく、痒みを引き起こしやすくなります。
体温が上昇するから
夜、入浴や食事、アルコールを楽しんだ後や暖かい布団に入った後などは、体温が自然と上昇します。こうした体温の上昇は痒みの原因の一つになります。体温が上がると皮膚の血流が増加し、痒みを伝える神経の活動が促されます。加えて、就寝時には副交感神経が活発になり皮膚の温度がさらに上がるため、痒みを引き起こしやすい状態になります。
ストレスや緊張が緩和されるから
日中の忙しさの中で感じるストレスや緊張は、私たちが意識しない間にも体に影響を及ぼしています。夜、家に帰ってリラックスする時間が増えると、そのストレスや緊張が徐々に緩和されていきます。
こうしてリラックスする中で体がストレス解消のためのさまざまな反応を示し、その一つが痒みとして現れることがあります。ストレスや緊張が原因で血流が増加したり、体内の化学物質が変化することにより皮膚の感受性が高まり、痒みを感じやすくなるのです。
寝具や寝巻きに対するアレルギーや擦れがあるから
夜間の痒みを引き起こす大きな原因の一つとして考えられるのは、寝具や寝巻きへのアレルギー反応や肌との擦れです。使用している洗剤や柔軟剤に含まれる化学物質、寝具の素材自体に対するアレルギー反応が皮膚の刺激となり、痒みを引き起こすことがあります。敏感肌の人にとっては、擦れやアレルギー反応が不快な痒みの原因となってしまう可能性が高いです。
夜に体が痒くならないための対策・予防
続いては、痒みを抑えて快適な夜を過ごすための主な方法について解説します。
- 温度調節や保湿を行う
- 飲酒しない
- リラックスして過ごす
- 寝具や寝巻きを変える
温度調節や保湿を行う
先述のとおり、痒みの大きな原因の一つとして肌の乾燥があります。特に夜間は日中と比べて、室内の温度が下がると肌の乾燥が進みやすくなります。これを防ぐためには、室内の湿度と温度を調整して適切に保つことが重要です。
加湿器を使用したり軽く湿らせたタオルを部屋に置くことで、室内環境を改善できます。また、入浴後は保湿クリームやローションをしっかりと肌に塗り込むことで肌の乾燥を防ぎ、痒みを軽減することができます。
飲酒しない
夜にお酒を飲むことで体温が上昇したり発汗が促され、結果的に痒みを引き起こすことがあります。特に睡眠前の飲酒は肌の状態に悪影響を及ぼすことが多いため、避けた方が無難です。夜間の痒みを予防するためにはアルコールの摂取を控えめにし、代わりにハーブティーや温かい牛乳など、リラックス効果のある飲み物を選ぶと良いでしょう。
リラックスして過ごす
こちらも先述しましたが、ストレスや緊張が緩和されると痒みを感じやすくなることがあります。そのため、夜は意識的にリラックスする時間を設けることが大切です。深呼吸や瞑想、軽いストレッチをしたり、好きな音楽を聴くなど、リラックスを促す活動を取り入れることで、ストレスによる肌への影響を軽減できます。
寝具や寝巻きを変える
肌に優しい天然素材の寝具や寝巻きに変え、洗濯時の洗剤もご自身の肌に合う優しい成分の洗剤を使用することを心がけましょう。また、定期的に寝具を洗濯して交換することも、清潔で快適な睡眠環境を保つために重要です。
夜に体が痒くなることで考えられる病気
夜間の痒みはこれまでに紹介した生活習慣や環境因子によるものだけではなく、ときには特定の健康状態や病気のサインであることもあります。特に痒みが継続的であったり、日中にはあまり感じられないが夜になると顕著になる場合は注意が必要です。ここでは、夜に痒みを引き起こす可能性がある病気について解説します。
皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)
皮膚掻痒症は、特定の皮膚疾患が原因でなくとも発生する慢性的な痒みが特徴です。ストレスや過度の緊張、体内のホルモンバランスの乱れなど、内的要因によって引き起こされることがあります。皮膚掻痒症の診断には生活習慣やストレスレベルなどの詳細なヒアリングが必要とされ、適切な治療法は個々の症状や原因によって異なります。
慢性蕁麻疹(まんせいじんましん)
慢性蕁麻疹は6週間以上にわたって蕁麻疹が続いている状態を指し、夜間に痒みが増すといった特徴があります。慢性蕁麻疹の痒みは非常に強く、日常生活に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。治療にはアレルギー反応を抑える薬の投与や生活習慣の改善が含まれますが、原因が特定されない場合も多く、患者さんと医師が密接に協力して対処法を模索する必要があります。
その他の皮膚疾患
夜間の痒みを引き起こす可能性がある皮膚疾患は、皮膚掻痒症や慢性蕁麻疹以外にもあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は慢性的な炎症をともなう皮膚疾患で、強い痒みが特徴です。夜間に肌の乾燥が進むと痒みが悪化することが多く、適切なスキンケアや環境管理が重要となります。
カンジダ症
カンジダ症はカンジダ菌による感染症で、暖かく湿った環境を好みます。皮膚の折れ曲がる部分や粘膜に症状が現れやすく、夜間に痒みや刺激感を感じることがあります。
疥癬(かいせん)
疥癬は、疥癬ダニの感染によって引き起こされる皮膚疾患です。ダニによる直接の皮膚への影響とその結果生じるアレルギー反応により、強い痒みが発生します。特に夜間、暖かい布団の中で痒みが増す傾向にあります。
皮膚以外の疾患
夜間の痒みは皮膚の問題だけではなく、体内の臓器や全身の疾患が原因の場合もあります。
腎疾患
腎機能が低下することで体内に老廃物が蓄積し、それが皮膚の痒みを引き起こすことがあります。透析を受けている人や慢性腎不全の人に見られる症状です。
肝疾患
肝臓の病気、中でも胆汁が正常に流れない胆汁うっ滞症は皮膚の強い痒みを引き起こすケースが報告されています。これは、体内に胆汁酸が蓄積することによるものです。
神経疾患
神経系の病気や障害も、痒みの原因となることがあります。たとえば、帯状疱疹後神経痛や多発性硬化症などの疾患は皮膚に直接的な変化が見られないにもかかわらず、痒みを引き起こします。
皮膚掻痒症とは
皮膚掻痒症は、外見上の異常が見られないものの痒みを感じる状態です。ここでは、皮膚掻痒症の概要、原因、そして効果的な治療法について解説します。
概要
皮膚掻痒症は、皮膚に明らかな異常が見られないにもかかわらず痒みを伴う状態を指します。妊婦、HIV感染者、慢性C型肝炎患者、または慢性腎機能障害を持つ人々などは皮膚掻痒症に悩まされることが多いといわれます。
痒みは全身に現れることがあり、長く持続したりと波があります。夜間には特に強くなり、睡眠を妨げる原因にもなります。
原因
皮膚掻痒症の原因は主に3つに分けられます。
最も一般的なのは、皮膚の乾燥によるものです。皮膚の乾燥が原因の痒みは、多くの場合は保湿によって症状が改善します。
次に、服用中の薬剤が原因で痒みを引き起こす場合があります。麻薬製剤、ホルモン剤、利尿剤、解熱鎮痛剤、抗菌剤などさまざまな薬剤が痒みの原因となり得ます。特に高齢者の場合は複数の薬剤を服用していることが多く、そのいずれかが痒みの原因となる可能性があります。
また、内臓の異常が痒みを引き起こすこともあります。肝臓や腎臓の病気、甲状腺機能異常、血液病、内臓がんなどが挙げられます。内臓の異常が体内のバランスを崩し、皮膚の痒みを引き起こすのです。
治療法
皮膚掻痒症の治療はまずその原因を特定し、可能であればその原因を取り除くことから始めます。痒みを抑えるための治療に加え、原因となる疾患が特定された場合はその疾患自体の治療が優先されます。
皮膚の乾燥が原因である場合は保湿剤の使用が一般的な治療法となります。市販されているヘパリン類似物質や尿素含有剤が効果的で、これらは皮膚の水分を保持して痒みを軽減します。
痒みを抑えるための軟膏や市販のかゆみ止め薬も利用されます。特に、クロタミトンやジフェンヒドラミンを含む製品が有効です。また、抗アレルギー薬や漢方薬が使用されることもあります。
慢性蕁麻疹とは
慢性蕁麻疹も夜間に痒みを引き起こす可能性が大きい病気です。最後に、慢性蕁麻疹とはどんなものか、その原因や治療法について解説します。
概要
慢性蕁麻疹は、痒みをともなう赤い腫れや発疹が6週間以上持続する状態を指します。体のどの部分にでも突然現れ、数時間から数日で消えることが特徴ですが、再発を繰り返します。夜間の痒みが激しい場合は患者さんの睡眠を深刻に妨げることがあります。
原因
慢性蕁麻疹の正確な原因は、多くの場合不明です。しかし、自己免疫反応や物理的な刺激、ストレス、特定の食品や薬への反応などが関連していることがあります。体内でのアレルギー反応が原因でヒスタミンなどの化学物質が放出され、皮膚の発疹や痒みが発生すると考えられます。生活習慣が原因の場合もあります。
治療法
慢性蕁麻疹の治療は、主に症状の管理と患者さんの快適さの向上に焦点を当てます。まず、一般的に抗ヒスタミン薬が処方され、痒みの軽減と症状の頻度の減少を目指します。
抗ヒスタミン薬で症状が十分にコントロールできない場合、より強力な治療法が検討されることもあります。具体的には免疫抑制剤、生物学的製剤、光線療法が挙げられます。また、蕁麻疹の原因やトリガーを特定し、それらを避けることも治療の重要な部分です。ストレス管理技術や、特定の食品や物質への接触を避けることも症状の軽減に役立つことがあります。
まとめ
夜になると体が痒くなる現象は、生活習慣や環境の影響である場合と特定の病気のサインである場合があります。肌の乾燥、体温の上昇、ストレスの解放、また寝具や寝巻きによる物理的な刺激が原因で起こることが多いものの、皮膚掻痒症や慢性蕁麻疹といった疾患が夜間の痒みを引き起こしている場合もあります。
適切なスキンケア、生活習慣の見直し、そして必要に応じて皮膚科で診断と治療を受けることで、痒みを抑えて快適な夜を過ごせるようになるでしょう。
参考文献