足の裏が痒いのに何もない原因は?考えられる病気・対処法を医師がわかりやすく解説

足の裏がかゆいのに何もない
この記事を監修した医師

菊池 新 医師

菊池皮膚科医院

昭和62年 慶應義塾大学医学部卒業、昭和62年 慶應義塾大学病院にて研修医、平成3年 慶應義塾大学医学部皮膚科助手、平成7年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室医局長、研修担当主任、平成7年 慶應義塾大学医学部皮膚科診療科医長、平成8年 慶應義塾学事振興基金(福沢基金)を得て、アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)へ留学、平成10年 日本学術振興会海外特別研究員としてアメリカ国立衛生研究所にて引き続き留学、平成10年 留学を終え帰国、平成10年 5月 菊池皮膚科医院開設

日本皮膚科学会認定 専門医・指導医、日本医師会・日本医学会認定医、医学博士

「足の裏が痒いけれど、見た目には何も異常がない」そんな経験はありませんか?足の裏が痒いときに考えられる原因はさまざまです。

足の裏に発疹などが見当たらないのに痒い場合は、蒸れや乾燥などが原因で痒い以外にも皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)の可能性があります。

今回は、皮膚掻痒症の概要や、何もないのに足の裏が痒くなる原因、足の裏が痒いときの対処法などについて解説します。

目次

足の裏に何もないのに痒い原因

まずは、足の裏に発疹などが見当たらないのに痒い場合に考えられる原因を解説します。

  • 蒸れ
  • 乾燥
  • ストレス

蒸れ

足の裏の痒みは、過度の湿り気が原因であることがあります。人間の足は汗をかきやすい部位で、日常的に靴や靴下で覆われているため湿度が高くなりがちです。暑い季節には、汗が主な原因となって痒みを引き起こす可能性があります。

汗は痒みを誘発するだけでなく、湿度が高い状態では不快な臭いの発生や細菌の増殖にもつながり、さらなる皮膚トラブルを招くことがあります。足が蒸れることで皮膚がやわらかくなり、外部からの刺激に対して敏感になるほか、汗と混ざった汚れが痒みの原因となることもあります。

乾燥

足の裏の乾燥も痒みにつながることがあります。皮膚は皮脂膜という脂質の膜で覆われており、皮脂膜が水分の蒸発を防止したり皮膚の水分を保持したりしています。しかし、気候や加齢、洗いすぎなどでこのバランスが崩れると皮膚が乾燥しやすくなります。特に足の裏は皮脂腺がもともとないため、皮脂が不足した状態になりやすいのです。

乾燥した状態を放置すると皮膚のバリア機能が低下し、外部からの少しの刺激にも敏感になり痒みを伴うこともあります。また、バリア機能が低下していると、血行がよくなった時に痒みが強くなることもあります。

ストレス

ストレスを受けると自律神経のバランスが崩れたりホルモンバランスが乱れたりして、痒みを感じやすくなります。そのため、ストレスによって足の痒みが引き起こされている場合もあります。また、精神的なストレスや不安が汗の量を増やし、それが足の裏の痒みにつながることもあります。

足の裏が痒いのに何もない場合に考えられる病気

ここからは、足の裏が痒いのに皮膚には明らかな変化などがない場合に考えられる病気について解説します。

  • 皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)
  • 内臓の病気

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)

皮膚掻痒症は痒みが主な症状として現れますが、皮膚に明らかな病変は見られません。痒みは身体のどの部分にも現れる可能性があり、継続して痒みがあることもあれば、波のように強まったり弱まったりすることもあります。

皮膚掻痒症による痒みのメカニズムは十分に解明されていません。肌への刺激で痒くなることもあれば、ホルモンの異常や血液・内臓の悪性腫瘍、薬などが原因であるといわれています。これらについての詳しい説明は後述します。

肝臓の病気

肝臓病を原因とする痒みは、皮膚自体の異常が原因である痒みと違い、体内の代謝物質によって脳のかゆみ中枢が刺激されることで感じる痒みです。そのため、全身に痒みが現れたり、掻いても治まらなかったり、痒み止め(抗ヒスタミン剤)が効きにくかったりする特徴があります。

皮膚には異常がないにも関わらず、足の裏を含む全身に痒みを感じる場合、まずは肝臓や腎臓などの内臓の病気を疑い、医療機関を受診することも検討しましょう。

皮膚掻痒症とは

ここからは、皮膚掻痒症についてより詳しく解説します。

原因

皮膚掻痒症には、主に3つの大きな原因があります。

  • 皮膚の乾燥
  • 薬剤
  • 内臓の異常

皮膚の乾燥

1つ目は、皮膚の乾燥です。肌にはバリア機能があり、紫外線や花粉、ウイルスなどが体内に侵入するのを防ぎ、体内から水分が蒸発するのを防いでいます。バリア機能が低下した肌はうるおいを保てずに乾燥し、乾燥した肌は外部からの刺激に敏感に反応して痒みを生じやすくなります。

薬剤

2つ目は、薬剤が原因となって痒みを引き起こしている可能性です。皮膚の乾燥がない場合や、痒みが長時間続いている場合などは、日々服用している薬剤が原因となって痒みを引き起こしている可能性があります。痒みを引き起こしやすいといわれる薬剤は、麻薬性鎮痛薬やホルモン剤、利尿剤、解熱鎮痛剤、抗菌剤など多岐にわたります。薬剤が原因で痒みが引き起こされている場合は薬の変更や服用の中止、減量などの対応で改善されますが、皮膚科などで検査を受けて治療方針を相談する必要があります。特に高齢者は複数の薬剤を服用していることが多いため、自己判断で対処せず、正確な原因を知るためにも皮膚科で相談しましょう。

内臓の異常

3つ目は、内臓の異常が痒みを引き起こす可能性です。糖尿病、肝臓や胆嚢の疾患、慢性腎不全、甲状腺機能異常、内臓がんなどが原因で脳のかゆみ中枢が刺激され、痒みを感じます。内臓疾患による痒みは抗ヒスタミン薬で改善しないことに加えて、肌には目立った異常がありません。

症状

皮膚掻痒症は、はっきりとした発疹がないにも関わらず、痒みを感じる状態を指します。この痒みは全身性に発生することもあれば、特定の部位に限定されることもあります。夜間に痒みが強くなり、睡眠を妨げることもあります。

治療

皮膚掻痒症の治療は、根本的な原因に対処することから始まります。特定の病気が原因である場合は、その病気の治療が優先されます。

特定の病気が原因でない場合は、適切に保湿して肌を清潔に保ち肌のバリア機能を回復することで改善が見込めます。痒みを和らげるために皮膚搔痒症治療薬(ナルフラフィン)の内服や、痒みを和らげる塗り薬を塗布することもあります。

なかなか症状が改善せず、痒みを我慢できず掻き壊してしまうと皮膚の状態を悪化させてしまいます。痒みが強い場合や皮膚に発疹が生じる場合は、早急に皮膚科を受診しましょう。

足の裏が痒いときの対処法

このように、足の痒みを感じる原因はさまざまです。ここでは、症状を和らげるための対処法について解説します。

  • 乾燥を防ぐ
  • 蒸れを防ぐ
  • 冷やす

乾燥を防ぐ

肌の乾燥を防ぐためには、皮膚バリアーを整えることが重要です。保湿成分を含むクリームやローションで水分や脂分のバランスを整えると良いでしょう。肌が乾燥しているとバリア機能が低下してしまうので、使用するスキンケア用品は保湿力が高く低刺激なものを選ぶことがおすすめです。

蒸れを防ぐ

足の蒸れを防ぐには、適度に靴を脱いだり、通気性がよい・吸湿性の高い靴や靴下を履いたりすることが効果的です。汗をかいたらタオルでこまめに拭き取るなど、汗をかいたままの肌を放置しないことも大切です。特に夏場は蒸れやすいため注意しましょう。

冷やす

痒いところを冷やすことで、一時的に痒みを和らげる効果が期待できます。冷やした濡れタオルを当てたり、タオルに包んだ保冷剤を当てたりすると良いでしょう。ただし、過度に冷やしすぎないように注意が必要です。

上記はあくまでも一時的な対処法となります。我慢できないほどの強い痒みがある場合や症状が改善しない場合には、皮膚科を受診して適切な診断を受けることが大切です。

足の裏が痒い症状の予防策

足の裏が痒くならないようにするには、どのような予防法があるでしょうか?主な方法は次のとおりです。

  • 肌をケアする
  • 生活習慣を整える

肌をケアする

痒みを予防するためには、肌への優しいケアが重要です。

直接肌に触れる衣類選びに注意し、肌触りが良く刺激の少ない素材、木綿などを選ぶことが推奨されます。また、入浴時には肌を強く擦るのではなく、手ややわらかいタオルを使用して優しく洗うことが肌の乾燥や刺激を防ぐうえで大切です。過度な洗浄は皮膚に必要な脂質を奪って乾燥を促進させてしまうため、長風呂や洗い過ぎは避けた方が良いでしょう。

生活習慣を整える

生活習慣の乱れも痒みの原因になることがあります。睡眠を十分にとることや栄養バランスの良い食事を規則的に摂る、ストレスを軽減するなど、生活習慣を整えることも大切です。

食事については、身体を刺激する可能性がある食品の摂取は控えめにしましょう。辛い食べ物やアルコール、コーヒー、お茶などの嗜好品の過剰摂取などが皮膚の敏感さを高めることがあり、結果として痒みを引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事を心がけ、刺激物の摂取を避けることで、痒みの予防につながります。

足の裏が痒いのに何もない場合に行くべき診療

足の裏が痒いけれども皮膚の変化が見られず、痒みが持続したり繰り返したりする、または強い痒みで生活に影響が及ぶような場合は、皮膚科で相談することを検討しましょう。夜間の痒みで睡眠に支障が出るような状況では、早めに受診することが望ましいです。

受診する際には、痒みの始まった時期や、痒みを感じる状況、皮膚に現れた変化の詳細を医師に伝えましょう。皮膚の状態は時間の経過と共に変わることがあるため、変化を記録しておくと、診断の手助けになります。

足の裏の痒みは、見た目には何も異常がないように見えても、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。自己判断で対処せず、正確な原因を知るためにも皮膚科を受診することをおすすめします。

まとめ

足の裏が痒いけれど見た目に異常が何もない場合、蒸れや乾燥、ストレスが主な原因で痒みを引き起こしている可能性が考えられます。また、皮膚掻痒症による可能性もあり、皮膚搔痒症の原因としては皮膚のバリアー機能の問題のほか薬剤の影響などが考えられます。そのため、まずは皮膚を清潔な状態に保つこと、保湿などを行いしっかりケアをすることが大切です。

また、糖尿病や慢性腎不全、肝臓や胆嚢の疾患や内臓の悪性腫瘍などが原因で痒みを引き起こしている可能性もあります。痒いだけで皮膚には何も異常がないから大丈夫だと自己判断せず、自分で行うケアではなかなか症状が改善されなかったり、痒みが強くて掻いて皮膚の状態を悪化させてしまったりする場合は、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。

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