脇の下を触ってしこりを見つけたら不安になる方もいるでしょう。今までなかったところにしこりを感じたら、不安になるのも無理ありません。では、どのような原因でしこりができるのでしょうか?
今回は、脇の下に痛くないしこりができる原因・検査・治療方法を解説します。脇にしこりができている方やしこりの治療の方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
脇の下に痛くないしこりができる主な原因
しこりの発症部位はさまざまで、脇以外にも出現します。また、しこりは大きさ・硬さ・痛みの有無も異なります。種類も悪性と良性にも分かれており、治療法もさまざまです。ここでは、脇の下にできた痛くないしこりに焦点を絞り、考えられる主な原因を4つ紹介します。
- 脂肪腫
- 副乳
- 乳がん
- 悪性リンパ腫
脂肪腫
脂肪腫とは、脂肪の固まったもので良性の腫瘍です。皮膚の下に生じる軟部組織腫瘍の中では最も多く見られます。発症しやすい方は40〜50歳代の方で、1〜10センチほどの大きさです。
触るとやわらかく、痛みを感じることは少ないことが特徴であり、しこり以外の自覚症状はありません。ただし、血管を巻き込んでいる血管脂肪腫は痛みを伴うことがあります。
脂肪腫が発生するメカニズムは不明ですが、肥満・高脂血症・糖尿病の方に生じやすい傾向があり、遺伝性疾患に関連した脂肪腫もあります。いずれの脂肪腫も自然治癒することはなく、時間とともに大きくなることが多いです。
稀ではありますが、悪性腫瘍に変化することがあるため、日々の観察でしこりが急に大きくなったと感じた場合は早めに病院へ受診してください。
副乳
通常、人間の乳房は左右に一つずつありますが、別の場所にできた乳房を副乳と呼びます。副乳も良性の腫瘍の一つです。脇の下から乳頭を通って太ももの内側までの線上であれば、副乳が出現する可能性があります。ほくろのような大きさから、乳房のように徐々に膨らむ副乳もあるでしょう。
副乳は女性の1〜6%に出現するとされており、ホルモンの影響で月経周期や更年期などの影響を受けやすいことが特徴です。左右対称に見られたり、片方だけに見られたりします。脂肪腫と同様に、副乳も稀に悪性腫瘍になることがあるため注意しましょう。
乳がん
乳がんとは、乳腺の組織にできるがんです。乳がんを発症すると、しこりが発症することが多く見られます。ほかにも、次のような症状が出現します。
- 乳房にくぼみができる
- 乳頭・乳輪がただれる
- 乳房の形が非対称になる
- 乳頭から分泌物が出る
脇の下にしこりができて、かつ乳がんの発症が考えられる場合は、リンパ節へ転移しているかもしれません。臨床的に異常がなくても、リンパ節に転移していることがあります。「潜在性乳がん」と呼ばれ、進行が早いため早めの受診と治療が大切です。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、免疫に関わる白血球の中のリンパ球ががん化する血液がん(造血器腫瘍)です。悪性リンパ腫は、次のような種類があります。
- B細胞リンパ腫
- T細胞リンパ腫・NKリンパ腫
- 非ホジキンリンパ腫
脇にはリンパ節が集まっており、リンパ腫になるとリンパ節の多い部分にしこりが生じます。ほとんどの場合、痛みは生じません。
しかし、急激にしこりが大きくなったり、腫れてきたりすると痛みが生じることもあります。がんは早期治療が大切ですから、早めに病院へ受診しましょう。
脇の下にしこりができた場合に行われる検査
脇にしこりができた場合には、専門の医師による触診・視診・超音波検査が行われます。
また、超音波検査でしこりの悪性が疑われた場合には、病理検査が必要になる場合もあるでしょう。ここでは、検査の内容について詳しく解説します。
- 触診・視診
- 超音波検査
- 病理検査
触診・視診
まずはしこりを直接触る触診や、目で確認する視診が行われます。観察するポイントは、しこりの大きさ・硬さ・可動性の有無などです。
また、乳がんの可能性がある場合は、乳房の形や乳頭からの分泌物の有無などの観察も一緒に行います。自分自身では見つけられなかった小さなしこりが発見されることもあります。男性の医師に抵抗がある方は、女性の医師が担当している病院を探してみましょう。
超音波検査
超音波検査とはエコー検査とも呼ばれており、超音波の反射の様子を画像で確認する検査です。超音波を使用することで、しこりの性状や大きさなどの確認が可能です。
しこりが悪性の可能性があるときは、脇の下の周囲にあるリンパ節を調べることで、がんの有無やリンパ節への転移の有無を確認することもできます。超音波検査では、悪性の腫瘍は画像内に黒く描出されます。
病理検査
病理検査とは、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる検査です。がんの有無などを判断するときに行います。病理検査は、細胞診と組織診に分けられます。
医師の判断で片方、もしくは両方の検査が必要になることもあるでしょう。細胞診とは、超音波検査などの画像を用いた検査で、しこりに細かな針で注射して細胞を採取して調べます。病変部から分泌物が出ていれば、分泌物に含まれている細胞を調べることも可能です。
一方で、組織診とは、細胞診よりも太い針でしこりの部分を刺したり、手術で組織を採取したりして組織に異常がないか調べます。組織診には、局所麻酔を使用するため痛みは感じません。また、しこりの原因となっている病気を確定するときに、組織診を行うこともあります。
脇の下に痛くないしこりができた場合は医療機関を受診すべき?
脇の下の痛みがないしこりは、必ずしも悪性であるとは限りません。自分で判断するのではなく、専門の医師に診察してもらうことがおすすめです。病院を選択する際には、以下の診療科があるクリニックや病院を探すとよいでしょう。
- 皮膚科
- 乳腺外科
- 形成外科
しこりは長期的な観察が必要になることもあるため、自分が安心して診察をしてもらえる病院を選択することが大切です。
また、日々のセルフチェックも大切です。鏡を使用したり、お風呂や横になっている状態で手で触ってみたりして確認をしましょう。
しこりの確認は乳がんの早期発見にもつながるため、継続して行う習慣をつけておくことをおすすめします。
脇の下にしこりができた場合の治療方法
脇の下のしこりは、発症した原因により治療法が異なります。良性の場合は命の危険はないため、必ずしも治療を行う必要はありませんが、しこりが大きくなると見た目が気になることもあるでしょう。
しこりが自然に小さくなることはほとんどないため、今後の影響も踏まえて治療を検討することもおすすめです。悪性の場合は命の危険があるため早期治療が必要です。最後に、しこりの原因ごとの治療法について解説します。
脂肪腫の場合
脂肪腫の治療は、手術による摘出です。脂肪腫は良性腫瘍のため、経過観察でも問題はありません。しかし、見た目に影響しやすいため手術を希望される方も多くいます。手術をする場合、傷痕を考えると小さいうちに手術することがおすすめです。
手術では、しこりの直径に沿って切開し、周囲の組織を傷つけないように注意しながら摘出します。脂肪腫を摘出した部分は空洞になって血が溜まりやすいため、予防のために止血は十分に行います。治療後は脂肪腫が再発することはほとんどありません。
副乳の場合
副乳の治療では、副乳の組織を取り除く手術を行います。患者さんが子どもの場合は全身麻酔で行うこともありますが、成人している場合は局所麻酔を使用し1時間ほどで治療が可能です。副乳も基本的には良性腫瘍のため、治療していない方もいるでしょう。
しかし、副乳も大きくなれば見た目に影響が出る可能性も少なくありません。組織を切除できれば、しこりの症状は消失します。しこりが気になる際には、小さいうちに手術することをおすすめします。
乳がんの場合
乳がんの治療は、手術による外科的治療・放射線治療・薬物(抗がん剤)療法などです。がん細胞が乳管内、もしくは小葉と呼ばれる部位にとどまっているがんは非浸潤がんと呼ばれています。非浸潤がんは適切な治療を行うことで転移を防ぐことができ、再発率も低い傾向です。
一方で、乳管や小葉を超えて周囲に広がっている乳がんは浸潤がんに分類されます。リンパ節へ転移があれば、ほかの部位にがんを発症する可能性が高くなるでしょう。
いずれの乳がんでも、乳房やリンパ節の摘出手術をすることを基本としています。がんの状態によっては先に抗がん剤治療を行うこともあります。
乳がんは、自分でも見つけられるがんです。日々のセルフチェックはもちろんですが、定期的な乳がん検診も忘れずに行うことが大切です。
悪性リンパ腫の場合
悪性リンパ腫の治療は、薬物(抗がん剤)療法・放射線治療・造血幹細胞移植などになります。治療の中心となるのは、薬物療法です。抗がん剤を注射・点滴・内服のいずれかの方法、または併用して複数の種類の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。薬物療法と放射線治療で、体内のがん細胞を破壊・消滅させ完治を目指します。
治療後は骨髄機能を改善・回復させるために、造血幹細胞移植を行うこともあります。ほかにも治療法はありますが、悪性リンパ腫の種類や病気の進行度により治療方針は異なります。そのため、治療する際には正確にリンパ腫の状態を把握することが必要です。
まとめ
脇の下にできた痛くないしこりの原因・検査・治療方法について解説しました。
しこりの多くは、脂肪腫や副乳のような良性の腫瘍です。しかし痛くないしこりの中には悪性腫瘍が隠れている場合もあります。
自分の体の変化を早期発見するためにも、日々のセルフチェックを行っていきましょう。
しこりを見つけても、過度に不安を感じる必要はありません。しこりを発見したら自分で判断するのではなく、皮膚科や乳腺外科などの専門の医師に診察してもらうことが大切です。
参考文献