手のひらのしこりの原因としてガングリオンという疾患が一般的ですが、他にもさまざまな疾患が考えられます。この今回は、手のひらのしこりが痛む原因や、ガングリオンをはじめとする他の疾患について詳しく解説します。
手のひらのしこりを押すと痛い原因はガングリオンの可能性がある
手のひらにしこりができて押すと痛みを感じる場合は、ガングリオンという疾患が考えられます。ガングリオンは手のひらや手首にできる腫瘍です。ここでは、ガングリオンの特徴や原因、診断、治療法について詳しく解説します。
ガングリオンとは
ガングリオンは手首や手のひらにできる液体が溜まった嚢胞で、一般的には良性腫瘍です。この嚢胞は手の甲の手の関節や腱の近くに生じやすく、しこりの形で皮下に突出することがあります。
症状
ガングリオンの症状には、手のひらにしこりができること、特に押すと痛みや痺れを感じることが挙げられます。時にはしこりが動いたり膨らんだりすることもあります。痛みやしこりの大きさには個人差があります。
原因
ガングリオンの正確な原因は不明ですが、一般的には軟骨や靭帯の近くにできるため、関節や腱の周囲の組織に負担がかかることで、液体が溜まり嚢胞が形成されるためと考えられています。また、若い女性に多く発生するともいわれています。
診断方法
ガングリオンは通常、医師による触診で診断されます。必要に応じて超音波検査などの画像診断が行われる場合もあります。これにより、ガングリオンの形状や位置、周囲の組織との関係を詳しく確認することが可能です。
治療方法
ガングリオンは、痛みや痺れといった症状がない場合は自然に縮小して消失することもあり、経過観察でも問題ありません。症状が著しい場合や日常生活に支障をきたす場合は、注射針で穿刺し内容物を吸引・排出する治療が行われることもあります。また、治療後は再発することもあり、再発が繰り返される場合は手術を行うこともあります。
手のひらのしこりを押すと痛いときに疑われるその他の疾患
手のひらにしこりができ、それが痛みを伴う場合、ガングリオン以外の疾患も考えられます。ここでは、手のひらのしこりが痛い原因として疑われるその他の疾患について解説します。
- 手根管症候群（しゅこんかんしょうこうぐん）
- 軟部腫瘍（なんぶしゅよう）
- 腱鞘巨細胞腫（けんしょうきょさいぼうしゅ）
- ドケルバン病（狭窄性腱鞘炎：きょうさくせいけんしょうえん）
- 母指CM関節症
- 骨肉腫
手根管症候群（しゅこんかんしょうこうぐん）
手根管症候群は、手首の中の神経が圧迫されることで引き起こされる疾患です。手首や手のひらに痛みやしびれを引き起こし、手首を長時間使用する仕事や関節炎などが原因となることがあります。手根管症候群の症状は、しびれや痛み、手のこわばり感などがあります。
治療法には手首を安静にし、圧迫を緩和することが重要で、手術が必要な場合もあります。手根管症候群の治療法は症状の程度や患者の状態によって異なるため、医師の診断に従いましょう。
軟部腫瘍（なんぶしゅよう）
軟部腫瘍は、柔らかい組織でできる腫れやしこりの総称です。これには、脂肪腫、筋腫、血管腫などが含まれます。これらの腫瘍は一般的に良性であり、痛みや圧迫感を引き起こすことがあります。軟部腫瘍の原因は、遺伝的要因や怪我などによる外傷が関与することがあります。
診断は、主に症状や腫瘍の特徴を基に医師が行い、確定するために組織を一部もしくは全部取り顕微鏡で検査します。一般的には、軟部腫瘍は治療が必要な場合は手術によって摘出されます。しかし、しこりが小さい場合や症状が軽度な場合は経過観察が行われることもあります。経過観察中も、定期的な医師の診察を受けることが重要です。
腱鞘巨細胞腫（けんしょうきょさいぼうしゅ）
腱鞘巨細胞腫は、手のひらや指の腱鞘内にできる良性腫瘍です。痛みやしこりを伴うことがあります。
この腫瘍の原因は明確ではありませんが、腱鞘内の炎症や異常な成長が関与していると考えられています。手首や指を過度に使うこと、あるいは怪我や炎症が引き金となることもあります。
腱鞘巨細胞腫は一般に良性であり、しこりが小さい場合は自然に消失することもありますが、大きな腫瘍や痛みがひどい場合は手術による摘出が必要となることがあります。
ドケルバン病（狭窄性腱鞘炎：きょうさくせいけんしょうえん）
ドケルバン病は、手のひらや指の腱鞘が狭窄し、炎症を起こす疾患です。手指の動きが制限され、しこりができることがあります。この病気の主な原因は、手のひらや指への過度な負荷や遺伝的要因によると考えられています。手のひらの腱鞘が狭くなることで、手の動きが制限され、しこりができることがあります。
ドケルバン病は進行性の疾患であり、早期に診断と適切な治療を行うことが重要です。治療法には、炎症の抑制や手術による腱鞘の拡張が含まれます。症状の早期発見と治療によって、病気の進行を遅らせることができます。経過観察や専門の医師の指導の下で、適切な治療を行いましょう。
母指CM関節症
母指CM関節症は、母指の手根骨周囲に痛みや腫れを引き起こす疾患です。この関節は母指の基部の骨と手のひらの手根骨の間にあり、母指の動きを可能にしています。母指CM関節症は、母指の関節の軟骨の摩耗や破損が原因で発症し、加齢や関節の過度な使用によって進行します。
症状には、母指の痛みや腫れ、特に動かすときに痛みが出ます。また、母指を使って物をつかむ動作に痛みが伴うこともあります。
診断は、症状の詳細な評価と画像検査によって行います。治療法には、非ステロイド性抗炎症薬や物理療法（湿布やエクササイズ）、関節注射、場合によっては手術が含まれます。手術は、関節軟骨の修復、置換、または除去を行うことがあります。
骨肉腫
骨肉腫は、手のひらに痛みやしこりを引き起こす悪性腫瘍です。骨肉腫は通常、骨や軟部組織で発生し、手のひらにも現れることがあります。痛みやしこりは進行した段階で現れることもあり、他の疾患と比べて比較的まれですが注意が必要です。
診断はX線、MRI、CTスキャン、生検などの検査を通じて行われます。これらの検査は病変の位置や大きさを評価し、骨肉腫かどうかを確定します。
治療法には手術、放射線療法、化学療法などがあります。手術では、腫瘍の部分的または完全な摘出が行われます。放射線療法は、手術後の再発のリスクを減らすために行われることがあります。
化学療法は、腫瘍を縮小させたり、転移を防止したりするために行われます。骨肉腫の治療は、病気の段階や患者の健康状態に応じて個別に計画されます。早期の診断と適切な治療は、患者の生存率と予後を改善するために重要です。
手のひらのしこりを押すと痛いときの対処法
手のひらにしこりができて痛みを感じる場合、間違った対処法をすると痛みが悪化したり、症状が長引くことがあります。ここでは、痛みを軽減するための適切な対処法について解説します。
- 押さないようにして安静にする
- 皮膚科または整形外科を受診する
押さないようにして安静にする
手のひらのしこりが痛みを引き起こす場合、しこりを押さないようにして安静にすることが大切です。日常生活で手を使う動作を控え、しこりを刺激しないように注意しましょう。
手を安静にしていることで痛みが和らぐことがあります。痛みが強い場合は、痛み止めの薬や湿布を使うことも有効です。
皮膚科または整形外科を受診する
手のひらのしこりが痛い場合、原因や症状の程度に応じて皮膚科または整形外科を受診することを検討しましょう。専門知識を持った医師が診断を行い、適切な治療法を提案してくれます。痛みがひどい場合や症状が長期間続く場合は、早期に受診することが大切です。
病院へ行く時の目安
病院へ受診するかどうかの目安は、次のものを参考にしてください。
- 痛みが我慢できないほど強い場合や、日常生活に支障をきたしている
- しこりが大きくなったり、急激に成長している
- 痛みやしこりが数日から数週間以上続いている
- 痛みやしこりに加えて、赤み、腫れ、発熱などの症状がある
まとめ
手のひらのしこりが痛い原因は、ガングリオンや他のさまざまな疾患によるものがあります。中でもガングリオンは身近にみられる原因であり、通常は良性の腫瘤ですが、痛みを引き起こすことがあります。
その他の可能性としては、手根管症候群、軟部腫瘍、腱鞘巨細胞腫、ドケルバン病などが挙げられます。これらの疾患は早期に診断され、適切な治療が行われることが重要です。
手のひらのしこりが痛むときには、自己診断を避け、医師の診察を受けることが大切です。適切な対処法や治療法を受けることで、症状の軽減や改善が期待できます。手のひらのしこりが痛みを引き起こす場合は、早めに皮膚科や整形外科を受診し、医師の指示に従って適切な処置を行いましょう。
参考文献
