冷やしていないと痛い指のやけどの対処法は?治療法を医師がわかりやすく解説

冷やしていないと痛い指のやけどの対処法
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

日常的によくするけがの一つにやけどがあります。ちょっとした不注意で、熱いものを触ったり、熱いものをこぼしたりして痛い思いをした経験は誰にでもあるでしょう。

やけどは軽度でも激しい痛みを伴い、場合によっては数日間痛みが続くことも”あり、非常に厄介なものです。今回は、指のやけどの対処法と治療法について、やけどの種類ごとに解説します。

目次

冷やしていないと痛いほどの指のやけどの概要

冷やしていないと痛いほどの指のやけどの概要

やけどをした直後、指を水で冷やしていても、冷やすのを止めると痛みが再び現れます。痛みが和らぐまで冷やすため、水道の蛇口を離せなくなることもあります。ここでは、やけどの基礎知識について解説します。

やけどとは

やけどは、医学的に「熱傷(ねっしょう)」とも称され、熱源により皮膚や粘膜が損傷する外傷を指します。

やけどができる原因と種類

日常の中で頻繁に見られるやけどは、さまざまな種類に分けられます。

温熱やけど

高温の物体や物質に触れることで生じるのが温熱やけどです。この種類には、熱湯や高温の油、アイロン、ストーブ、蒸気によるものが含まれます。

特に子供は、花火や炊飯器、ポットの蒸気でやけどをすることがあります。また、低温のもの(40〜50℃)に長時間触れることで生じる低温やけどもこのカテゴリに属します。低温やけどはやけどになったタイミングでの見た目よりも、後々に深刻な状態になることがあるので、必ず医療機関で受診するようにしましょう。

電気やけど

電流の流れによって皮膚や体内組織が損傷するのが電気やけどです。 高電圧の接触は特に危険で、家庭の電気機器にも注意が必要です。

小さな子供は、電気コンセントや延長コードを無意識に触れたり、口に入れることがあったりするため特に注意が必要です。雷の直撃によるやけどもこのカテゴリに含まれます。 電気やけどは見た目の傷だけでなく、心臓や神経に深刻なダメージを与えることがあるので、速やかな医療処置が不可欠です。

化学やけど

化学物質による傷害は、原因となる物質の種類によって症状が大きく異なります。酸は皮膚に水疱を生じさせたり、細胞組織の壊死を引き起こしたりるすことがあり、アルカリはタンパク質を溶解するため、深部の皮膚組織まで損傷する可能性が高まります。

また、さまざまな化学物質が化学やけどの原因となることが知られており、取り扱いには十分な注意が必要です。

  • 酸、硝酸、塩酸、酢酸など
  • アルカリ:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど
  • 腐食性芳香剤:フェノール、クレゾール、ベンゼンなど
  • 脂肪化合物:灯油、石油ベンジン、ホルムアルデヒドなど
  • 金属とその他化合物:ナトリウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなど
  • 非金属とその他化合物:リン、硫化水素、塩化硫黄など

放射線やけど

放射線は、その高いエネルギーにより皮膚や組織を傷つける可能性があります。長時間または繰り返しの放射線曝露は、皮膚の炎症や壊死を引き起こすことがあるため、放射線治療やX線検査の際には、曝露時間と回数を適切に管理することが重要です。

やけどの症状

やけどは、熱が皮膚を侵す深さや広さで損傷の状態や症状が異なってきます。やけどの深さや広さが深くなったり、広くなったりするほど重症になります。

深さ

熱湯などの熱いものに触れると、皮膚が赤くなって痛みます。熱から離れても、触れた部分の温度は上がり続けるので、熱傷が皮膚の奥へ広がっていきます。冷やすまでに熱が皮膚を進んだ深さで、どの程度の熱傷かが表されます。

  • Ⅰ度熱傷:皮膚の表面だけのやけどです。やけどをした皮膚の表面が赤くなり痛みがありますが、数日で治り、傷跡も残りません。
  • Ⅱ度熱傷:皮膚の表皮から真皮までのやけどで、水ぶくれができます。深さによって二つの種類に分かれます。浅いものを浅達性Ⅱ度熱傷といい、皮膚が赤くなり、水ぶくれができ、痛みがあります。水ぶくれが破れると傷跡が残ります。病院で適切な処置をすれば、1〜2週間で治り、傷跡も残りません。深いものは、深達性Ⅱ度熱傷で、皮膚は赤くなったり、紫色になったりし、痛みもあります。病院で適切な措置を受けても、治るのに1か月以上かかります。傷痕や引きつれが残ることが多いです。
  • Ⅲ度熱傷:皮膚の表皮や真皮を超えて皮下組織まで炎症が及んだやけどです。神経も血管も損傷しているので、皮膚の表面が黒色か褐色または白色となり、水ぶくれはできず、痛みもありません。皮膚のすべてが熱に侵されるので入院して治療することになります。治癒するのに非常に時間がかかり、外科的治療が必要となってきます。傷跡やひきつれが残り、体に障害がでることもあります。

広さ

体の表面積の何パーセントがやけどになっているかで、やけどの広さを表します。広さの計算には、「9の法則」というものを用いて計算します

頭部・上肢は9%、胴体前面・胴体後面・下肢をそれぞれ18%として計算します。子どもでは5の倍数とする「5の法則」に基づいて上肢10%、胴体前面・胴体後面・下肢15%、頭部20%として計算します。

やけどがとびとびになっている場合は、てのひらの大きさを1%として計算します。深度Ⅱ以上のやけどを大人で体表面積の20%以上、子どもで体表面積の10%以上負った場合は、重症とみなされて合併症を引き起こすおそれがあります。

  • Ⅱ度熱傷で体表面積10%以上の場合は中等症とされます。
  • Ⅱ度熱傷で体表面積20%以上の場合は重症とされます。
  • Ⅲ度熱傷で体表面積3%以上の場合は中等症とされます。
  • Ⅲ度熱傷で体表面積10%以上の場合は重症とされます。

指のやけどの痛みを抑えることはできる?

指のやけどは、痛みを伴いがちで、冷やしてもなかなか痛みがおさまらないことがあります。ここでは、早く適切に痛みを抑える方法について解説します。

痛みの原因

痛みの原因は、皮膚の近くに走る神経が影響しており、この神経が熱を感知することで痛みが生じます。

痛みを抑える方法

このように痛みは熱が神経に伝わることで、痛みを感じます。やけどしたところを十分に冷やすことで症状の進行や痛みを軽減することができます。

指をやけどした際の対処方法

指をやけどした際の対処方法

続いては、指をやけどしたときにどのような対処をしたら良いのか、やけどの段階に応じて解説します。

即時の対処方法

やけどをしたら、すぐに常温または少し冷たく感じる温度の水で指を冷やしましょう。冷やす時間の目安は痛みが治まるまでの15〜20分ぐらいです。

手足のやけどの場合は、1時間程度冷やします。痛みがやわらげば大丈夫です。冷やすときは服の上から冷やします。

服を脱がすと、水ぶくれが破れたり、皮膚が服に付いて剥がれたりする可能性があるため、痛みが悪化し、治癒に時間がかかることがあります。

家庭での簡単な対処法

家庭でのやけどの場合は、蛇口やシャワーを使って、流水を優しく患部に当てて冷やすのが最も適切な方法です。痛みが治まったら、やけどをした患部を観察します。

みずぶくれがある場合は重症度が高く、可能な限り皮膚科へ受診するようにしてください。水ぶくれは、やけどの傷の保護をしているので破れないように注意することが大事です。

家のように水道の蛇口やシャワーで冷やせない場合は、容器に水をためてその中で指を冷やすようにすると良いでしょう。皮膚に保冷剤を直接当てると凍傷になってしまう可能性があるため、保冷剤をタオルなどに包んでから皮膚に当てるようにしてください。

病院で受けられる対処法

やけどをしたときは患部を冷やしておけば大丈夫と思いがちですが、場合によっては病院を受診したほうが良いこともあります。軽いと思っていても意外と重症になっている場合もあります。

水疱ができたときや痛みがなかなかおさまらないときは、軽度のやけどでも救急科、麻酔科、形成外科、皮膚科を受診するようにしましょう。やけどの跡が残ったり、皮膚がひきつれを起こしたりすることがあります。この場合、水ぶくれを破かないようにし、消毒薬を使ったり軟膏(ワセリンなど)を塗ったりしないようにしましょう。病院での治療の妨げになることがあります。

また、やけどの範囲が体表面積の30%を超える場合は、速やかに救急科、麻酔科、形成外科、皮膚科の医師がいる総合病院で治療を受けてください。やけどの範囲が広いと熱中症を起こし、生命に危険が及ぶ場合があります。

指のやけどの治療方法とケア

指のやけどの治療方法とケア

続いて、指のやけどの病院での治療方法とケアについて解説します。

比較的浅いやけどの場合

比較的浅いやけどの浅達性Ⅱ度熱傷の場合、患部を冷却して洗浄を行い、軟膏を処方する「保存的治療法」が用いられます。一般的に1〜2週間で完治します。

比較的深いやけどの場合

比較的深いやけどの深達性Ⅱ度熱傷の場合、熱傷部位の湿潤環境を保ちつつ感染を予防するために洗浄・軟膏による治療が行われ、治療には4週間以上かかります。

深刻なやけどの場合

深刻なやけどであるⅢ度熱傷の場合は、入院して皮膚移植を行う「外科的治療法」が用いられます。自然治癒にはかなりの時間を要し、治療には1か月以上かかります。

まとめ

やけどの処置は、速やかに冷やすことが最も重要です。やけどは重症化する可能性がある症状であり、その診断は難しいことがあります。痛みが和らいだら患部を注意深く観察し、水ぶくれの有無や患部の色などを確認し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

また、やけどを予防するためには、生活環境を見直すこともお勧めします。やけどは主に家庭で発生することが多いため、台所のコンロ周りの整理整頓や、調理時に火の取り扱いに特に注意することが必要です。

特に、子供がいるご家庭では、火の近くに近づけないように十分なガードを施すことや、アイロンなどを放置しないようにするなど、特別な注意が必要です。

参考文献

  • やけど(熱傷)|一般社団法人 日本創傷外科学会 一般の皆様へ
  • やけど(熱傷)|日本形成外科学会
  • やけど Q3 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
  • この記事を監修した医師

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