粉瘤ができる原因はストレスが関係する?治療法・予防方法を医師がわかりやすく解説

粉瘤ができる原因はストレスが関係する
この記事を監修した医師

竹内 想 医師

名古屋大学医学部附属病院

医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務。

粉瘤(ふんりゅう)という言葉を聞いたことがありますか? 粉瘤は突如として皮膚の下に現れる小さなしこりで、実は多くの人が一度は経験する皮膚のトラブルです。

今回は、粉瘤が何であるか、どのように治療されるのか、そして予防するためには何ができるのかについて詳しく解説します。また、「ストレスが原因?」という疑問についても解消します。

皮膚の健康は全身の健康に密接に関連しています。だからこそ、粉瘤について知っておくことは、自分自身の健康管理にも役立つはずです。粉瘤の治療から予防まで、詳しく見ていきましょう。

目次

粉瘤とは

粉瘤とは

まずは粉瘤が何であるか、その特徴と種類について詳しく説明します。

粉瘤の定義

粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の表面近くにできる 良性の腫瘤(しこり)です。アテロームと呼ばれることもあります。通常、粉瘤は特に痛みを感じることなく存在することが多いです。しかし、大きくなると見た目が気になるだけでなく、痛みを伴う場合もあります。そのため、早期に治療することがおすすめです。

粉瘤の症状

粉瘤ができると、最初は 小さなしこりとして皮膚の表面に現れます。先述のとおり、このしこりは多くの場合は特に痛みがありません。しかし、 時間が経つと大きくなる可能性があり、大きくなると痛みを感じることがあります。

しこりの大きさはさまざまで、豆粒程度からゴルフボールほどのサイズまで拡大することがあります。大きくなると、皮膚が張りを感じて 痛みが生じる場合もあります。また、場合によっては皮膚が赤くなる、あるいは熱を持つこともあるため、早めの対処が必要です。

また、粉瘤の皮膚開口部から細菌が侵入したり、粉瘤の袋の外に漏れ出た皮脂や角質が皮膚と触れて異物反応を起こしたりすると、炎症が生じてしまい 炎症性粉瘤と呼ばれる状態になります。炎症性粉瘤は、化膿しつつ痛みや腫れを伴うため、早期の適切な治療が必要です。

粉瘤の種類

粉瘤には複数の種類が存在し、それぞれ特有の特徴があります。

表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)

この種類は、 表皮組織が皮膚内に閉じ込められ、皮脂や角質が詰まる形で出来る粉瘤です。一般的に粉瘤と呼ばれるのはこの種類です。

外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)

主に 頭部に出現する粉瘤で、毛髪の成長に関わる毛根鞘(毛髪の根元を覆う部分)が関与していると考えられます。表皮嚢腫よりも 固くなることが多いです。

多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)

これは 複数の粉瘤が同時に、または短期間で出現する状態を指します。内容物はマヨネーズのような物質で、黄色くドロっとしていますが臭いはありません。

粉瘤の治療法

粉瘤の治療法

ニキビなどと異なり、粉瘤は 自然には治りません。残念かもしれませんが、まずはその事実をしっかりと認識することが大切です。病院での診断と治療が一般的に推奨されています。治療法は複数ありますが、今回は特に「くりぬき法」と「切開法」に焦点を当てて解説します。

くりぬき法

くりぬき法では、粉瘤の表面に小さな穴を開け、中にある粉瘤の袋の内容物を取り出します。その後、内容物がなくなり小さくなった粉瘤の袋を取り出します。この方法の利点は、 穴が小さく目立たないことです。一方で、切開法と比較すると再発の可能性が上がることがデメリットです。

切開法

切開法は、粉瘤自体を切り取って取り除く手術です。局所麻酔後、粉瘤ができている部分に小さな切開を入れ、中の膿や組織を取り出します。切開法では袋を破らないようにして全摘出するので、成功すれば 再発の可能性が少ない点がメリットです。ただし、くりぬき法と比較すると傷跡が目立ちやすいです。

治療後の注意点

治療後の注意点

術後には特に気を付けるべき点があります。主に出血、疼痛、感染には気をつけましょう。具体的には、手術後は激しい運動や飲酒、喫煙、入浴を避けるようにと医師から指示されることが多いです。

出血

手術後は血がにじむ可能性があるため、特に 当日は激しい運動や飲酒、喫煙、入浴は避けましょう。翌日以降は、医師の指示に従ってください。

疼痛

麻酔が切れた後に痛みが出る場合があり、その場合は 痛み止めが処方されることが多いです。

感染

手術した部分が細菌に感染するリスクもあり、 抗生物質が処方されることがあります。

術後の経過

術後3~5日で血がにじむ量が減少し、 2~4週間で傷口が閉じることが多いです。しかし、個々の状況によってはもう少し時間がかかる場合もあります。

以上のケアと注意事項を守ることで、術後のリスクを抑えることができますので参考にしてください。

粉瘤はストレスが原因?

粉瘤はストレスが原因?

粉瘤がなぜできるのか、その原因については多くの仮説がありますが、一つひとつの仮説に対して明確な答えはまだ見つかっていません。ストレスが粉瘤の原因になるという説も一つの可能性として考えられていますが、実際はどうなのでしょうか。

原因ははっきりとはわからない

粉瘤の原因については、医学界でも はっきりとした結論は出ていません。いくつかの要素が複合して影響を与えていると考えられています。遺伝的な要素、ホルモンバランス、皮膚の状態など、多くの要素が絡み合って粉瘤が形成される可能性があります。

ストレスは原因ではない

いざ自分が粉瘤を患った場合、特定の原因がはっきりしないが故にストレスが原因ではないかと疑うこともあるでしょう。ただし、医学的には ストレスが粉瘤の原因である証拠は乏しいです。ストレスは多くの生理的変化を引き起こすことは事実ですが、ストレスが直接的に粉瘤を形成するわけではありません。ただし、ストレスをうまくコントロールすることで、粉瘤のリスクを減らす可能性もゼロとはいえません。

粉瘤の原因と推測されている要素

粉瘤の正確な原因は不明ですが、いくつかの要素が推測されています。

外傷

皮膚にダメージを受けると、その修復過程で粉瘤ができる可能性があります。特に繰り返し同じ場所に外傷がある場合、粉瘤ができるリスクが高まると考えられています。

ウイルス感染

一部のウイルスが皮膚細胞に感染することで、粉瘤が形成される可能性も考えられています。

毛の生え際の詰まり

毛穴や皮膚の油脂が詰まることで、皮膚下に嚢腫ができることがあります。特に毛が多い部位や、汗をかきやすい部位はリスクが高いです。

ストレスと皮膚疾患の一般的な関係性

ストレスと皮膚疾患の一般的な関係性

ストレスと皮膚疾患との関連性は、科学的にも多くの研究が行われています。一般的に、ストレスが慢性的になると、免疫機能が低下し、 炎症反応が促進されることが知られています。これが皮膚にも影響を及ぼす場合があります。

たとえば、 アトピー性皮膚炎や、 口唇ヘルペスなどはストレスが影響するとされています。特にアトピー性皮膚炎は、ストレスが増えると症状が悪化することが多いです。ストレスが高まると、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対する防御力が弱まる可能性があります。

それでは、なぜストレスが皮膚に影響を与えるのでしょうか?ストレスが感じられると、体内で コルチゾールというホルモンが分泌されます。このホルモンが長く多く分泌されると、皮膚の免疫機能が低下し、炎症が起きやすくなります。

しかし、ストレスが全ての皮膚疾患の原因ではありません。ストレスが関与する場合もありますが、それだけが原因であるわけではなく、他にも遺伝的要素や環境要因などが複雑に絡み合っています。

粉瘤ができやすい人の特徴

粉瘤ができやすい人の特徴

粉瘤は誰にでもできる可能性がありますが、特定の条件や生活習慣によって、できやすい人もいます。ここでは、その特徴をについて解説します。

男性

男性は女性よりも粉瘤ができやすいといわれています。 男性ホルモンは皮脂の生成を促進するため、皮脂が過剰になると毛穴が詰まりやすく、粉瘤ができやすくなっている可能性があります。

汗をかきやすい人

汗をかきやすい人も、粉瘤ができやすい傾向にあります。汗と皮脂が混ざることで、毛穴が詰まりやすくなります。特に、 暑い季節や運動をした後は注意が必要です。

ホルモンバランスの乱れている人

ホルモンバランスの乱れは、皮膚の状態にも影響を与えます。特に、女性ホルモンと男性ホルモンのバランスが崩れると、皮脂の分泌が不規則になり、粉瘤ができやすくなります。 生理周期や更年期、ストレス、睡眠不足などがホルモンバランスを崩す一因となることがあります。

粉瘤の原因を作らないための予防方法

粉瘤の原因を作らないための予防方法

粉瘤ができる原因ははっきりしていないため、直接的な予防方法はありません。ここでは、ホルモンバランスと皮膚のターンオーバーに影響を与える要素に注目して、一般的な皮膚疾患の予防方法を説明します。

十分な睡眠時間

睡眠は体全体の回復とリフレッシュに非常に重要な時間です。それは皮膚にとっても同様で、特に夜は 新陳代謝(ターンオーバー)が活発に行われる時間帯でもあります。長い睡眠時間を確保することで、皮膚の健康を維持し、結果的に粉瘤ができるリスクを減らせる可能性があります。

また、短時間の睡眠や不規則な生活は、ホルモンバランスを崩す可能性があります。その結果、皮脂の分泌が不規則になり、粉瘤ができやすくなるかもしれません。目安としては、一晩に 7〜8時間の睡眠を確保することが理想です。

適度な運動

運動は健康維持には欠かせない要素であり、皮膚に対しても多くのメリットがあります。適度な運動によって、 血行が良くなります。これによって皮膚の新陳代謝が促され、健康な皮膚を維持することができます。

しかし、運動には注意点もあります。たとえば、汗をかくことで皮膚の表面に皮脂が溜まりやすくなる場合があります。そのため、運動後はしっかりと シャワーを浴びるなどして皮膚を清潔に保つことが重要です。

バランスのとれた食生活

バランスのとれた食生活を心がけることで、皮膚の健康を促し、粉瘤のリスクを低減するかもしれません。たとえば ビタミンAやビタミンC、鉄分などは皮膚の健康に直接関わっているため積極的に接種すると良いでしょう。また、高脂質、高糖質の食事は皮脂の分泌を促すことがあり、それが粉瘤の原因になる可能性があるため気をつけましょう。

清潔な皮膚作り

皮膚の清潔さは、皮膚疾患を予防する上で非常に重要な要素です。特に、毛穴が詰まると、皮膚内部で細菌が増殖しやすく、粉瘤のリスクが高まります。

日々の洗顔はもちろん、定期的に ピーリングを行うなどして、毛穴の汚れをしっかりと取り除くことが大切です。また、メイク道具も定期的に清潔にするなど、細かいところにも注意を払いましょう。

まとめ

粉瘤の基本的な定義から症状、種類、治療法に至るまで幅広く解説しました。粉瘤は皮膚にできる症状の一つで、治療が必要な場合もあります。

予防についても触れましたが、適度な運動やバランスのとれた食生活、清潔な皮膚作りが基本となります。特に皮膚の清潔さを保つことで、粉瘤ができるリスクを減らすことが可能です。

皮膚の健康は全身の健康にも密接に関わっています。日常生活の中で気を付けるべき点を押さええ、健やかな皮膚を保ちましょう。

参考文献

  • アテローム(粉瘤) Q2 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
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    竹内 想

    東京都

    医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務。

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