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日常的に虫に刺されることってよくありますよね。特に夏場は肌の露出が多く、蚊に刺されて痒い思いをしたり、我慢できずにかきむしってしまったりして、嫌なことこの上ありません。この記事では、そんな不快な虫刺されの痒さの原因や適切な対処の方法について紹介します。
虫刺されで赤い・痒い症状が出る虫の種類
刺されて皮膚が赤くなって痒くなる症状がでる虫には、蚊やダニ、ブヨ、毛虫、ノミなどがあります。虫の種類ごとに原因や症状、対処法、事前の対策について解説します。
ダニが原因の場合
まず、ダニが原因の場合の対処法について解説します。
原因
ダニに刺されると痒くなるのは、刺されたときにダニの唾液が皮膚に入ることで起きるアレルギー反応のためです。アレルギー反応とは、体に異物が侵入するとこれを攻撃し排除しようとする免疫機能のことです。
人を刺すダニには、ツメダニ、イエダニ、マダニがいます。このうち、ツメダニとイエダニは屋内で発生するダニで、マダニは屋外で発生します。
症状
ダニに刺されたことによるアレルギー反応の結果として、炎症が起きて刺された部位が赤く腫れ、うっすらと盛り上がり、痒くなります。アレルギー反応が出て自覚するのに時間がかかるので、刺されてから1〜2日して、赤みが出て痒くなることが多いです。
ツメダニに刺されると、刺された翌日かそれ以降に痒みや腫れが出て、しつこい痒みが1週間以上続きます。イエダニは、ネズミや鳥類に寄生して吸血しますが、人も吸血されることがあり、刺された直後から痒みや赤みなどの症状が現れます。
感染症を媒介する可能性があるため、注意が必要です。マダニは草むらや樹木などに潜んで野生動物に寄生し、吸血しますが、人にも吸血することがあります。
吸血中は麻酔用物質を含む唾液を皮膚に注入するため、刺されていることに気づきにくいです。約7日間取り付いて吸血し、その後、痒みや痛みなどの症状が現れます。
吸血を介して、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳症炎、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの感染症にかかることがあります。
対処法
ダニに刺された場合、痒みや腫れを早く治すためには、ステロイド外用剤(塗り薬)を使用する治療が必要です。ステロイド成分は炎症を強く抑制する効果があり、痒みや腫れなどの症状をすぐに緩和してくれます。
搔き壊してしまった場合は、抗生物質を配合したステロイド剤を使用することもおすすめです。
事前の対策
屋内のダニの場合、部屋や寝具にこまめに掃除機をかけ、部屋の換気をよくし、布団乾燥機を使用するなどして、ダニが繁殖しにくい環境を維持することが重要です。
しかし、それらの方法だけでダニを完全に駆除することは難しい場合もあります。そのため、薬剤や防虫シートを使用して防虫や駆除を行うこともおすすめです。
また、イエダニが存在する場合は、その宿主であるネズミを駆除することが必要になってきます。屋外にいるマダニの場合、帽子や手袋、長袖長ズボンを着用し、肌の露出を最小限に抑えるようにしましょう。虫よけスプレーを使用することも効果的です。
ブヨが原因の場合
次に、草むらや川などに発生するブヨが原因の対処法について解説します。
原因
ブヨによる虫刺されでの痒みと腫れの原因は、刺されたときに皮膚にブヨの唾液が入ることで起きるアレルギー反応です。
ブヨは、体調1~5mm程の丸みを帯びたコバエのような虫です。春から秋にかけて草むらに発生し、ノコギリのような口で皮膚をかじって、出てきた血を吸います。このときに注入された毒性の強い唾液成分が激しいアレルギー症状と炎症を引き起こすのです。
症状
症状には個人差があり、皮膚が赤く腫れあがる人もいれば、小さい赤い腫れ程度になる人もいます。ブヨは皮膚を咬んで出血した血液を吸うので皮膚に内出血ができたり、痒みのある赤いしこりが長く残ったりすることがあります。
対処法
ブヨによる痒みはしつこく、とても痒いのでつい搔きむしってしまいがちですが、掻き壊してしまうと周囲に炎症が広がり、そこから細菌が入ってしまう恐れがあります。
強い痒みや腫れがあるときは、ステロイド外用剤(塗り薬)を使用した方が良いです。ステロイド外用剤を5~6日使用しても改善されないときは、医療機関を受診しましょう。
事前の対策
高原や山間部などの屋外に出かけるときは、できるだけ肌の露出が少ない長袖・長ズボンなどの服装を心がけましょう。ブヨが活発になる朝夕の活動を避けたり、虫よけスプレーを使ったりするのもおすすめです。
ブヨは暗いところを好みます。ブラックやネイビーなどの濃い色の服に寄ってきやすいため、ホワイトやイエローなどの明るい色の服を着るとよいでしょう。
毛虫が原因の場合
野外で遭遇することが多く刺されてやっかいな毛虫の対処法について解説します。
原因
毛虫(ガの幼虫)の有毒毛が皮膚に刺さることによって皮膚炎を起こします。すべての毛虫が皮膚炎を起こす原因となるわけではなく、一部の毛虫が皮膚炎を起こしうる原因となります。
毛虫の一部には体に有毒な毛(毒針毛:どくしんもう)を持つものがあり、風に飛ばされてきた毛に触れたりすることで、皮膚に痒みや痛みなどの炎症を起こすのです。
症状
毛虫の有毒毛が皮膚に触れると、1~2日後に激しい痛みや痒みを伴う赤いブツブツがたくさんできます。患部を掻いたり擦ったりすると毒針毛が他の部位に広がって、皮膚炎の症状が広範囲になることがあります。
これらの皮膚炎の症状は毛虫の毒成分に対するアレルギー反応によって起き、個人差があるため、注意が必要です。
対処法
毛虫に刺されたら、触れたり搔いたりせずに、ガムテープなどの粘着テープで付着した毒毛を取り除きます。次に患部を流水と石鹸でよく洗い流します。
痒みが強いときは、ステロイド外用剤を使用しましょう。ステロイド外用剤を5~6日使用しても症状が改善されない場合は、医療機関を受診してください。 毛虫に刺されて頭痛や吐き気、めまいなどの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するようにしてください。
事前の対策
毛虫に刺されないためには、チャドクガの幼虫の発生時期(5~6月、9~10月)には、サザンカやツバキの木に近づかないようにしてください。草木の手入れを行う際は、長袖長ズボンなど露出を避ける服装を心がけましょう。自宅に毛虫の発生がある場合は、剪定や殺虫剤の散布などで毛虫の発生を防ぐことも大切です。
ノミが原因の場合
日常生活で気になる虫刺されの一つが、ノミによるものです。ペットを飼っている家庭では特に注意が必要ですが、ノミは野生の動物にも生息しており、アウトドア活動中に刺されることもあります。
ここでは、ノミが原因で起きる刺されの症状や対処法について解説します。
原因
ノミは吸血性の小型の昆虫で、人間や動物の血を吸うことで生存しています。特に、犬や猫などのペットを持つ家庭では、ノミの侵入や繁殖が問題となることが多いです。
ノミはペットの体に寄生し、そこで繁殖を繰り返します。また、人間にも刺すことがあり、その際の刺される感じや症状が生じます。ノミは温暖な環境を好むため、夏季や秋口に活動が活発となり、刺されるリスクが高まります。
症状
ノミに刺されると、刺された部分が赤く腫れ上がり、強い痒みを伴うことが多いです。痒みの強さや腫れの程度は人によって異なりますが、繰り返し掻くことで皮膚が傷つき、二次感染のリスクも増えるため注意が必要です。複数の小さな赤い斑点状の刺し跡が一直線に連なる特徴的な模様が現れることもあります。
対処法
刺された場合、まずは刺された部分を清潔な水や石鹸で洗浄しましょう。その後、消毒薬を塗布して感染リスクを減少させることが大切です。
痒みを和らげるためのステロイド外用薬や、抗アレルギー薬の摂取を考慮することもあります。しかし、症状が重い場合や改善しない場合は、専門医の診断を受けることをおすすめします。
事前の対策
ノミに刺されることを避けるために最も有効な方法は、ノミの侵入や繁殖を防ぐことです。ペットを飼っている場合は、定期的なノミ取りのシャンプーや薬を使用しましょう。
また、家の中の清潔を保ち、特にベッドやソファの掃除を徹底することでノミの繁殖を抑えることができます。外出時には、長袖や長ズボンを着用し、ノミの侵入を防ぐことも効果的です。
刺されると赤く・痒い症状が出るその他の虫の種類
刺されると痒くなったり、赤く腫れたりするその他の蚊やムカデ、蜘蛛の対処法について解説します。
蚊
夏になるとよく刺される蚊もいますが、刺されるとすぐに急激な痒みを感じ、赤く盛り上がる発疹が出ます。症状は多くの場合、数時間程度で自然に治りますが、痒みが強いときは、患部を冷やし、ステロイド外用剤を使用します。発熱、めまいなどの全身症状が出た場合は、医療機関を受診してください。
蚊が発生しそうな場所に行くときは、長袖長ズボンを着用し、首周りを覆うなどして肌の露出を減らしてください。また、蚊は色が黒いものを好む習性があるため、黒色の衣服などの着用を避けるのも良いでしょう。虫よけスプレーの使用も効果的です。
蚊の幼虫を発生させないために自宅のベランダの植木鉢の受け皿や排水溝にたまった雨水は、こまめに掃除をしておくことも重要です。窓や網戸、ドアなどをしっかり閉めて、蚊の侵入を防ぎましょう。蚊取り線香や蚊取りスプレーを使用して、蚊を寄せにくくするのも大切です。
ムカデ
ムカデは石や岩、落ち葉の下などに生息し、夜間に活動します。ムカデは人を咬むことはありませんが、気づかずにムカデを踏んでしまったり、触ってしまったりしたときにムカデを刺激して攻撃されることがあります。
ムカデに咬まれるとすぐに毒素の成分で激しい痛みが起こり、赤く腫れ上がります。咬まれた患部を流水で洗い流し、ステロイド外用剤を使って治療します。症状の程度には個人差があります。
頭痛や吐き気などの体調の変化があった場合は、直ちに医療機関を受診しましょう。ムカデが家の中に侵入するのを防ぐためには、窓やドアの隙間を埋めることや床下の環境を改善する、窓やドアを開けっぱなしにしないなどの対策を取ってください。
ムカデは餌となるゴキブリを追いかけて屋内に入ります。薬剤などを使ってゴキブリを定期的に駆除しましょう。屋外で作業するときは、軍手や長靴を着用し、植木鉢の下や庭石の下にムカデがいないか確認することをおすすめします。
蜘蛛
カバキコマチグモやセアカゴケグモなどの毒を持つクモに刺されると、痛みや腫れなどの症状が現れます。これらのクモは、建物の隙間や内部を好むので、サンダルなどを履く際は注意しましょう。刺された際に、そのクモの写真を収めておくと、治療の際に役立ちます。
症状がひどい場合、長引く場合は早めに皮膚科を受診しよう
クモに刺された場合、患部を温水や石鹸で洗い流し、ステロイド外用剤を使用します。ステロイド外用剤を5~6日使用しても改善が見られない場合や痛みがあって腫れがひどい場合は、皮膚科を受診してください。
セアカゴケグモに刺された場合、全身症状が現れることがあります。体調に異変を感じた場合は、直ちに医療機関を受診するようにしてください。
まとめ
虫に刺されないように予防しても、虫に刺されることはあります。刺されたときは慌てずに、適切な方法で対処すれば大丈夫です。
常備薬としてステロイド外用剤を家に置いておくのも良いでしょう。ただし、刺された後の症状は個人差があります。症状が長引く、吐き気やめまいなどの全身症状があるときは、ためらわずにすぐに医療機関を受診してください。
参考文献
アレルギーを知ろう|一般の皆様へ|一般社団法人日本アレルギー学会 虫刺され Q5 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)