足に赤い斑点ができると、何が原因か気になる方は多いでしょう。かゆい場合はもちろん、かゆくない場合にも早く治してきれいにしたいものです。
今回は、足に赤い斑点ができる原因について解説します。身近な炎症から放置しておけない病気まで、考えられる原因を紹介します。赤い斑点が見られる場合に受診すべき診療科についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
足に赤い斑点ができる原因
人の皮膚には赤い斑点(紅斑)ができることがあります。数時間〜数日で消えてしまう軽度のものもあれば、数週間経っても消えないものもあり、不安を感じる方もいるでしょう。
ここでは、一般的に多く見られる3つの原因について解説します。ご自分の症状に近いものがないか確認してみてください。
- 乾燥
- 虫刺され
- かぶれ
乾燥
高温多湿といわれる日本の気候環境では、夏場に肌の乾燥を感じることは少ないでしょう。一方で、冬場は暖房を効かせていると室内が乾燥するため、肌の乾燥を感じる方が増えてきます。そして慢性的に乾燥状態が続くと肌が炎症を起こし、乾燥性湿疹を引き起こすリスクが高くなります。
肌には本来、外部刺激・水分の蒸発を防ぐバリア機能が備わっています。しかし、乾燥状態が続くとバリア機能が低下し肌トラブルを起こしやすくなるため、皮膚に赤い斑点が生じます。
乾燥性湿疹の主な症状は、プツプツとした赤い湿疹をはじめ皮膚のかゆみ、粉吹き、ひび割れなどです。足ではすね、かかとに生じやすく、大人よりも肌が弱い子どもは特に注意が必要です。とはいえ、適切な保湿を心がければ大きな問題はありません。
虫刺され
暖かい季節に多く見られる赤い斑点といえば虫刺されです。正式な病名としては虫刺症(ちゅうししょう)といいます。吸血性の蚊、ダニ、ノミに加え、身体に毒を持つハチ、毛虫、アリなど虫に刺されたことによって起きる皮膚炎の総称です。
虫刺されで赤い斑点が生じるのは、皮膚が虫の唾液や毒液といった異物に対する防御反応を示しているからです。発症タイプは刺激性またはアレルギー性に分けられます。
虫刺されは一般的に腫れとかゆみを伴うことが特徴です。症状は虫の種類によって異なりますが、足に複数の赤い斑点がまとまって生じている時には毛虫の毒針毛が刺さっている可能性があります。無闇に搔くと、毒針毛が擦れて斑点が広がってしまうため注意してください。
かぶれ
何かに触れた後にかゆみやヒリヒリ感をともなう赤い斑点が生じたのであれば、かぶれが原因とも考えられるでしょう。正式には接触皮膚炎といい、身体の外から刺激物質やアレルゲンが皮膚に接触することで発症します。
接触皮膚炎にも刺激性とアレルギー性があり、さらに光線の紫外線に由来する光接触皮膚炎にも分類されます。通常、物質が直接接触した箇所のみに症状が出ますが、全身にまで広がっている方は全身性接触皮膚炎、接触皮膚炎症候群も疑いましょう。
足にできた赤い斑点がかゆい場合に考えられる主な病気
前述した3つの原因に当てはまらなく、赤い斑点がかゆい場合には病気が隠れている可能性があります。かゆみは身体を守る防衛反応であるため、皮膚もしくはそのほかの部位が異常をきたしていることを知らせている状態といえるでしょう。
ここでは、足にできた赤い斑点がかゆい場合に考えられる主な3つの病気について解説します。発症する原因、好発対象などもそれぞれチェックしてください。
- 帯状疱疹(たいじょうほうしん)
- 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
- ジベルばら色粃糠疹(じべるばらいろひこうしん)
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
帯状疱疹とは身体の左右どちらかに帯状の赤い斑点が現れ、神経痛やかゆみを感じる病気です。発症前に皮膚の感覚異常、疼痛といった前駆期が3〜5日間あり、その後赤い斑点・水疱(すいほう)が見られるようになります。約1週間ほど増え続け、患部がかさぶた状になり鎮静化します。
発症する要因はウイルスです。ほとんどの人が持っている水痘帯状疱疹ウイルスの再活性によって引き起こされます。50歳以上の方が多く発症し、80歳までに約3人に1人の割合で経験するという統計が出ています。加齢、疲労、ストレス、そのほかの疾患により免疫が低下することが発症のきっかけと考えられています。
治療法は抗ウイルス薬の内服または点滴が基本です。神経痛が強い患者さんは、鎮痛剤や抗うつ剤の内服を検討します。予防としてワクチンが選択可能です。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
掌蹠膿疱症は、手のひらまたは足の裏を中心に感染によらない無菌性膿疱が多発する皮膚炎です。慢性的に発症を繰り返しているうちに、赤い斑点が硬く角化していく慢性難治性疾患とされています。
足の裏だけでなく、下腿に乾癬様皮疹を伴うこともあります。発症要因として、扁桃腺の炎症や歯科領域の感染ならびに歯科用金属によるアレルギーが挙げられますが、原因不明の症例も多くあります。
30〜50代の中年期に発症のピークを迎えますが、少数ながら小児・高齢者にも発症するケースがあります。日本では男性よりも女性が発症する確率の方が高く、喫煙者が発症する割合が多いのも特徴です。
細菌・金属アレルギーが原因であれば、扁桃摘出手術・抜歯・歯科用金属の除去などが考慮されます。原因不明の症例では、主にステロイド軟膏による外用療法を行い、症状に応じて内服療法をはじめとする治療法が追加されます。
ジベルばら色粃糠疹(じべるばらいろひこうしん)
ジベルばら色粃糠疹はお腹や背中などの体幹または四肢近位に、ヘラルド・パッチと呼ばれる円形〜楕円形の淡紅色の斑点が多発する皮膚炎です。大きさは直径2〜10センチで、辺縁に厚い鱗屑(りんせつ)が付着しています。かゆみはないか軽度のケースが多く、微熱や咽頭痛、リンパ節腫脹が認められることもあります。
症状は7〜10日間出現が続きますが、治療しなくても3〜6週間程度で治癒するのが一般的です。疫学的・臨床的にはウイルスが疑われていますが未だに解明にはいたっていません。患者さんが強く治療を望む場合には、対症療法を行うこともあります。
足にできた赤い斑点がかゆくない場合に考えられる皮膚の病気
かゆみや痛みのような自覚症状がないと、患者さん本人もなかなか発症に気付かないことがあります。かゆみや痛みがないから大丈夫と放置してしまう方も多いでしょう。しかし、かゆみや痛みがなくても病気が隠れている可能性はあります。
ここでは、足の赤い斑点がかゆくない場合に考えられる3つの病気を解説します。
- 薬疹(やくしん)
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- IgA血管炎
薬疹(やくしん)
薬疹は薬剤を内服または注射してから4〜5日、あるいは数年経過した後にアレルギー反応を起こし、身体に赤い斑点が生じる状態のことです。
軽度であれば、症状は身体の一部に左右非対称の赤い斑点が複数見られる程度です。しかし重症化することもあるため、放置するのは非常に危険といえます。重症化した場合は以下のような兆候が見られます。
- 発症が急激で急速に症状が悪化する
- 全身の皮膚に新鮮な発疹・発赤を生じる
- 結膜・口腔・外陰などの粘膜面に発赤・びらんを生じる
- 38~40度の高熱をきたす
- 全身倦怠・食欲不振を訴える
これらを含め薬疹を疑う症状がみられた場合は、すぐに通院中の病院に相談しましょう。
医師の判断により、使用中の薬剤の中止や違う薬剤に変更することもあります。その後、パッチテスト・誘発試験などの検査によって原因薬剤を調査します。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、いわゆる食物アレルギーの中にみられる稀な病気です。ある食物を食べただけでは発症せず、その後の運動負荷によりアナフィラキシー症状が誘発されて発症します。運動量が多くなる10〜20代男子が発症しやすいとはいえ、発生頻度は約12,000人に1人です。
症状は主に広範な赤い斑点・蕁麻疹・血管性浮腫です。また、約70%の患者さんには喘鳴(ぜんめい)・呼吸困難などの呼吸器症状がみられます。
治療はアナフィラキシーショックの治療と同様、エピネフリン注射とともに抗ヒスタミン薬やステロイド薬を使用するのが基本です。発症後、症状が軽度であれば安静にし抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを内服し、2時間ほど経過観察を行いましょう。
ただし、その間に症状が進行すれば、ただちに医療機関を受診する必要があります。アレルギー疾患を抱えている方は特に注意してください。
IgA血管炎
IgA血管炎は、身体の粘膜に存在するIgAという免疫複合体が関与する全身性血管炎です。IgAが皮膚血管壁・腎メサンギウムに沈着することによって生じる、補体の活性化・好中球の浸潤が原因です。また、細菌やウイルス、腫瘍などの環境因子が誘因と考えられています。
四肢に点状紫斑が多発するのが特徴ですが、特に下肢の症状が多いです。さらに、関節炎や関節腫脹といった関節症状、腹痛・嘔吐・下痢などの消化器症状を中心にさまざまな症状をともないます。
好発年齢は3〜10歳で、小児に多い病気です。特別な治療はなく、症状が7〜10日続いた後に無治療で自然治癒することもあります。一般的には安静を保ち、症状に応じて対症療法を行います。軽度の関節炎や腹痛には非ステロイド性抗炎症薬、中等~重症の関節炎と消化器症状には副腎皮質ステロイド療法が有効です。
足に赤い斑点ができた場合は何科を受診すればよい?
足に赤い斑点ができたなら、自己判断で放置せず一度受診してみるようおすすめします。その際、受けるべき治療を遅らせないためにも適切な診療科を受診することが大切です。
ここでは、3つのポイントに分けて受診すべき診療科を解説します。受診を検討される際はぜひ参考にしてみてください。
- 痛みを伴う斑点:皮膚科
- 全身症状を伴う斑点:内科
- 子ども:小児科
痛みを伴う斑点:皮膚科
赤い斑点に痛みが生じている場合、皮膚に強い炎症反応が起こっている可能性があります。原因を突き止めるには、斑点の状態を確認し検査を行う必要があるため、皮膚が専門である皮膚科を受診するのがよいです。痛みやかゆみの有無に関わらず、足に赤い斑点がみられたらまずは皮膚科に相談するようにしましょう。
全身症状を伴う斑点:内科
赤い斑点が全身に見られる、またはそのほかの全身症状が現れている場合は、皮膚の炎症以外に原因があると考えられます。臓器に異常をきたしている恐れもあり、皮膚の診断だけでは正確な情報がつかめません。よって、内科を受診するのが最善です。
子ども:小児科
子どもの足に赤い斑点が生じたら、小児科を受診しましょう。症状が皮膚のみであれば皮膚科でもよいですが、発熱や全身症状などがみられる場合には救急対応が必要となる可能性もあります。相談するのは子どもの診断・治療に慣れた小児科の医師が適任です。
まとめ
足に赤い斑点ができる原因・病気・受診する診療科について解説しました。
赤い斑点は目立ちやすく、特に夏場は足元の露出が多くなるため、皮膚の状態が気になる方も多いでしょう。乾燥や虫刺されのように対処すれば治る場合もあれば、丁寧な治療と対処が必要となる場合もあります。病気によっては、そのうち治るだろうと考えて放置していると重症化する危険性を有します。
気になる症状があれば、一人で悩まず早めに皮膚科など医療機関を受診してください。
参考文献