あざの種類とは?あざの特徴と治療法を医師がわかりやすく解説

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小松磨史

小松 磨史 医師

みずほクリニック

1994年札幌医科大学卒業、札幌医科大学・形成外科入局、1998年札幌医科大学・大学院卒業 医学博士取得、米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)2000年札幌医科大学・形成外科助教、2002年北海道砂川市立病院・形成外科 医長、2005年大手美容形成外科入職(院長歴任)、2014年みずほクリニック開院(院長)

日本形成外科学会・形成外科専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士

人の肌に現れるあざには赤あざ、青あざ、茶あざなどさまざまな種類があり、それぞれ見た目の色や形状、発生する原因によって分類されます。これらのあざは、美容的な問題から健康上のリスクまで、人によってさまざまな影響を与えることがあります。

今回は、これらのあざの種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。

目次

そもそもあざとは?

あざとは、皮膚の一部分が周囲の色と異なる現象を指します。これは、皮膚内部での色素沈着や血管の異常増殖などにより発生します。

色の差異は赤や紫、青、茶色、黒など多岐にわたり、この色の変化は生まれながらにして持つ先天性のものや生後すぐに現れる後天性のケースも多くあります。
皮膚が何らかの影響で傷ついて出血斑が生じた場合も一般的ににあざと呼ばれることがありますが、自然と消える出血斑や色素沈着によるシミは今回、取り扱いません。

また、あざとは医学用語として母斑とも病名に使用されますが、母斑とは皮膚の奇形やそれに基づく良性腫瘍とされており、すべてがあざと同一視されるわけではありません。

あざができる原因

あざは主に皮膚の色素や血管の状態に関連しています。

人間の肌の色は、表皮の最下層である基底層に存在するメラノサイトが生成するメラニン色素によって左右されます。メラニンの量が多いと肌の色は暗い色になり、少なければ明るい色になります。

メラニンが通常は存在しない真皮にまで達した場合、その皮膚は青みがかった色合いを帯びることになります。これは、メラニンが皮膚の深部にあるほど青く、浅い部分にあるほど茶色く見えるためです。

また、あざの形成には血管の役割も重要です。

皮膚の真皮層や皮下脂肪層に多数存在する血管は、栄養や酸素を供給する生命線です。これらの血管が何らかの理由で異常に増加すると血管腫と呼ばれる赤いあざが形成され、血管内を流れる赤血球が含むヘモグロビンにより肌が赤く見えます。

このように、あざはメラニン色素の異常な蓄積や血管の増殖など、皮膚の構造的、生化学的変化によって生じます。これらの要因が組み合わさることで、さまざまな色や形のあざが皮膚上に現れるのです。

あざの種類

あざができる原因について解説しました。続いては、あざの種類について解説します。

  • 赤あざ
  • 黒あざ
  • 茶あざ
  • 青あざ
  • 白あざ(白斑)

赤あざ

赤あざ、医学的に血管腫と称されるものは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンに起因し、皮膚が赤く見える状態を指します。赤あざにはさまざまな種類があり、その形成原因や特徴は多岐にわたります。

生まれつき見られる平らな単純性血管腫や、生後間もなく現れて一時的に成長するイチゴ状血管腫が代表的です。これらは、主に皮膚の浅い部分に位置し、見た目の特徴からも識別可能です。

血管腫には、淡青色を呈する海綿状血管腫や青色の静脈性蔓状血管腫、特定の刺激に反応して痛みを伴うグロムス腫瘍などが存在します。また、赤色で触れると容易に出血する血管拡張性肉芽腫や、老年期に多く見られるルビー色の老人性血管腫など、年齢や外傷後に発生する赤あざもあります。

これらの赤あざは血管の異常増殖や拡張によって形成され、皮膚の健康や見た目に影響を与えることがあります。

黒あざ

一般的にはホクロと呼ばれる、メラニンを作る母斑細胞からなる良性腫瘍を色素性母斑、または母斑細胞母斑といいます。色素性母斑は次のような状態に分けられ、通常型と巨大型を黒あざと呼びます。

  • 黒子
  • 通常型
  • 巨大型

黒あざの治療法には外科的切除や皮膚伸展術、植皮術があり、傷跡が残ることもあります。レーザー治療は傷跡を抑えて治療することができますが、深い部分の色素細胞を取り除くためには複数回の照射が必要です。

手術はがん化のリスクを減らすことができますが、レーザー治療は見た目の改善には一定の効果がある反面、がん化の可能性を排除できません。

黒子

いわゆるホクロの状態で、形状は盛り上がるものもあれば扁平なものもあります。3~4歳頃から発生し、年齢とともに数が増えます。

通常型

通常型は黒あざの一種で、多くは出生時から存在します。あざの表面に硬い毛が生えているものは有毛性色素性母斑と呼ばれます。

巨大型

巨大型も黒あざの一種で、身体や手足など広範囲にみられるあざです。多くは出生時から存在し、悪性化する可能性があるため注意が必要です。

茶あざ

茶あざは表皮のメラニン色素が多いために生じる色素斑で、カフェオレ斑、扁平母斑、ベッカー母斑などがあります。

カフェオレ斑は一般的で、大きなものが6個以上ある場合はレックリングハウゼン病の可能性があります。扁平母斑は生まれつきの色素斑で、見た目はカフェオレ斑と区別がつきませんが、条件によって名前が変わります。特に肩にできるベッカー母斑は思春期に現れることが多い大きな褐色斑で、ざらつきや多毛を伴うことがあります。

治療法には、レーザー治療があります。Qスイッチ・レーザーなどによる短パルスレーザーは茶あざに対して効果が期待できますが、すべてのケースで満足な結果が得られるわけではありません。また、治療後に色が濃くなったり、黒色斑点が現れたりすることがありますが、時間が経つと元の状態に戻ることが多いようです。

成人よりも乳幼児の方がレーザー治療によりよい反応を示しますが、再発する可能性もあります。治療効果は予測できないため、テスト照射から始めることが推奨されます。

青あざ

青あざは、通常は表皮に存在するはずのメラノサイトが真皮に存在し、メラノサイトが作るメラニンが部分的に増加して皮膚が青く見えている状態です。メラニンが皮膚の深い部位に存在すると皮膚は青く見えます。青あざには蒙古斑や太田母斑、青色母斑(せいしょくぼはん)などがあります。

蒙古斑

蒙古斑は、生まれたときにお尻や背中に見られる青あざで、胎児期にメラノサイトが表皮へ移動する途中で真皮内に留まったことが原因と考えられています。

蒙古斑は大半が10歳前後に自然に消えるため小児期のレーザー治療は不要ですが、異所性蒙古斑や成人になっても残る持続性蒙古斑は治療対象となります。治療ではQスイッチルビーレーザー、ヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーなどのレーザー治療であざの除去を目指します。

小児におけるレーザー治療では治療回数が少なくて済むことがありますが、レーザー治療の痛みや全身麻酔のリスクがあります。

太田母斑

太田母斑は生後すぐに発生する「早発型」と、思春期以降に発生する「遅発型」の2つがあります。点状の青あざが顔やおでこ、目のまわりから頬、上唇の領域に限って現れます。

いずれも一度発症すると自然消退しません。治療には異所性蒙古斑と同じくQスイッチルビーレーザー、ヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーなどのレーザー治療が行われます。

適切な治療を数回受けることで色素斑は目立ちにくくなりますが、皮膚の深部にあるメラノサイトにはレーザーが届きにくいため、色調の改善は難しい場合があります。また、太田母斑は思春期に再び色素病変が生じる可能性もあるため、思春期以降の治療が推奨されることもあります。

青色母斑

青あざの一種で、ほくろよりも青みが強く、10mm以下で少し硬く、やや盛り上がっていることがあります。悪性化やリンパ節転移を起こす可能性があるため、経過観察と検査、必要に応じた治療が必要です。治療は切除手術が選択されることが多く、病理組織検査なども重要です。

悪性化する心配がなく小さいものはQスイッチルビーレーザーなどレーザーを用いた治療で経過観察となることもあります。

白あざ(白斑)

白あざ(白斑)は、皮膚の色素細胞が減少または消失することで、皮膚の一部が白くなる病気です。

白あざには、先天性白斑と尋常性白斑の2種類があり、先天性白斑は生まれつき皮膚の色素細胞が減少または消失している状態です。髪や目の色も薄いことが多いようです。

尋常性白斑は、後天的に皮膚の色素細胞が減少または消失する状態です。原因は不明ですが、遺伝や自己免疫疾患などが関係しているといわれています。

先天性白斑

先天性白斑は遺伝や環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられており、髪や目の色が薄かったり、皮膚の一部が白くなったりすることがあります。治療法はまだ確立されていませんが、ステロイド剤や紫外線療法などがあります。

尋常性白斑

尋常性白斑は、メラニン色素の欠如によって皮膚や毛髪が白く変色する自己免疫性の疾患で、皮膚のメラノサイトが破壊されることによって発生します。尋常性白斑は人種や性別を問わずに発症します。

尋常性白斑の正確な原因は解明されていませんが、遺伝的要因、自己免疫反応、環境要因、ストレスなどが関連していると考えられています。また、治療法は先天性白斑と同じく確立されていません。

現在、尋常性白斑に対しては症状の管理や進行の遅延が行われています。

受診の目安

あざの治療の必要性は個々の症例によりますが、よく見える部位にある場合などは治療を検討するために皮膚科で相談してみましょう。生まれつきのあざに対するレーザー治療は保険が適用されることがあり、小さいうちに治療を開始するとより効果が期待できる場合もあります。

青色母斑や色素性母斑(ホクロ)などは、悪性化する可能性を考慮して早期に治療の検討が必要な場合もあるため、注意が必要です。疑われるあざがある場合は、まずは早めに皮膚科で診察を受けましょう。

また、軽度の打撲や怪我によって生じる出血斑だと思っていたら、健康問題が潜んでいたというケースもあります。出血斑が簡単にできたり頻繁に現れたりする場合は、注意して観察してみましょう。次のような状況では、医療機関を受診することを推奨していますので、目安にしてください。

  • あざやホクロ、出血斑が理由もなく突然出てきた
  • あざやホクロが以前よりも大きくなった
  • あざやホクロに痛みやかゆみがある
  • 出血斑が2週間以上治らない
  • あざや出血斑により、発熱や倦怠感、息切れなどほかの症状を発症している

あざの治療方法

あざの種類や原因によって、治療法は異なります。ここでは、さまざまなあざに対する治療法について解説します。

レーザー治療

あざのレーザー治療は、特定の種類のあざや皮膚の色素異常に対して効果が期待できる治療法とされています。

レーザー治療の原理は、選択的光熱作用と呼ばれ、特定の波長の光が特定の色素にのみ吸収されることを利用しています。この方法により、治療対象の色素細胞を破壊しつつ、周囲の健康な皮膚組織にはダメージを与えることなく、あざを薄くすることが期待できます。

あざの種類によっては、Qスイッチ・レーザーやパルスダイレーザーなど、異なる種類のレーザーが用いられます。

たとえば、メラニン色素に富むあざにはQスイッチ・ルビーレーザーが適しており、血管性のあざにはパルスダイレーザーが適しています。治療回数や治療にかかる期間は、あざの大きさや種類、皮膚の反応によって異なりますが、多くの場合、数回の治療を経て徐々に改善が見られます。

また、レーザー治療は短時間ででき、多くの場合は局所麻酔下で行われます。治療後は一時的な赤みや腫れが生じることがありますが、通常は数日から数週間で自然に回復します。レーザー治療のメリットは、非侵襲的でありながらあざを薄くできる点にあります。治療には医師による事前の診断と相談が必要です。

凍結療法

凍結治療はドライアイスや液体窒素を用いてあざの表面を凍らせる方法であり、皮膚に軽い凍傷を与えて組織を壊死させ、色素細胞を減少させるという治療方法です。治療を繰り返すことで新しい皮膚が生成され、あざの原因を取り除くことを目指します。

特に小さな子どもの黒あざの場合、レーザー治療に加え、ドライアイス療法も推奨されることがあります。ドライアイス療法は凍傷により組織を壊死に陥らせて、色素細胞を減して壊死した組織の下から新しい皮膚を再生させる効果も期待でき、黒あざだけでなくシミや肝斑、イボなどの治療にも応用されています。

手術

手術では、病変を切除し、皮膚を縫い合わせたり皮膚を移植したりします。この治療はさまざまな血管病変に対応できるというメリットがありますが、手術中に出血するリスクや、傷跡が残るというデメリットもあります。

そのため、ほかの治療法で効果が見られなかった際の手段として選択されることが多いようです。手術は通常、全身麻酔のもと行われるため、原則として患者さんは入院が必要となります。

外科的手術治療は即効性が高い反面、リスクや後遺症を伴う可能性もあるため、治療を受ける際には医師と十分に相談し、総合的に判断することが重要です。

治療後の注意点

レーザー治療後は、適切にケアすることで疼痛の軽減と回復を促すことができます。治療後の皮膚は軽いやけどと同様の状態にあるため、次の点に注意しましょう。

  • 治療当日はシャワーでさっと洗う程度にし、湯船へ浸かるのは避ける
  • 患部の保護と治療薬の効果を高めるために、傷につかないガーゼや絆創膏を使用する
  • 水ぶくれができた場合は破らずに、できるだけ早く治療を受けたクリニックや近隣の皮膚科や形成外科を受診する

これらの注意点を守ることで、レーザー治療後のあざの回復をサポートし、患部の症状の軽減が期待できます。

まとめ

あざの種類とそれぞれの特徴について解説しました。

生まれつきの先天性のあざは皮膚の色素や血管の状態に関連しており、さまざまな色や形があります。成長とともに消えるあざもあるため、あざの治療の必要性はあざの大きさや場所によります。しかし、青色母斑や巨大色素性母斑など悪性化する可能性があるあざもあるため、注意が必要です。

あざの治療方法にはレーザー治療や凍結療法、手術があり、症状や身体の状態によって治療法が選択されます。生まれつきの先天性のあざを治療する場合は、保険適用での治療が可能なこともあります。気になるあざや色の異常がある場合は、皮膚科、もしくは形成外科を受診して相談してみましょう。

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