ささくれが治らない原因は?対処方法と日常的なケアを医師がわかりやすく解説

ささくれが治らない原因
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

日常生活の中でよく遭遇するささくれ。小さな悩みですが、放っておくと痛みや不便さを感じるものです。ときにはなかなか治らないこともあり、困ってしまう方もすくなくないでしょう。

今回は、ささくれが治らない原因とその対処法、さらには日常でのケアの方法までわかりやすく解説します。手肌の小さな悩みを解消し、日々の生活をより快適に過ごすための参考にしてください。

目次

ささくれが治らない原因

ささくれが治らない原因

ささくれがなかなか治らないのには、複数の原因が考えられます。日々の生活習慣や意外と見過ごしがちな小さな習慣が、手肌のトラブルを引き起こすことも少なくありません。ここでは、その主な原因について解説します。

  • 乾燥により皮膚がひび割れているから
  • 栄養不足だから
  • 外部からの刺激が繰り返されているから

乾燥により皮膚がひび割れているから

皮膚の乾燥はささくれができる要因の1つです。季節の変わり目や冬の寒さは、手肌が乾燥する原因になります。加湿器を使用しても室内の空気の乾燥を完全に防ぐことは難しく、手肌は常に水分を失いやすい状態にあります。また、外出時に手袋を着用するなどの対策を怠ると冷たい空気が直接手肌に触れ、乾燥がさらに進みます。このような環境下では手肌の保護機能が弱まってしまい、微小なひび割れが発生しやすくなり、それがささくれの原因となります。

栄養不足だから

健康な皮膚を維持するためには、適切な栄養素の摂取が欠かせません。現代の食生活では、インスタント食品やファストフードに頼りがちです。これらの食品は必要なビタミンやミネラルを十分に供給しない場合が多く、皮膚の健康を維持するための栄養が不足してしまいます。またこのような食事が続くと、オメガ3脂肪酸など皮膚の柔軟性を保つために重要な脂質も足りなくなるといわれています。

このような栄養不足が続くと皮膚の修復機能が衰えて、ささくれが発生しやすくなります。ビタミンやミネラルも、皮膚を健康に保つ上で重要な役割を果たしています。ビタミンAは新しい皮膚細胞の生成を助け、ビタミンCは傷の修復やコラーゲンの生成に関係しています。これらの栄養素が不足すると皮膚の再生能力が低下し、ささくれが治りにくくなります。

外部からの刺激が繰り返されているから

日常生活での手の使い方によっても、ささくれは引き起こされます。手肌は家事や仕事、趣味など、日々の活動を通じてさまざまな刺激にさらされています。特にガーデニングや料理など手を使う趣味を持つ人は、手肌への刺激が多くなりがちです。洗剤など化学物質による刺激も無視できません。

こういった活動によって手肌が受けるダメージは日々積み重なり、皮膚の表層を微細に傷つけることでささくれが生じます。このような外部からの刺激に対して適切な保護を行わないと、ささくれが頻繁に発生することもある点に十分に注意しましょう。

ささくれの応急処置

ささくれの応急処置

ささくれが発生した際には、適切な応急処置を行うことも大切です。正しいケアを施すことで痛みを軽減し、症状がさらに悪化することを防ぐことができます。ここでは、ささくれに対する基本的な応急処置の方法について解説します。

  • カット
  • 適切な保湿ケア
  • 傷口の保護方法

カット

ささくれができてしまったら、まず最初に清潔なはさみを使用して、余分な皮膚を慎重にカットすることも大切です。ささくれを根元から無理に引き抜こうとすると、思わぬ傷を作ってしまう可能性があります。はさみを使う際は、ささくれを根元に近い側からそっと切り取り、健康な皮膚を傷つけないように注意を払うようにしましょう。

カット後は消毒液などで傷口を清潔に保ち、傷が治ったらハンドクリームや保湿剤で丁寧に保湿しましょう。これにより、カットした部分が乾燥して再び症状がひどくなることを防ぐことができます。

適切な保湿ケア

日頃から手肌を保湿することは、ささくれの予防や発生したささくれの治療の際にも効果的です。保湿剤を選ぶ際は、敏感肌用や無香料のものなど、肌に優しい成分を含んだ製品を選ぶことをおすすめします。

手を洗った後やシャワー後のように、手肌が水分を含んだ状態で保湿剤を使用すると、水分の蒸発を防ぎながら肌をやわらかく保つことができます。

傷口の保護方法

ささくれを処置した後の傷口は非常にデリケートであり、適切に保護することが必要です。絆創膏や医療用の保護テープを使って、傷口を外部からの刺激やばい菌から守りましょう。

また、水仕事をする際には防水性のある手袋を着用することで傷口が水や洗剤に触れることなく、二次感染などを防ぐことができます。また、家事をする際にはやわらかい素材の手袋を着用し、その上からゴム手袋をするという二重の保護を行うと手肌への負担を軽減しながら作業することができます。

ささくれを防ぐための日常ケア

ささくれを防ぐための日常ケア

ささくれは日常的に適切なケアを行うことで、その発生を大幅に減らすことができます。乾燥や外部環境から手肌を守ることが、ささくれ予防の鍵となります。ここでは、日常生活で実践可能なささくれ防止のためのケア方法を詳しく解説します。

  • 手肌の保湿とスキンケアを行う
  • ビタミンやミネラルを摂取する
  • 手を優しく扱う習慣を作る

手肌の保湿とスキンケアを行う

毎日保湿を行うことは、手肌を健康に保つための基本といえます。特に手洗いや入浴後のように手が水に触れた直後は、保湿ケアが特に重要です。

市販されている保湿クリームやローションを選ぶ際には、成分をチェックして肌に優しいものを選びましょう。グリセリン、ヒアルロン酸、セラミドなどが含まれている製品は、肌の水分を保持しやすくします。

また、冬の乾燥する季節や、エアコンの効いた室内に長時間いる場合は、保湿力の高いクリームやオイルベースの製品を使用すると良いでしょう。

ビタミンやミネラルを摂取する

肌の健康を内側から支えるためにはビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などの栄養素が豊富な食品の摂取をおすすめします。これらの栄養素は肌細胞の再生を助け、肌が弾力性を保つことに役立ちます。

にんじんやかぼちゃ、ブロッコリー、アーモンド、サーモンにはこれらの栄養素が豊富に含まれているので、日々の食事に取り入れることで体の内側から手肌をケアすることもできます。

手を優しく扱う習慣を作る

水仕事の際には保護用のゴム手袋を着用し、洗剤を選ぶ際には肌に優しい成分を含むもの、天然成分から作られた製品を選ぶと良いでしょう。

冬の寒い時期や夏の強い日差しの中での活動時には手袋や日焼け止めを使用して、手肌を保護するように心がけることも大切です。

爪をかんだり手を強くこする洗い方など日常的に手肌に負担をかける行為を避けることも、ささくれ予防に有効な場合もあります。優しく手を洗い、乾燥を感じたらすぐに保湿するように心がけましょう。

ささくれが治らないときの対処法

ささくれが治らないときの対処法

ささくれがなかなか治らない場合や症状が悪化する場合には、専門的な対処を検討する必要があります。日常のケアだけでは解決しない深刻な手肌の問題は、どのように対処すればよいのでしょうか?ここでは、専門的な治療や生活習慣の見直しについて解説します。

  • 皮膚科で治療する
  • 生活習慣を改善する

皮膚科で治療する

ささくれが頻繁に発生する、または症状が悪化している場合には、皮膚科を受診することをおすすめします。保湿剤の処方や、栄養不足が原因であればサプリメントの摂取をすすめられることもあります。また、感染の兆候が見られる場合には、抗生物質を用いた治療が必要になることもあります。

生活習慣を改善する

ささくれが治らない場合、日々の生活習慣に原因があることも考えられます。手肌を健康に保つためには、バランスの取れた食事、十分な水分摂取、適切な手肌の保護とケアなどが必要です。

特に水仕事後の保湿、外出時の手肌保護、栄養バランスの良い食事に注意を払うことが大切です。また、ストレスは皮膚の状態に悪影響を及ぼすこともあるので、リラクゼーションや適度な運動を取り入れることも有効な対策となります。

ささくれが治らないときのリスク

ささくれが治らないときのリスク

ささくれが長期間治らない場合、ただ不快なだけでなく、さらに深刻な症状や病気を引き起こす可能性があります。感染症のリスクが高まり、手肌の小さな問題が全身に影響を及ぼすこともあるのです。最後に、ささくれが原因で発生する可能性のあるリスクと、その症状について解説します。

ひょう疽(ひょうそ・化膿性爪囲炎)

ひょう疽(ひょうそ)、または化膿性爪囲炎は、ささくれ周辺の皮膚が細菌感染を起こし、腫れ上がり、痛みや赤みをともなう状態です。ささくれ自体は小さな皮膚の損傷と言えますが、その傷口から細菌が侵入すると、感染を引き起こすリスクがあります。指の先や爪の周りは細菌が入りやすく、一度感染してしまうと治療が必要になる場合が多いです。

症状の現れ方

ひょう疽の典型的な症状には、患部の激しい痛み、腫れ、赤み、場合によっては膿が出るなどが見られます。さらに、感染が広がると発熱や全身倦怠感を感じることもあります。これらの症状が見られた場合には速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。自己判断での治療は症状を悪化させる恐れがありますので、必ず専門の医師の診断を仰ぐようにしましょう。

まとめ

ささくれが治らない原因から日常的なケアの方法、そして専門的な対処法までを詳しく解説しました。

ささくれは日常生活における小さなトラブルの一つですが、適切なケアを怠ると痛みや不快感を伴うだけでなく、重大な健康リスクを引き起こす可能性もあります。

重要なのは、手肌の乾燥を防ぎ、適切な栄養を摂取し、そして手を優しく扱うことです。 ささくれが繰り返し発生する場合や症状が悪化する場合には、早めに皮膚科を受診することもおすすめします。

日々のちょっとした心がけと正しいケアで手肌の悩みを解消し、より快適な日常生活を送りましょう。

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