ニキビの炎症を抑える方法は?治療薬・対処法を医師がわかりやすく解説

ニキビの炎症を抑える方法

ニキビが顔にできると、人の目が気になってしまうものです。ニキビは思春期からポツポツ顔にでき始め、放っておくとなかなか治りません。

人によっては20歳を過ぎても「大人ニキビ」として悩まされることもあります。ニキビを治すには、正しい知識に基づいた長期のスキンケアが必要です。

今回は、ニキビの原因やメカニズム、炎症を抑える治療薬、対処法について解説します。

この記事を監修した医師
0003_植木 健太郎

植木 健太郎 医師

ビクアスクリニック秋葉原

2011年福岡大学医学部卒業。2022年ビクアスクリニック秋葉原開院。
日本形成外科学会 専門医、日本形成外科学会 正会員、日本美容外科学会 JSAPS 正会員、日本美容外科学会 JSAS 正会員、日本抗加齢学会 正会員、
オンコプラスティックサージャリー学会 正会員

目次

ニキビの原因

ニキビは、毛の根元にある毛根を包む「毛嚢」という組織が炎症を起こす尋常性ざ瘡と呼ばれる皮膚の慢性炎症性疾患です。

ニキビができる原因はアクネ菌と呼ばれる肌の常在菌の一種が増殖して炎症を起こすことです。アクネ菌はニキビのない皮膚にも存在しているので、アクネ菌を繁殖・増殖させないことが大切です。

ここでは、順を追ってニキビができる原因とメカニズムについて解説します。

毛穴の中に皮脂が溜まる

思春期を迎えて皮脂腺が発達すると、皮脂の分泌が活発になります。過剰な皮脂分泌による皮脂や古くなった角質が毛穴に詰まり、毛穴の出口に古くなった角質や皮脂が固まったコメド(面ぽう)と呼ばれる状態になります。皮脂がたまった毛穴に蓋がされてしまう状態となり、皮脂は毛穴から出ていくことができなくなります。

皮脂が溜まった毛穴にアクネ菌が繁殖する

アクネ菌は皮脂を栄養にするため、コメド内部はアクネ菌が繁殖しやすい環境です。出ていくことができなくなった皮脂を栄養に繁殖するアクネ菌や雑菌に対抗するために免疫が働いて炎症が起こり、赤く腫れたり、膿や痛みを伴ったりする状態となります。これがニキビの状態です。

また、毛穴の詰まりの原因には肌表面の角層が異常に厚くなってしまう角化異常もありますが、健康な肌ではターンオーバーによって古い角質は剥がれ落ちるため、角質が異常に厚くなることはありません。ところが、過剰な洗顔や間違ったスキンケアなどの要因が加わると、古い角質が肌表面に蓄積して角化異常を起こしてしまいます。古い角質で毛穴の入り口が塞がって皮脂や汚れが毛穴の奥に溜まり、炎症を起こしてニキビが発生することもあります。

ニキビの炎症を抑える方法

ニキビができやすい方は、次のような方法がアクネ菌の増殖と炎症を抑えるのに効果的だといえます。それぞれ詳しく解説します。

  • 規則正しい生活をする
  • 栄養バランスの取れた食事を心がける
  • 正しいスキンケアを行う

規則正しい生活をする

運動不足や睡眠不足はもちろん、進学・就職などでストレスや不安を感じる状況もニキビには好ましくありません。ストレスを完全に取り除くことは不可能でも、適度な運動やストレッチなどを取り入れて運動不足の改善を図ることは可能でしょう。

また、深刻な睡眠不足は身体の免疫力低下につながります。入眠前に好きな音楽を聴いたり、ぬるめのお湯にゆったり入浴したりして睡眠の質を高めることも効果的です。

栄養バランスに気をつけて食事をする、寝る前の暴飲暴食をやめる、ストレスを必要以上に溜め込まないなど、規則正しい生活習慣の見直しをしてみてください。

栄養バランスの取れた食事を心がける

皮脂の分泌を活発化させるのは、食べ物による影響も大きいといえます。

ニキビができやすい食べ物

ニキビができやすい食べ物には、主に次の3つがあります。

  • 甘いもの
  • 乳製品
  • オメガ6系の油を含む加工食品

甘いものを摂り過ぎると、皮脂腺を調整するはずのビタミンB群が糖質分解に使われてしまうのでニキビができやすくなります。

チーズやクリームなどの乳製品は、過剰に摂取すると皮脂の出入り口を防いでしまいやすくなるといわれています。ヨーグルトなど低脂肪の発酵食品を適量摂取する分には問題ありません。ニキビができやすくて悩んでいる方は、糖質や高脂肪の乳製品の摂取を控えめにしてみましょう。

また、ポテトチップスやフライドチキンなどオメガ6系の油が多く含まれる加工食品は、皮脂腺を刺激するのでニキビができやすくなります。

脂っこい・甘い・刺激の強い食べ物が食生活の中心とならないよう注意し、栄養バランスのよい食事を心がけてください。

ニキビを改善しやすい食べ物

次に、ニキビを改善しやすいといわれている主な食品や栄養素は次の3つです。

  • 亜鉛
  • 発酵食品
  • オメガ3系の油を含む食品

ニキビができやすい方は血中の亜鉛が不足している場合が多く、亜鉛を補充することでニキビの改善率が高くなったという報告があります。そのため、ほうれん草・レンズ豆・玄米・ケールなど亜鉛を多く含んだ食品を積極的に食べることは、ニキビ予防にも効果があるでしょう。

納豆・キムチ・ヨーグルトなどの発酵食品には、プロバイオティクスと呼ばれる生きた乳酸菌が入っています。腸内環境が改善されると皮膚の水分量が上がり、皮脂の分泌が抑えられる効果が期待できるでしょう。

オメガ3系の油を含む食品は、前述のオメガ6の働きを抑え皮脂の分泌量を調整します。オメガ3はサバ・アジなど光り物の魚に多く含まれ、えごま・しそ油などにも含まれています。

ニキビができやすい食べ物を避け、改善しやすいといわれている食品や栄養素を意識して摂るようにしてみてください。

ニキビだけでなく、肌によいとされている栄養素には次のものがあります。

  • タンパク質
  • ビタミンB2
  • ビタミンB6
  • ビタミンC
  • ビタミンA
  • ビタミンE
  • 食物繊維

肌のターンオーバーサイクルを正常化するビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCはニキビ改善に欠かせません。また、ビタミン・ミネラルとともに、肌細胞を作るタンパク質も積極的に摂ることを意識しましょう。

普段は問題なくバランスのよい食生活を送っている方でも、仕事などで一時的に食生活が乱れている時、ストレスを抱えている時期、女性であれば生理中などホルモンバランスが崩れる時期などは上述の栄養素をサプリメントで補うのもおすすめの方法です。

正しいスキンケアを行う

ニキビの予防や炎症を抑えるには、洗顔と保湿などのスキンケアを正しい方法で行うことが大切です。

肌が脂っぽいからと力を入れてゴシゴシ洗ったり、洗顔ブラシやスクラブを使ったりすることは避けたほうがよいでしょう。ニキビの症状や年齢、肌の状態に合わせた適切なスキンケア化粧品を選ぶことも大切です。

膿を外に出す「面ぽう圧出」も、滅菌された専用の医療器具で出し切らなければ効果はありません。自分で行って悪化させてしまうこともあるので、皮膚科で相談することをおすすめします。炎症を抑える処置や、適切なスキンケア方法を提案してもらえるでしょう。

また、ニキビ治療に効果があるといわれるノン・コメドジェニック処方の洗顔料や保湿剤についても、興味がある場合は皮膚科で相談してみましょう。

早めに皮膚科で治療を受ける

ニキビは、尋常性ざ瘡と呼ばれる皮膚の慢性炎症性疾患です。栄養や生活習慣の改善、スキンケアでニキビが完治しない場合、放置すると炎症が悪化し炎症性色素沈着や瘢痕(はんこん)になることがあります。炎症後色素沈着とは炎症をきっかけに同じ部位にシミのような色素沈着ができる状態で、瘢痕は傷跡として残ってしまうことを指します。

このような状態にならないよう、炎症が続く場合は早めに皮膚科を受診し、適切な飲み薬や塗り薬を処方してもらいましょう。

ニキビの治療薬

皮膚科では、主に外用薬と内服薬の2種類の薬物療法が行われます。ここでは、薬の種類や治療法について解説します。

外用薬症状

ニキビは重症度やニキビの種類、進行段階によって治療法が異なるため、皮膚科での外用薬はニキビの症状に合わせて処方されます。外用薬には毛穴の詰まりを改善する薬、ニキビ菌を殺菌する抗生物質などがあり、炎症のないニキビにはピーリング作用のある外用薬、炎症のある症状の進んだニキビ治療には抗菌作用のある抗生物質入りの外用薬など、ニキビの状態や症状に合わせて処方されます。

ニキビ跡がクレーターのようになってしまった場合は、外用薬では治りません。その場合も皮膚科で治療法を相談してみてください。

内服薬症状

皮膚科の内服薬には、抗生物質の飲み薬のほかにも漢方薬、ビタミン剤などが併用されることがあります。

ビタミンB2やビタミンB6の飲み薬は皮脂の分泌を抑え、ビタミンCはニキビによる炎症の色素沈着などを改善させます。薬局やドラッグストアなどでも購入できますが、皮膚科で処方してもらうと保険適用となり、費用も安く抑えられる可能性があります。

また、炎症を起こした赤ニキビや膿を持った黒ニキビには、抗生物質の内服が有効です。抗生物質はアクネ菌を殺菌する以外にも抗炎症作用もあり、種類や内服期間はニキビの症状によって異なります。ただし、抗生物質は1~3ヵ月以内での投与が理想的で、長期内服のデメリットとして抗生物質の効かない菌が増えてくる可能性もあるため、医師の判断に従って服用しましょう。

ニキビを悪化させないための対処法

ニキビを悪化させないためには、次のようなニキビのスキンケアの方法があります。それぞれについて詳しく解説します。

  • 手で触らない
  • ニキビ用の洗顔料を使用する
  • 毛先がニキビに当たらないように注意する

手で触らない

ニキビのある部位は刺激に敏感になっているので、直接手で触らないように気をつけてください。ニキビを指で潰すのもアクネ菌や細菌を皮膚にばら撒くことになります。

ただし、手で触るのを避けるために、洗顔後に保湿をしないのは好ましくありません。洗顔によって皮膚の大事なバリア機能である皮脂が洗い流されているので、洗顔後の十分な保湿が大切です。

保湿をしない肌は、角質が厚くなって余計に毛穴が詰まりやすく、皮脂の分泌が増えたり溜まりやすくなったりします。洗顔の後は保湿をして肌を守りましょう。

ニキビ用の洗顔料を使用する

アクネ菌に効果のあるニキビ用の洗顔料を使用して洗顔するのは、ニキビを悪化させないために効果的です。

メイクをしている方は、洗顔前にクレンジングを使ってぬるま湯で十分に洗い流しましょう。洗顔料は細かい泡が立つまでしっかり泡立て、過剰に分泌された皮脂を泡で包みこむようにやさしく洗ってください。過剰に分泌された皮脂を洗い流し、毛穴の詰まりが取れると、毛穴の出入り口を通して老廃物が排出されやすくなります。

洗顔は通常、1日2回で十分といわれています。洗いすぎも肌に負担をかけるのでよくありません。

毛先がニキビに当たらないように注意する

髪の毛が肌に当たっていると、毛先がニキビを刺激して悪化させる可能性があるので注意しましょう。ニキビがあるときは髪を後ろでまとめたり、ヘアバンドを使ったりするのがおすすめです。洗顔やスキンケアの時は、ヘアバンドなどで髪が肌につかないようにしましょう。

まとめ

ニキビの原因や炎症を抑えるスキンケア、治療法について詳しく解説しました。

ニキビは治ったと思っても再発するかもしれない皮膚の慢性炎症性疾患です。自己判断や間違ったスキンケアで炎症を長引かせることになるかもしれません。

炎症を悪化させたりニキビ跡を残したりしないために、必要に応じて皮膚科で治療を受け、できるだけ早期に治療を開始しましょう。

参考文献

この記事を監修した医師

目次