植木 健太郎 医師
2011年福岡大学医学部卒業。2022年ビクアスクリニック秋葉原開院。
日本形成外科学会 専門医、日本形成外科学会 正会員、日本美容外科学会 JSAPS 正会員、日本美容外科学会 JSAS 正会員、日本抗加齢学会 正会員、
オンコプラスティックサージャリー学会 正会員
顎のニキビは、なぜできてしまうのでしょうか?顎のニキビは痛みを伴ったり、目立ちやすかったりと、他の場所よりも悩みが深くなりがちです。
今回は、顎ニキビの基本からその対処法、さらには病院での治療方法までをわかりやすく解説します。日常生活の中で気を付けるべきポイントや、早期改善のためのアドバイスも交えて、ご自身のニキビトラブルをサポートします。
顎ニキビの基礎知識
顎ニキビは、特に思春期や大人になってからの女性に多く見られるスキントラブルの一つです。他の部位に比べて皮膚が厚く、毛穴も深いために、ニキビができた際に炎症を起こしやすく、治りにくいことが特徴です。
また、顎は顔の中で最も皮脂の分泌が活発な部位であり、この過剰な皮脂と古い角質、そして細菌が混ざり合うことで、ニキビの発生を招きます。
通常のニキビとは異なり、顎ニキビの背後にはホルモンの変動や生活習慣など、さまざまな原因が関係しています。そのため、顎ニキビを根本から解消するためには、その特性と原因をきちんと理解し、適切なケアが必要です。
顎にニキビができてしまう原因
顎ニキビの原因は複雑であり、一つひとつの要因を明確に特定することは難しい場合もあります。しかし、主な原因を理解することで、その予防やケアにつなげることができます。
ホルモンバランスの乱れ
多くの女性は、月経周期に伴うホルモンバランスの変動により、皮脂の分泌が増加することを経験します。特に月経の前、いわゆるPMS期間中はこの変動が顕著で、これがニキビの発生の大きな原因となることがあります。
また、更年期に差し掛かると、エストロゲンの低下や他のホルモンのバランス変動により、顎周辺のニキビが増える可能性が高まります。
マスクの長時間の着用
特に近年、マスクの長時間の着用は新たなスキントラブルの原因となっています。マスクが顎部分に摩擦を与えることや、マスクの内部で湿度が高くなることで、皮膚のトラブルが引き起こされやすくなります。この環境は、ニキビの原因となる細菌の増殖を促してしまいます。
ストレスや疲れ、睡眠不足
日常生活の中でのストレスや疲れ、さらには十分な睡眠をとることができないことは、皮膚にも大きな影響を与えます。これらの要因はホルモンバランスを乱すことが知られており、皮脂の過剰な分泌を引き起こし、結果的にニキビの原因となります。
胃腸のトラブル
胃腸の健康は、古くから全身の健康状態を反映するものといわれています。消化不良や便秘、食生活の乱れは、体内の毒素が排出されず、皮膚に悪影響を及ぼすことがあります。特に顎ニキビは、胃腸のトラブルと密接な関係があるとされ、適切な食生活や消化器系のケアが重要です。
顎にニキビができたときに避けるべき行動
顎にニキビが出現した場面において、一般的なスキンケアの常識や、我々が反射的に行いがちな行動がニキビの状態をさらに深刻にすることが少なくありません。
一度顎ニキビができてしまった際、どのような行動が逆効果となるのか解説します。
過度なクレンジングや洗顔
ニキビが肌に現れると、清潔に保ちたいという欲求から、何度も顔を洗う行動に走る方が多いのですが、これは実は良くない方法です。度を超えたクレンジングや洗顔は、皮膚の表面を過度に刺激し、その結果として皮脂の過剰な分泌を促進してしまうのです。
さらに、肌が持っている自然の防御機能を低下させることで、ニキビの状態をさらに悪化させるリスクが高まります。
ニキビを潰す
多くの人が手でニキビを触る、潰す行動に出ることがありますが、これは非常に危険です。手には見えない細菌が数多く存在しており、それがニキビに接触することで炎症を引き起こしたり、さらにはクレーターのような跡が残るリスクも増加します。
熱湯で洗顔する
熱すぎるお湯は、肌を乾燥させ、それにより皮膚に不要な刺激を与える可能性があります。また、極端に冷たいお湯も肌を収縮させるため、避けるようにしましょう。洗顔の際は、肌に優しいぬるま湯を用いることが理想的です。
油分の多いクリームを使ったケア
ニキビが気になると、その上から油分の多いクリームや化粧品を使用することで、皮膚を保護しようと考える方も少なくありませんが、これがニキビの原因となる毛穴を詰まらせるリスクを高めます。
そのため、使用するスキンケア商品は、軽めのテクスチャーを持つものや、ニキビケアを目的とした製品を選ぶことが望ましいです。
顎にニキビができたときの自分でできる対策
顎ニキビが発生した場合、放置するのではなく、効果的に対応する方法があります。これらの手段は、日常のケアや生活習慣として簡単に取り入れられ、ニキビの早期回復や再発防止に役立ちます。
正しいスキンケアをする
基本となるスキンケアは非常に重要です。洗顔は、適切な洗顔料を使用してやさしく行い、強くこすりすぎないよう注意しましょう。
その後、化粧水で肌をしっかりと保湿し、セラムや乳液で肌のバリア機能をサポートします。特に油分の多い製品やコメドジェニック(毛穴をふさいでしまう)成分を含むものは避け、ニキビケア専用の商品を選ぶことで、効果的なケアが期待できます。
市販の治療薬を使う
多くのドラッグストアや薬局では、ニキビに特化した治療薬が販売されており、一般的なニキビの症状にはこれらの製品が効果的です。ジェル状、クリーム状、または貼り薬など、様々なタイプがあり、自分の生活スタイルやニキビの状態に応じて選べます。 使用する前には、成分や使用方法を確認し、肌に適しているかをチェックすることが重要です。
生活習慣を整える
外からのケアだけでなく、体の内側からも肌をケアすることが大切です。特に、バランスの取れた食事は、肌の健康を維持するための栄養素を供給する役割があります。
野菜や果物、白身魚などの良質なタンパク質、十分な水分摂取はニキビ予防に有効です。また、質の良い睡眠と適度な運動は、ストレスの軽減や新陳代謝を促進し、ニキビの発生リスクを低減します。
顎にニキビができたときの病院での治療
何度も自分での対策を試みたにも関わらず、ニキビが改善されない、または症状が悪化することがあるかもしれません。そのような状況では、皮膚科の専門家の診断や治療を受けることを検討してください。
医師や専門家は、高度な機器を使用して皮膚の状態を詳細にチェックし、個別の治療プランを提案してくれます。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、専門的な薬剤を用いて古い角質層を取り除く施術です。これにより、肌のターンオーバーを促進し、新しい肌細胞の成長を助けます。ニキビだけでなく、ニキビの後の赤みや色素沈着、さらには細かなシワや毛穴の開きも改善することが期待されています。
イオン導入
イオン導入療法は、微弱な電流を利用して美容成分や治療薬を皮膚の深部へと浸透させるテクニックです。この方法により、通常の塗布では届かない肌の深い層まで有効成分を届けることができ、ニキビの原因となる細菌や余分な皮脂の除去が期待されます。
フォトフェイシャル
フォトフェイシャルは、特定の光波長を使用して肌に照射する治療法です。この光は、肌の深部まで浸透し、コラーゲンの生成を刺激したり、ニキビの原因となる細菌を殺菌する効果があります。
炎症を抑える作用もあるため、赤みが目立つニキビにも効果的とされています。
外用薬・内服薬
皮膚科や美容クリニックでは、患者の肌の状態やニキビの深さ、種類に応じて、最も適切な治療を選択して行います。こうした治療の中で、外用薬や内服薬の処方は非常に一般的です。
外用薬は、直接肌に塗布することで、ニキビの炎症を抑えたり、皮脂の過剰分泌を抑制したりする効果があります。また、抗菌成分を含む製品も多く、ニキビの主要な原因となる細菌の増殖を抑える助けとなります。
使用する際は、指示通りの量を適切に塗布し、長時間放置せずに定期的に洗い流すことが大切です。
一方、内服薬は、体内からニキビの原因を取り除くことを目的としています。特にホルモンのバランスを整えるための薬や、細菌の増殖を抑制する抗生物質などが処方されることが多いです。内服薬は、体内全体の状態を改善し、長期的なニキビの予防や治療に役立ちます。
しかし、いずれの薬も正しい使用方法や継続的な治療が必要です。短期間での効果を求めるのではなく、長期的な視点でのケアと専門家の指示に従った適切な使用がニキビ治療の成功へと導く鍵となります。
顎にニキビができないようにする対策
ニキビは一度できてしまうと治療が必要となることが多いですが、予防は最良の治療といわれるように、日常生活のちょっとした工夫でニキビの発生を減少させることが可能です。では、具体的にどのような予防策が考えられるのでしょうか?
ビタミンやタンパク質などの摂取
皮膚の健康を保つためには、栄養のバランスが非常に重要です。特にビタミンAやビタミンC、さらにはタンパク質は肌の新陳代謝を助ける働きがあります。魚や野菜、果物を日常的に摂取することで、健康な肌を維持しましょう。
睡眠不足を解消する
「美容のための睡眠」とよくいわれるように、質の良い睡眠は肌の再生に不可欠です。不規則な生活や睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、ニキビの原因となります。
こまめにスキンケアをする
汗や皮脂がたまることで、顎周辺の毛穴が詰まりやすくなります。日々のこまめな洗顔や保湿を続けることで、清潔な肌状態を保つことができます。
特に、夜のスキンケアは肌の再生が活発な時間帯といわれているため、念入りにケアをすることをおすすめします。
まとめ
顎にニキビが発生するのは、ホルモンバランスの乱れや日常の生活習慣、マスクの摩擦などさまざまな要因が関与しています。
日常生活の中で、何気なく行っている行動がニキビの原因となることも少なくありません。そのため、自身の生活習慣やスキンケア方法を見直すことが大切です。自宅でのケアや市販薬に加え、必要に応じて病院での治療を受けることも考慮しましょう。
最後に、ニキビは多くの人が経験する肌の悩みの一つです。しかし、正しい知識と対策を持って日々の生活を過ごすことで、健やかな肌を維持することができます。