爪がボコボコする原因は?治し方・考えられる病気を医師がわかりやすく解説

爪がボコボコする原因
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

爪がボコボコになると見た目が悪くなるだけでなく、爪が割れやすくなったり、痛みを感じたりすることもあります。爪のボコボコには、加齢や乾燥、ストレスなどの日常生活上の原因だけでなく、貧血や水虫、乾癬などの病気のサインの可能性もあります。今回は、爪がボコボコする原因や治し方、考えられる病気について解説します。

目次

爪は健康のバロメーター

爪は、私たちの健康状態を映し出す鏡のような存在です。健康な爪はピンク色で表面がなめらかですが、体調不良や栄養不足、ストレスが溜まると爪にも変化が現れます。

爪のケアは内側からも外側からも大切です。バランスの良い食事で必要な栄養素を摂取し、ネイルオイルやハンドクリームで外側からもケアすることが推奨されます。爪の変化に気付いたら、それが健康のサインかもしれないと意識し、必要に応じて皮膚科に相談することが大切です。

爪がボコボコする主な原因

爪がボコボコする原因にはどのようなことが考えられるのでしょうか?ここでは、爪がボコボコする主な原因について解説します。

  • 乾燥
  • 加齢
  • 栄養不足
  • 負荷
  • 体調不良

乾燥

私たちの爪は皮膚の一部であり、ケラチンというたんぱく質から成り立っています。爪はその下にある皮膚(爪床部)から水分を補給しており、この部分が乾燥すると爪も乾燥します。特に冬場など空気が乾燥している時期は爪が乾燥しやすく、爪の表面がもろくなってボコボコとした変形を起こしやすくなります。

乾燥による爪のトラブルを防ぐためには、ハンドクリームなどでしっかりと保湿をすることが大切です。また、内側からのケアとして、水分を十分に摂取することも重要です。

加齢

年齢を重ねるにつれて身体の新陳代謝が低下し、爪を構成する細胞の生産速度も遅くなります。これにより爪の成長が遅くなり、爪表面の縦筋が目立ちやすくなることがあります。また、加齢による乾燥も爪の変形に影響を与えます。

栄養不足

健康な爪を維持するためには、タンパク質、カルシウム、ビタミンB群、マグネシウムなどの栄養素がバランス良く必要です。これらの栄養素は、爪の成長と修復を助ける重要な役割を担っています。特にタンパク質は爪の主成分であるケラチンの生成に不可欠であり、栄養不足によってタンパク質の摂取が不足すると爪は脆くなり、成長が遅くなることでボコボコとした表面になりやすくなります。

また、ビタミンやミネラルの不足も爪の健康に悪影響を及ぼし、爪の変形や割れ、ボコボコとした表面を引き起こす原因となります。

負荷

日常生活での細かな作業やスポーツなどで爪に力が加わり続けると、爪の構造に影響を及ぼし、ボコボコとした変形を引き起こすことがあります。また、ネイルアートやマニキュアの頻繁な使用も爪に負荷を与える一因となり得ます。特に、除光液の過度な使用は爪を乾燥させ、その強度を低下させるため、爪が割れやすくなり、ボコボコとした表面を作り出すことがあります。

体調不良

爪は体の健康状態を反映することがよくあり、栄養不足や病気が原因で爪の成長に異常が生じることがあります。

たとえば、貧血や甲状腺機能障害、糖尿病などの病気は、爪の健康に直接的な影響を及ぼす可能性があります。これらの病気によって体内の栄養バランスや血流が悪化すると、爪への栄養供給が不十分になり、爪がボコボコとした表面になることがあります。体調不良が長引く場合は、爪の変化に注意を払い、必要に応じて医療機関を受診することが重要です。

痛んだ爪のセルフケア方法

痛んだ爪はどのようにのセルフケアすればよいでしょうか?ここでは、痛んでしまった爪のセルフケア方法について解説します。

  • ハンドクリーム・ネイルオイルで保湿する
  • マッサージする
  • 食器洗いには手袋を使う
  • バランスの良い食事を摂る

ハンドクリーム・ネイルオイルで保湿する

爪やその周りの皮膚は乾燥しやすく、特に冬場やエアコンの効いた室内では乾燥によるダメージが顕著に現れます。そこで、日常的にハンドクリームで手全体を保湿し、さらにネイルオイルを使って爪とその周りの皮膚に潤いを与えることが大切です。ネイルオイルは、爪の根元や側面に丁寧に塗りましょう。

マッサージする

痛んだ爪のセルフケアには、マッサージがおすすめです。マッサージによって血行が促進され、爪に必要な栄養が行き渡りやすくなります。

具体的な方法としては、まずネイルオイルやハンドクリームを手に取り、爪の根元や周囲の皮膚に優しく塗り込みます。その後、指の腹を使って爪の根元から先端に向かって、または爪の周囲をゆっくりと円を描くようにマッサージします。

このとき、力を入れすぎず、爪や皮膚を傷つけないよう注意しましょう。マッサージは1日に数回、特に入浴後など皮膚がやわらかくなっているときに行うことをおすすめします。

食器洗いには手袋を使う

痛んだ爪のセルフケアにおいては、日常生活での小さな工夫が大きな違いを生み出します。特に、食器洗いは手や爪にとって大きな負担となりがちです。食器洗い用の洗剤には脂肪を分解する成分が含まれており、これが手の自然な油分を奪い、爪を乾燥させてしまいます。

食器洗いの際にゴム製やビニール製の手袋を使うことで、洗剤が直接手に触れるのを防ぎ、水仕事による乾燥から手と爪を守ります。また、手袋を使用することで、熱いお湯によるダメージからも手を保護できます。

手袋を選ぶ際は、内側がコットンでライニングされているものを選ぶと、長時間の使用でも手が蒸れにくく快適です。使用後は手袋の内外をきれいに乾燥させ、衛生的に保つことも大切です。

バランスの良い食事を摂る

爪の健康を維持するためには、タンパク質やビタミン類をしっかりと摂取しましょう。タンパク質は爪を構成する主要な成分であり、不足すると爪が脆くなりやすくなります。特に、鶏肉や魚、豆類などの高タンパク質食品を積極的に取り入れましょう。

また、ビタミンAは爪の成長を促す役割があり、ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、爪を丈夫にします。ビタミンEは血行を良くし、爪の健康をサポートします。これらのビタミンは、野菜や果物、ナッツ類から摂取できます。

さらに、鉄分や亜鉛も爪の健康には欠かせない栄養素です。鉄分が不足すると貧血を引き起こし、爪の成長に悪影響を及ぼすことがあります。亜鉛は細胞の成長に関わるため、不足すると爪の成長が遅くなる可能性があります。

爪がボコボコする際に考えられる主な病気

ボコボコした爪の背景には病気が隠れている可能性があります。考えられる主な病気は次のとおりです。

  • 爪白癬(つめはくせん)
  • 乾癬(かんせん)
  • 扁平苔癬(へんぺいたいせん)
  • 指粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)
  • 波板状爪(なみいたじょうそう)
  • 匙状爪(さじじょうそう)

爪白癬(つめはくせん)

爪白癬は、一般的に「爪水虫」とも呼ばれ、カビの一種である白癬菌が原因で起こる病気です。この菌は、主に足の爪に感染しやすいと言われますが、手の爪に感染することもあります。

感染すると、爪が白く濁り、厚くなり、先端がギザギザに欠けるなどの症状が現れます。また、厚くなった爪が周囲の皮膚に食い込み、巻き爪を引き起こすこともあります。

乾癬(かんせん)

乾癬は、皮膚の角質層が厚くなる後天性角化症の一種で、皮膚だけでなく爪にも影響を及ぼす病気です。原因は完全には解明されていませんが、免疫系の異常により自己の皮膚や関節が攻撃される自己免疫疾患の一つと考えられています。

乾癬によって爪がボコボコになる場合、爪に特有の変形が見られ、これが進行すると日常生活に支障をきたすこともあります。乾癬の症状は、皮膚に赤い発疹が生じ、その上に白色や銀色に見える鱗屑(りんせつ)が現れます。

これらの症状は頭部、膝、肘などに多く見られますが、体幹部にも出現することがあります。爪に関しては、乾癬による変形が起こり、爪が厚くなったり、表面に凹凸が生じたりします。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

扁平苔癬は、皮膚や粘膜に慢性的な炎症を引き起こす病気で、爪にも影響を及ぼすことがあります。この病気は、赤や紫がかったボツボツとした発疹が特徴で、次第に広がりカサつきが強くなります。

扁平苔癬の原因は完全には解明されていませんが、薬剤や化学物質に対する免疫反応や、感染が関与していると考えられています。特に、金、ヒ素、ビスマスなどの薬剤や、カラー写真の現像液などの化学物質が原因で発症することがあります。

扁平苔癬は、皮膚にかゆみをともなう発疹が現れることが多く、手首の内側、胴体、足、陰部など体のさまざまな部位に出現します。また、口の中にも病変が現れることがあり、網状の青白い発疹が特徴的です。この病変は痛みがないことが多く、自覚症状が少ないため、飲食時の不快感などが初めての気付きのきっかけになることもあります。

指粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ)

指粘液嚢腫は、手足の指にできる半透明なしこりで、爪の付け根近くの皮膚に生じることが特徴です。この病気は、関節内の潤滑剤である滑液が周囲組織内に漏れ出し、皮膚に貯留して嚢腫を形成することによって発生します。

指粘液嚢腫は、手足の指の背面で、特に爪の付け根と指の先端から数えて一番目の関節の間に生じることが多く、大きさは数ミリメートルから1センチメートル程度の半透明のドームのように盛り上がったしこりとして現れます。

波板状爪(なみいたじょうそう)

波板状爪(洗濯板状爪)は、爪の表面に横溝が次々と形成される状態を指します。この状態は、主に爪の根元にある後爪郭部の影響によって起こります。他の指で後爪郭部を後ろに押すように触る癖が原因として多いとされます。

このような癖は特に拇指の爪でよく見られ、その結果、後爪郭部の皮膚が少し厚くなり、爪半月が大きく見えるようになります。また、職業上の理由で道具などが後爪郭部に触れることによっても発生することがあり、その場合は多くの指の爪に現れることがあります。

匙状爪(さじじょうそう)

匙状爪(スプーンネイル)は、爪が薄くなり、中央部がへこんで先端が反り返ることでスプーンのような形状になる症状です。この状態は、特に鉄欠乏性貧血の患者さんに多く見られます。爪の薄さや形状の変化は、貧血による栄養不足が原因で、爪が外部からの圧力に耐えられずに形を変えてしまうために起こります。

爪の病気は皮膚科を受診しよう

爪の異常は、健康状態のバロメーターとされています。爪に現れる横溝や色の変化、でこぼこやスプーン状の変形は、糖尿病や亜鉛欠乏、貧血などの病気のサインの可能性があります。

このような爪の異変を感じた場合、早めに皮膚科で相談することが重要です。皮膚科では、爪の状態を詳しく診察し、必要に応じて適切な治療を提案してくれます。爪の異常は放置せず、早期に皮膚科医の診断を受けることで、病気の進行を防ぎましょう。

まとめ

爪のボコボコについて解説しました。爪のボコボコの要点をまとめると次のとおりです。

  • 爪がボコボコする原因には乾燥、加齢、栄養不足、爪への負荷などが考えられる
  • 痛んだ爪のセルフケア方法として、ハンドクリーム・ネイルオイルによる保湿、マッサージ、バランスの良い食事などがおすすめ
  • 爪がボコボコ背景には病気が隠れている可能性があるため、爪に異常を感じたら皮膚科を受診することを推奨する

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

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