ほくろの表面が剥がれた場合の対処法は?原因や除去の必要性を医師がわかりやすく解説

ほくろの表面が剥がれた場合の対処法
この記事を監修した医師

高藤 円香 医師

自衛隊阪神病院

防衛医科大学校卒業、現在は自衛隊阪神病院勤。皮膚科専門医。

突然ほくろの表面が剥がれてしまったら、どうしたら良いでしょうか?今回は、ほくろの表面が剥がれたときの対処法について解説します。

ほくろの種類やほくろと間違えられやすい疾患といった基本情報や、ほくろをきれいに除去する治療方法についても紹介します。

目次

ほくろとは

ほくろとは

ほくろについて馴染みがある人は多いと思います。しかし、ほくろに種類があることや、ほくろと勘違いしてしまうような疾患があるということは意外と知られていません。

まずは、ほくろについての基礎知識について解説します。

ほくろの種類

一般的なほくろは、母斑細胞のある深さにより3つの種類に分かれます。

  • 境界母斑:母斑細胞が表皮真皮境界部にあるもの
  • 真皮内母斑:母斑細胞が真皮の深いところにあるもの
  • 複合母斑:境界母斑と真皮内母斑の混合型

境界母斑→複合母斑→真皮内母斑の順に時間とともに変化します。ほくろの細胞が深部で増えるにつれてだんだん盛り上がっていきます。

また、後天性の色素性母斑には4つの分類も存在します。

  • Unna(ウンナ)母斑:主に体幹の胸、お腹、背中によくできます。直径1センチ程度のものが多く、柔らかいしこり感があります。色は黒色〜茶褐色であることが多いです。
  • Miescher(ミーシャー)母斑:主に顔面、頭皮によくできます。やや膨らみがあり、ほくろから毛が生えていることもあります。
  • Spitz(スピッツ)母斑:比較的若い人にできやすいです。色は赤〜黒色であることが多いです。急に巨大化した場合は、悪性の腫瘍(皮膚がん)の可能性があります
  • Clark(クラーク)母斑:主に体幹や四肢によくできます。直径1センチ以下のものが多く、ほぼ平坦で形は楕円形が一般的です。色は中央がやや濃く、外側に向かって徐々に色が薄くなることが多いです。

ほくろと間違われやすい疾患

ほくろと間違えやすい皮膚疾患はいくつかあり、中には悪性のものもあるため早期の鑑別が必要なものもあります。美容皮膚科などでほくろを除去した後にそれが悪性腫瘍だったとわかることもあるので、気になるほくろがある場合は、それがほくろであるのかを医療機関できちんと診断してもらうことが大切です。

メラノーマ(悪性黒色腫)

メラノーマは色素細胞(メラノサイト)ががん化して生じる悪性腫瘍で、命に関わる恐れがあります。足の裏にできやすく、全身に転移しやすい特徴があります。特に早期の鑑別が必要な疾患とされています。

基底細胞がん

基底細胞がんは最も多い皮膚がんで、日光の当たる顔にできることが多いです。日本人では黒いことが多く、徐々に大きくなっていく特徴があります。ほくろと似ている場合もあるため、ダーモスコピー(拡大鏡)で診断をつけたり、手術により切除したりします。

脂漏性角化症

脂漏性角化症は「老人性疣贅」とも呼ばれ、30歳を越えるとできやすく、60歳以上のほとんどの方に見られると言われています。原因は主に紫外線と加齢による皮膚ダメージの蓄積で、顔や背中、胸など体全体にできます。見た目の特徴は、茶色く盛り上がったしみとなります。

皮膚線維腫

皮膚線維腫は良性の皮膚腫瘍で、見た目がほくろに類似していて、腕や足に好発します。黒っぽいしこりのある腫瘍で、虫刺されや外傷が原因となることがあります。

ほくろができやすい人の特徴

ほくろになりやすい人の特徴には次のようなものがあります。

紫外線を多く浴びる人

紫外線が皮膚のメラニン色素を過剰に生成させることで、色素沈着をして、ほくろとして皮膚に現れることがあります

ストレスにさらされている人

ストレスはホルモンバランスを崩し、それが皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を乱し、メラニン色素の排出が遅れる原因となります

生理不順の人

妊娠や生理不順、更年期などでホルモンバランスが乱れると、メラニン色素を体外に排出する機能が低下し、色素沈着を起こすことがあります。

肌が白い人

肌が白い人はメラニン色素が少なく、紫外線に対する防御力が弱いため、ほくろができやすいとされています。

これらの特徴を持つ人は、ほくろができやすい傾向にあるかもしれません。ただし、これらは一般的な傾向であり、個々の状況は異なる場合もあります。健康状態について不安がある場合は、医療専門家に相談することをおすすめします。

ほくろの表面は剥がれることがある?

ほくろの表面は剥がれることがある?

ほくろの表面は剥がれることがあります。ほくろの表面の炎症や、外からの刺激が主な原因となります。

ほくろの表面が剥がれる原因には、次のようなものが挙げられます。ほくろの表面が剥がれた際は、これらに心当たりがないか確認してみてください。

皮膚の炎症

皮膚の炎症が起きると、ほくろの表面が剥がれることがあります。

皮膚の外傷

ほくろを強くこすったり、引っ掛けたりすると、表面が剥がれることがあります。

日焼け

紫外線による日焼けは、皮膚を刺激し、ほくろの表面が剥がれる原因になることがあります。

感染症

皮膚の感染症も、ほくろの表面が剥がれる原因となり得ます。

衣服やアクセサリーによる刺激

衣服やアクセサリーなどによる摩擦や圧力も、ほくろの表面が剥がれる原因になり得ます。

ほくろの表面が剥がれたときの対処法

ほくろの表面が剥がれたときの対処法

ほくろの表面が剥がれた際は、そこから出血する場合もあります。出血した際は止血を行い、「刺激する」「擦る」「強く洗う」ことは避けてください。

止血した後に、自分でかさぶたを剥がすと、出血したり傷跡が残ったりするリスクもあるため、自分で剥がさず完治まで様子を見ましょう。ここでは、具体的な対処法について解説します。

患部を水で洗浄して清潔に保つ

ほくろの表面が剥がれてすぐは出血していたり、外部からの刺激で汚れていたりする場合があります。きれいな水で患部を洗浄して清潔に保ちましょう。

患部が乾燥しないように保湿する

患部が乾燥すると、治りを遅らせてしまうので、洗浄後は化粧水やクリームなどで保湿をしてください。

病院で皮膚科を受診する

炎症がひどい場合は皮膚科の受診を検討してください。抗生剤やステロイドなどを病院から処方してもらえます。また、何度もほくろにかさぶたができたり、何もしていないのに出血したりする場合は皮膚がんのリスクもあります。早めに皮膚科を受診して早期発見を心がけましょう。

ほくろを除去する治療方法

ほくろを除去する治療方法

最後に、ほくろを除去する治療方法について解説します。ほくろが気になって自分で剥がそうとすると炎症したり、逆に痕が残ってしまったりするリスクがあります。ほくろを除去したい場合は、皮膚科を受診して治療を受けることが大切です。

それぞれの方法には特徴と適応範囲があるため、具体的な治療方法は専門医と相談して決定することが重要です。また、治療後の経過やアフターケアも重要なポイントです。具体的な治療計画やアフターケアについては医師から詳しく説明を受けてください。

炭酸ガスレーザー法

炭酸ガスレーザー法とは、ほくろに含まれる水分に反応する炭酸ガスレーザーを照射することで、発生する熱エネルギーの力によってほくろを蒸散させる治療法です。

局所麻酔を使用するため痛みもほとんどなく、ほくろ以外の皮膚にダメージがほとんどありません。イボ、ウオノメ、稗粒腫などといった、ほくろ以外の肌トラブルに対しても施術が可能です。

他の治療方法に比べ、出血がほとんど起こらないメリットもあります。施術自体も簡単で比較的短時間でできるので、一度に多くのほくろを除去する場合に適した方法です。

メスによる切除縫合法

メスによる切除縫合法は、メスでほくろと周辺の皮膚を完全に切除した後、皮膚を引き寄せて縫合し、傷を閉じる方法です。この方法は、ほくろの完全除去が前提にあるので再発防止には一番効果的で、大きなほくろにはこの切除法が利用されます。

切除縫合法では、まず局所麻酔をしメスでほくろとほくろの周りを切除し、ナイロンなどの細い糸で真皮縫合・表皮縫合を丁寧に施し、数日後に抜糸を行います。

くり抜き法

くり抜き法は、メスやパンチ(手術用の医療機器)を用いて、ほくろを文字通り「くり抜く」タイプのほくろ除去手術です。目に見えているほくろを確実に除去しながら、根が深いほくろに対してもアプローチできるという特徴があります。

メスによる切除縫合法と異なり、皮膚に開いた穴は縫合しないため自然に塞がるのを待ちます。また、切開法よりも切開範囲や傷跡が小さくなるため、体へのダメージを抑えながら、より美しい仕上がりを作ることができます。

最近ではレーザー法による治療が主流になっているため、くり抜き法を行うことは少なくなってきています。

まとめ

ほくろの表面は、外部からの刺激や皮膚の炎症によって剥がれることがあります。紫外線を浴びる機会が多い人やストレスにさらされている人は特に注意することをおすすめします。

ほくろの表面が剥がれた際は、「触る」「擦る」「強く洗う」ことは避け、患部を清潔に保湿をし回復を待ちましょう。また、ほくろの表面が剥がれる前に、ほくろを除去してしまうのも一つの対策となります。ご自身に合った治療方法は皮膚科で相談してみてください。

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