やけどを冷やしていないと痛い原因は?対処法と病院へ行く目安を医師がわかりやすく解説

やけどを冷やしていないと痛い原因
この記事を監修した医師

坂本 淳 医師

麹町皮ふ科・形成外科クリニック

2009年3月 順天堂大学医学部 卒業、2009年4月 順天堂大学病院 初期研修、2011年3月 同病院 研修終了、2011年4月 同病院皮膚科入局、同病院大学院入学、2015年3月 同病院大学院修了、2015年4月 順天堂静岡病院 助教、2017年5月 東京臨海病院 医局派遣、2020年1月 順天堂練馬病院 准教授、2022年4月 順天堂練馬病院 診療科長

日本皮膚科学会皮膚科専門医

やけどは、日常生活で予期せず起こることがあるものです。そのため、やけどをした際の適切な応急処置と病院受診の目安を知ることはとても大切です。

今回は、やけどを冷やさないと痛みがでる理由、やけどで病院へ行く目安について解説します。

目次

やけどとは?

やけどは、皮膚や粘膜が熱や化学物質、放射線により損傷を受けることで生じる状態を指します。やけどの重症度は軽度から重度まで幅広く、やけどの深さと範囲によって分類されます。

主な原因

やけどは原因によって次の4つに分類されます。

  • 温熱やけど
  • 電気やけど
  • 化学やけど
  • 放射線やけど

温熱やけど

温熱やけどは高温なものや液体に皮膚が接触することで生じる損傷で、やけどの中で一般的なやけどです。家庭でのやけどはほとんどが温熱やけどによるもので、なかでも10歳未満の子どもに多く見られ、日常生活の中での小さな事故が原因となることが少なくありません。

温熱やけどの具体的な予防策には、次のものなどがあります。

  • 料理をする際に子どもをキッチンから遠ざける
  • ポットやフライパンの取っ手を後ろ向きにする
  • 熱い飲み物を子どもの手の届かない場所に置く
  • 家庭内で使用する暖房器具にはカバーを設置する
  • 花火を扱う際には適切な保護具を着用する
  • お風呂の温度は適切に管理する

また、高齢者や介護が必要な方は身体の感覚が鈍くなっていることがあるため、食べ物や飲み物の温度、お風呂の水温などには注意が必要です。

温熱やけどは、適切な予防措置を講じることで大幅にリスクを減らすことができるでしょう。

電気やけど

電気やけどは電流や雷による接触によって生じるやけどです。

高圧線や落雷による事故が原因で起こることが多いやけどですが、子どもがコンセントに金属製品を差し込むことによる感電事故などがあります。また、手や足が濡れている状態での電気の使用にも注意が必要です。

電気やけどは重篤な結果を招く危険性があるため、コンセントのカバーを使用したり水場での電気製品の使用を避けたり、電気の扱いには注意を払うことが求められます。

化学やけど

化学やけどは酸やアルカリなどの化学物質が皮膚に接触することで発生するやけどです。

主に工業的な環境や研究室で薬品を扱う際に発生しやすいため、適切な保護具の使用が重要です。皮膚にこれらの物質が触れると深刻な損傷や長期的な影響を及ぼす可能性があるため、化学物質を適切に取り扱うための正しい手順と保護措置の知識が必要とされます。

放射線やけど

放射線やけどは、がん治療中の放射線療法、紫外線の過剰曝露、核事故からの放射能などによって引き起こされます。

放射線やけどは、皮膚や体の組織が内部から損傷を受けるため、見た目にはすぐには現れないことがあります。重度の場合、皮膚の赤みや炎症、強い痛み、長期的な健康障害を引き起こす可能性があります。

やけどの深さ別の症状とやけど跡の関係

やけどは深さによって症状が異なり、やけど跡の残り方もそれぞれです。やけどの深さ別の症状とやけど跡の関係について解説します。

  • Ⅰ度熱傷
  • Ⅱ度熱傷
  • Ⅲ度熱傷

Ⅰ度熱傷

I度熱傷は、皮膚の表面的な層である表皮に限定された損傷です。皮膚が赤くなり腫れることがありますが、水疱(水ぶくれ)は形成されません。痛みを伴いますが、通常は数日から一週間程度で治癒してやけど跡を残さないという特徴があります。

基本的には冷却や保湿、炎症を抑える軟膏の使用や皮膚の保護といった対症療法でケアします。しかし、やけどが広範囲の場合や痛みが強い場合は症状の悪化を防ぐために皮膚科か形成外科を受診しましょう。

Ⅱ度熱傷(浅達性Ⅱ度熱傷、深達性Ⅱ度熱傷)

Ⅱ度熱傷(浅達性Ⅱ度熱傷、深達性Ⅱ度熱傷)は、やけどの深さによって分類されます。

浅達性Ⅱ度熱傷は表皮と真皮の上層部が損傷するもので、強い痛みを感じ、皮膚は赤くなり水疱が形成されることが特徴です。Ⅰ度熱傷に近い浅いやけどは、軟膏治療などの適切な処置を行うことで2週間前後でやけど跡を残さず治癒することが可能ですが、赤みが残ったり色素沈着で皮膚が茶色になったりすることもあります。色素沈着は紫外線に当たることが原因となるため、紫外線を防ぐために遮光するなどの処置も大切です。

一方、深達性Ⅱ度熱傷は真皮の深い部分まで影響が及び、水疱が形成され、水泡の下の皮膚は白色であることが多いようです。浅達性、深達性の区別がつきにくいことがありますが、皮膚が赤みを帯びている場合は浅達性、水泡の下の皮膚が白い場合には深達性と判断されます。また、知覚神経が損傷するため痛みが鈍く感じられることが特徴です。

深達性Ⅱ度熱傷でも軟膏治療や被覆剤を用いて治療を行いますが、1ヶ月以上の治療期間が必要となることもあり、やけど跡が残ることが一般的です。広範囲の場合や、やけどを負った部位によっては皮膚移植手術が必要となることもあります。深達性Ⅱ度熱傷は感染リスクが高いため、適切な医療処置が必要です。

Ⅲ度熱傷

Ⅲ度熱傷は、皮膚のすべての層を通じて深刻な損傷が及ぶやけどで、場合によっては皮下脂肪層、筋肉、骨まで達することもあります。血管がやけどで損傷して血流が遮断されるため、皮膚は白く見えたり黒く焦げて見えたりします。神経組織も損傷しているため痛みを感じないのが特徴です。水疱は形成されません。

Ⅲ度熱傷では皮膚は壊死の状態になっていて感染リスクも高く、治療には専門的な医療介入が必要です。皮膚移植手術が必要な場合もあります。回復過程は複雑で治療には1ヶ月以上かかることも多く、長期間にわたるリハビリテーションが必要になる場合もあります。

適切に治療を行っても、やけど跡が盛り上がってケロイドやひきつれの状態となることがあります。また、皮膚移植手術を受けると移植するために皮膚をとった部位にも傷跡が残るため、傷跡を目立たなくする治療も受ける可能性があります。

やけどを冷やさないと痛みが出る原因

やけどを負うと皮膚内の温度が上昇しています。やけどは、冷やさないと熱が皮膚内の神経を直接刺激し、強い炎症反応を引き起こすことで痛みにつながります。

やけどした部分をすぐに冷やさないと、ヒリヒリとした痛みが持続するのはこのためです。また、皮膚内の温度が上昇することでやけどの範囲や症状が進行してしまう可能性もあります。

そのため、やけどの患部を冷やして皮膚内の温度を下げることが痛みを和らげることにつながります。 冷やさずにいると炎症と痛みが続いてしまうため、やけどをした場合はすぐに流水で冷やし、やけどの悪化を食い止めることが重要です。

詳しくは後述しますが、15〜30分程度冷やし続けることが良いとされています。ただし、過度に冷やすことは低体温症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。冷やすときは冷水で冷やすことを意識しましょう。また、敏感な部位にはより慎重な対応が求められ、水疱がある場合は清潔なガーゼで保護するなどの対処が必要となります。対処法に困る場合は、悪化する前に皮膚科などで相談しましょう。

やけどをしたときの応急処置

ここまで、やけどの種類や原因について解説してきました。ここからは、やけどしたときの応急処置について解説します。やけどの応急処置方法を知り、いざというときに適切に対処できるようにしましょう。

流水で冷やす

流水で患部を冷やすとやけどした部位の温度を下げ、炎症を抑えることで痛みの軽減が期待できます。また、やけどの深刻度が増すことを防ぎ、回復を早められる場合があります。やけどをしたらすぐに対処することが重要です。

冷やすときの注意点として、衣服の上から熱源が触れてやけどを負った場合は衣服を脱がずに衣服の上から流水や常温の水で冷やすことが大切です。衣服を脱ぐことで水疱が破れて痛みが強くなったり、治るのに時間がかかったりしてしまう可能性があります。

やけどを負った部位によって異なりますが、15〜30分程度冷やし続けます。指先や足のやけどは1時間くらい冷やすことで症状が軽くなります。冷やしていないと痛かったり、痛みが続いたりするようであれば、軟膏を塗ったりせずに冷やしたまま皮膚科や形成外科を受診しましょう。

アクセサリー類は外す

やけどをした際には、やけど部位の周囲が急速に腫れる可能性があるため、指輪やブレスレットなどのアクセサリーが圧迫を引き起こして血流を妨げるリスクがあります。

また、皮膚の回復が遅くなる可能性もあるため、アクセサリー類はすぐに外しましょう。外せない場合は、早めに医療機関に行き切断してもらう方法もあります。

患部を触らない

やけどをしたとき、患部を触らないことは非常に重要です。患部に直接触れると傷口に細菌が侵入しやすくなり、感染の可能性が高まります。また、やけどした部位は敏感なので、触れることによって痛みが増したり、回復過程に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。やけどをしたときは、清潔な布で患部を覆い保護しましょう。

やけどで病院へ行く目安

やけどで病院を受診する目安は、次のような場合です。

  • やけどが広範囲の場合
  • 関節部分や手のひらのやけどの場合
  • 重度のやけど(Ⅱ度以上)の場合
  • 水疱がある場合
  • 顔や陰部をやけどした場合
  • 電気や化学物質によるやけどの場合
  • 基礎疾患がある高齢者や子どもの場合
  • 痛みが強いまたは数日経っても改善しない場合

やけどが広範囲の場合

やけどが広範囲の場合は、やけどを負った部位が炎症を起こし、血管内の水分が移動したり減少したりすることで血圧低下を引き起こすことがあるため、症状が軽いやけどでも注意が必要です。

関節部分や手のひらのやけどの場合

関節部分や手のひらはよく動かす部分なので、適切な治療を受けないと皮膚のひきつれが起こり、動かしにくくなる機能障害につながる可能性があるため注意が必要です。

重度のやけど(Ⅱ度以上)の場合

やけどを負ったところの皮膚が白、もしくは黒くなっている場合はⅡ度以上の重度のやけどなので、すぐに適切な医療処置を受ける必要があります。やけどの範囲に関わらず、すぐに受診しましょう。

水疱がある場合

水疱ができているやけどは上記のⅡ度以上の重度のやけどである可能性が高く、水疱がつぶれることで感染症を起こす可能性もあるためすぐに受診した方がよいでしょう。また、浅達性Ⅱ度熱傷だった場合は適切な処置を行うことでやけど跡を残さず治癒できることもあるため、やけど跡を残さないためにも早めに受診することが大切です。

顔や陰部をやけどした場合

手足や顔、陰部などのデリケートな部分をやけどした場合、入院治療による専門の治療が必要になることがあります。顔などはやけど跡が残ると目立つため、やけどの範囲に関わらず受診した方がよいでしょう。

電気や化学物質によるやけどの場合

電気やけどや化学やけどは内臓にも損傷を受けている可能性があるため、すぐに医療機関で診察してもらう必要があります。場合によっては入院治療が必要なこともあります。

化学やけどの場合は原因となった化学物質の種類によって対応が変わるため、受診時に原因となった薬品ややけどのきっかけなどの詳しい情報を伝えることが大切です。

基礎疾患がある高齢者や子どもの場合

糖尿病や心臓病など基礎疾患がある高齢者や、抵抗力の弱い子どもの場合、浅いやけどでも深いやけどに発展してしまい治るまでに時間がかかることがあります。場合によっては入院治療が必要になることもあるので、医療機関で診察してもらいましょう。

痛みが強いまたは数日経っても改善しない場合

軽いやけどではなく深いやけどだったり、炎症を起こしたりしている可能性があります。更に炎症が広がるリスクや感染するリスクを減らして回復を早められるので、我慢せずに皮膚科などで相談しましょう。

やけどの治療

やけど治療は、患部の深さと範囲に応じて細心の注意を払いながら行われます。感染予防、痛みの緩和、そして長期的なケアに至るまで、患者さんの状況に合わせた治療が必要です。重度のやけどの場合は、やけどに特化した病院での治療が推奨されることもあり、回復過程では皮膚移植やリハビリが必要になることもあります。

受診する診療科

受診する診療科は、やけどの程度や部位、症状の重さに応じて皮膚科や形成外科が選択されます。

やけどの範囲が狭い場合には近くの皮膚科で相談し、治療してもらうのがよいでしょう。重度のやけどや広範囲にわたる場合、または電気やけどや化学やけどなどは、やけど治療に特化した医療機関を受診することが推奨されます。やけどの種類や重さを適切に診断し、治療できる医療機関を選ぶことが診療科選びのポイントです。

治療方法

やけどの治療は損傷の程度と範囲に応じて異なりますが、重症な場合は外科手術を受けることもあります。具体的な治療方法には次のものがあります。

  • 外用薬
  • 抗生物質・消毒
  • やけど跡の治療
  • 手術(深いやけど)

外用薬

やけど治療ではまず、外用薬による治療が基本となります。外用薬を使用することで、感染の予防や痛みの緩和、治癒過程の促進が期待できます。

治療には抗菌作用のある軟膏やクリームが使用されることが多く、軽度のやけどには冷却後に保湿を目的とした外用薬もあります。

抗生物質・消毒

やけど治療において、抗生物質の使用と消毒は感染防止と治癒促進に欠かせません。ただし、傷の消毒をしすぎてしまうことは創傷治癒遅延につながる場合もあるので必ず医師に相談のもと行うようにしてください。

軽度のやけどでは、清潔に保ち適切な消毒を行うことが推奨されていますが、重度や広範囲にわたるやけどの場合は、感染リスクの高さから抗生物質の局所塗布や内服が必要になることがあります。

自己判断で抗生物質を使用すると耐性菌の出現など新たなリスクを招く可能性があるので、医師の診断を受けて指示にしたがいましょう。また、途中で使用や服用を中止すると感染症が悪化する可能性があるため、指示された期間、用法、用量を守って服用することが大切です。

やけど跡の治療

やけど跡の治療には、皮膚の機能と見た目を改善する方法があります。

軽度のものは時間とともに自然に改善することもありますが、重度の場合は外科的治療やレーザー治療、皮膚移植が行われることもあります。やけどの状態に応じた医師の診断が必要です。

手術(深いやけど)

深いやけどの治療では、損傷した組織の除去や皮膚移植が必要になる場合があります。これらの手術は、感染のリスクを下げより早い回復を促すため、また広範囲にわたるやけど跡の修復や機能と見た目の改善を目指して行われます。

治療は患者さんの具体的な状況ややけどの深さ、範囲、全体の健康状態を総合的に考慮して計画され、適切な治療成果を目指します。

まとめ

やけどの種類や冷やさないと痛みがでる理由、やけどで病院へ行く目安について解説しました。

やけどはさまざまな原因から起こります。家庭でのやけどで多くみられる温熱やけどや電気やけどは、適切な予防措置で大幅にリスクを減らすことができるでしょう。

予防として取り入れられることから実践し、もしやけどした場合には流水で冷やす、アクセサリー類は外す、患部を触らないことに留意しましょう。やけどは跡が残る可能性があるため、水ぶくれが大きい場合、手足や顔に発生した場合、痛みが強い場合、数日経っても改善しない場合には、我慢せず皮膚科や形成外科を受診して治療してもらうことが大切です。

参考文献

この記事を監修した医師

目次