蕁麻疹はいつ治る?蕁麻疹の種類と注意点を医師がわかりやすく解説

蕁麻疹はいつ治る

肌がかゆいとつい掻いてしまったり、物事に集中できなくなったりしてしまうものです。また、蕁麻疹のように原因がはっきりとわかりづらいかゆみの場合もあるので、根本の原因を突き止められず、困っている方もいるでしょう。

今回は、蕁麻疹の原因や症状、治療方法について解説します。

この記事を監修した医師

鈴木 稚子 医師

六本木スキンクリニック

1994年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同大学皮膚科学教室、国立大蔵病院皮膚科 臨床研究部を経て2000年 用賀ヒルサイドクリニックを開院、2017年9月23日 六本木スキンクリニックを開院

医学博士、温泉療法医、日本医師会認定スポーツ医、日本旅行医学会認定医

目次

蕁麻疹とは

蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然に赤く盛り上がり、しばらくすると跡形もなく消えてしまう皮膚の病気です。蕁麻疹の症状や原因について解説します。

症状

蕁麻疹では膨疹(ぼうしん)と呼ばれる皮膚のふくらみがみられ、1〜2mm程度から手足全体に及ぶものまでさまざまです。膨疹が結合し、体の大部分が覆われることもあります。

また、蕁麻疹は赤みや強いかゆみを伴います。チクチクした痛みやヒリヒリした焼けつくような感覚がある場合もあります。発疹や赤みはたいてい数時間〜1日で消えますが、数日程度持続することもあり、症状が重い場合は新たな発疹が連続して出現することもあります。

原因

蕁麻疹の原因はアレルギー反応、ストレス、寝不足、ウイルスや細菌の感染、運動、暑さや寒さといった刺激、圧迫や日光など多岐にわたります。

アレルギー性蕁麻疹は、食べ物、薬物、植物、虫など特定のアレルゲンに反応して起こる蕁麻疹です。体内のアレルギーに関与する細胞(肥満細胞)からヒスタミンなどの蕁麻疹の症状を起こす物質が放出され、皮膚の血管周囲にむくみやかゆみを引き起こします。

非アレルギー性蕁麻疹の場合もこの仕組みは同じで、アレルゲンではなく暑さや寒さといった刺激、圧迫や日光などの物理的刺激、汗などが原因でアレルギー反応が誘発されると考えられています。

また、ウイルスや細菌の感染症、疲労、ストレス、アトピー性皮膚炎、食事の防腐剤や人工色素の摂取なども蕁麻疹の増悪や背景因子として関与することがあります。
しかし、蕁麻疹の多くは原因が特定できない特発性蕁麻疹とされ、体調不良や疲労、ストレスなど複数の原因が重なって発症することが多いといわれています。

蕁麻疹はいつ治る?

蕁麻疹の治癒時間は個人差が大きいですが、急性蕁麻疹の場合は発症から数時間〜一日で自然に治まることが多いようです。原因が明確なアレルギー性蕁麻疹の場合は、原因となる刺激を避けることで症状が出なくなるとされます。

また、毎日のように繰り返し症状が現れ、発症して1ヶ月以上経過した蕁麻疹は慢性蕁麻疹と呼ばれます。最初の原因とは関係なく飲酒や、食事、入浴、締め付け、リラックスした時などに出るようになり原因が特定できないことが多く、長期間の薬物治療が必要になることもありますが、皮膚科で適切な治療を受け、生活習慣を管理することで改善が期待できます。

蕁麻疹の種類

ここまで、蕁麻疹の基本的なことについて解説しました。蕁麻疹の多くは原因で分類されているので、ここからは蕁麻疹の主な種類について解説します。

  • 急性蕁麻疹
  • 慢性蕁麻疹
  • 物理性蕁麻疹
  • アレルギー性蕁麻疹
  • コリン性蕁麻疹
  • 血管性浮腫

急性蕁麻疹

急性蕁麻疹は、最初の症状が出始めてから1ヶ月以内のものを指します。幼少時は一つの原因のことが多いのですが、成人になってくると、体調不良や疲労、ストレスなど複数の原因が重なって発症することが多いと考えられているため、ほとんどの場合は原因を明らかにすることができません。

急性蕁麻疹の症状は、強烈なかゆみ、皮膚の赤みや腫れ、そしてポツポツとした発疹が特徴で、全身のどの部位でも発症する可能性があります。急性蕁麻疹は発疹が生じてから一日以内に症状が治まることが多く、長くても1週間程度で治まるケースがほとんどです。

慢性蕁麻疹

慢性蕁麻疹は、先述しましたが毎日のように繰り返し症状が現れ、発症して1ヶ月以上経過した蕁麻疹を指します。慢性蕁麻疹は、治療が数ヶ月〜数年に及ぶ可能性があります。慢性蕁麻疹も最初の原因とは関係なく飲酒や、食事、入浴、締め付け、リラックスした時などに出るようになり、原因を避けるという基本的な蕁麻疹の治療法が適用できないため、薬物治療が必要です。

慢性蕁麻疹の治療は症状が現れない状態を作り出し、最終的には治療薬を使わずに症状が現れない状態を目指します。諦めずに治療を続けることが大切です。

物理性蕁麻疹

物理性蕁麻疹は、皮膚に摩擦や寒冷、温熱、日光、振動など物理的な刺激が加わることが誘因となって発生する蕁麻疹のことです。物理性蕁麻疹は特定の刺激に対する皮膚の過敏反応として現れているため、原因刺激を避ければ症状は起こらないことが特徴です。そのため、物理性蕁麻疹は日常生活の中での注意深い自己管理が重要となります。

アレルギー性蕁麻疹

アレルギー性蕁麻疹は、食物や薬剤、植物などアレルゲンである特定の物質に対する身体の過敏反応が原因で発生します。魚介類や肉類、卵、野菜、乳製品、防腐剤、穀類(小麦、そば、大豆など)、人工着色料、抗生物質などがアレルギー性蕁麻疹の引き金となり得ます。

これらのアレルゲンが体内に入ると免疫系が過剰に反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、皮膚の赤みや腫れ、かゆみなどの蕁麻疹の症状を引き起こします。

コリン性蕁麻疹

コリン性蕁麻疹は、発汗をつかさどるアセチルコリンという神経伝達物質が関与して起こる蕁麻疹で、運動や入浴などで体温が上昇し、汗をかくと発症します。膨疹は1〜4mm程度と小さく、小さな膨疹がつながったようになることはありますが、大きな平べったい膨らみにはならないことが特徴です。

また、コリン性蕁麻疹は小児から若い成人に多く見られることも特徴です。症状が軽いうちは経過観察でも大丈夫ですが、日常生活に支障が出るほど頻繁に症状が出てしまう場合は皮膚科で治療を受けることが推奨されます。

血管性浮腫

蕁麻疹には血管性浮腫と呼ばれる特殊な形態があります。血管性浮腫では、主にまぶたや唇などの部位が2〜3日間腫れ上がるという症状が出ます。

蕁麻疹は皮膚のごく表層の血管が反応して症状が現れますが、血管性浮腫は皮膚の深いところの血管が反応するため、赤みもあまりはっきりしない皮膚の腫れとして現れることが特徴です。まれに顔面ではなく手や腕、足などに症状が出ることもあります。

血管性浮腫はほとんどかゆみがないことも特徴で、一度現れると消えるまでに2〜3日かかることがあります。

血管性浮腫も発生原因を特定できないことが多く、顔面の腫れで物を飲み込んだり呼吸したりするのが困難になったり、喉が詰まって声が出しにくいなどの症状がある場合は直ちに皮膚科や内科で適切な治療を受けましょう。

蕁麻疹の治療方法

蕁麻疹の治療は、原因や悪化因子を特定し、それらを避けることが基本です。

しかし、繰り返しになりますが蕁麻疹は原因を特定できないことが多いため、蕁麻疹の症状を引き起こすヒスタミンを抑制するために抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が使用されます。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は、蕁麻疹の種類に関係なく効果が期待できます。

また、かゆみ止めの塗り薬を併用したり、症状に応じて漢方薬や免疫調節薬などを補助的に使用したりすることもあります。

蕁麻疹で注意すること

続いては、蕁麻疹になった場合に注意した方が良いことについて解説します。以下の点に注意して、もし蕁麻疹になった場合に適切に対応できるようにしましょう。

日常生活での注意点

蕁麻疹の症状は、身体を温めると血流がよくなって発疹が出やすくなる傾向があります。そのため、症状が出ているときは飲酒や運動、入浴などの体温を上昇させる可能性のある行動は控えめにすることが推奨されます。

また、摩擦刺激も蕁麻疹の発症を引き起こす可能性があるため、蕁麻疹の症状が出ていないときでも入浴時に強く擦って洗わないようにしたり、締め付けるような下着の着用も避けたりすることが望ましいです。

食事についても注意が必要で、干物やソーセージ、トマト、ほうれん草、たけのこ等のヒスタミンを含む食品や、牛・豚・鶏のレバーや卵、大豆、ささげなどコリンを多く含む食品が蕁麻疹の発症を引き起こす可能性があります。これらの食品を摂取した後に蕁麻疹の症状が現れる場合は、食事の見直しを検討する必要があるでしょう。

症状が出たときの対応

蕁麻疹の発症時には、まずは患部を掻かないことが重要です。

患部を冷やすことで一時的にかゆみを和らげられる場合がありますが、氷や保冷剤などで急激に冷やすと刺激になってしまい、かゆみがひどくなることがあります。水で濡らして固く絞ったタオルやハンカチを患部に軽くあてて冷やす方法がおすすめです。

ただし、寒暖差や冷えといった刺激が原因で発症する寒冷蕁麻疹の場合は、冷やすと悪化させる可能性があります。

症状が改善しない場合や再発する場合、または強いかゆみが我慢できない場合は、皮膚科を受診し、専門的な診断と治療を受けましょう。

以上の対処法を心がけることで、蕁麻疹の症状を和らげられる可能性があります。しかし、自己判断に頼らず、必要に応じて医療機関を受診することが重要です。

重篤なアナフィラキシー

蕁麻疹が原因で呼吸困難やめまい、吐き気などが現れた場合は、アナフィラキシーショックの兆候である可能性があります。

アナフィラキシーは、特定のアレルゲンに対する即時型過敏反応(Ⅰ型アレルギー反応)が引き金となり、ヒスタミンなどの化学メディエーターが放出されることで急速に呼吸困難や循環不全を引き起こす状態です。急性の循環不全を呈する状態のため、血圧が低下し、組織に十分な血流が得られず、臓器が低酸素となってしまいます。

蕁麻疹とアナフィラキシーショックは密接に関連しており、蕁麻疹の症状が重篤化するとアナフィラキシーショックに進行する可能性があります。呼吸困難や意識の混濁などの重篤な症状が現れた場合は、すぐに救急を受診してください。

まとめ

蕁麻疹の基本知識や治療法、蕁麻疹がいつ治るのかについて解説しました。

蕁麻疹は個人差が大きく、数時間で自然に治まることも多くありますが、原因を特定することが難しく、何度も繰り返すこともあります。

症状が重篤化するとアナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、症状が改善しない場合や再発する場合、または強いかゆみが我慢できない場合は皮膚科を受診し、治療を受けることが大切です。

参考文献

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