赤いあざが突然できることはある?あざの種類と主な病気を医師がわかりやすく解説

赤いあざが突然できる
この記事を監修した医師

菊池 新 医師

菊池皮膚科医院

昭和62年 慶應義塾大学医学部卒業、昭和62年 慶應義塾大学病院にて研修医、平成3年 慶應義塾大学医学部皮膚科助手、平成7年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室医局長、研修担当主任、平成7年 慶應義塾大学医学部皮膚科診療科医長、平成8年 慶應義塾学事振興基金(福沢基金)を得て、アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)へ留学、平成10年 日本学術振興会海外特別研究員としてアメリカ国立衛生研究所にて引き続き留学、平成10年 留学を終え帰国、平成10年 5月 菊池皮膚科医院開設

日本皮膚科学会認定 専門医・指導医、日本医師会・日本医学会認定医、医学博士

転んだり、ぶつけたりといった記憶がないのに、突然赤いあざができた経験がある方もいるのではないでしょうか?あざには赤や紫、青黒いものや茶色っぽいものまでさまざまな種類があります。
今回は赤いあざに焦点を当てて、赤いあざの種類や考えられる病気、治療法について解説します。

目次

赤いあざの原因

赤いあざは、大きく2つに分けられます。

  • 生まれつきあるあざ
  • 突然できるあざ

生まれつきあるあざ

生まれつきある赤いあざは血管腫の可能性があります。血管腫とは血管の異常で、血管の異常増殖や血管の拡張によってできる、ほとんどは良性の腫瘍です。血管内に存在する赤血球のために赤く見えることが多いですが、血管の太さや深さにより緑がかったり紫色に見えることもあります。

血管腫はホルモンバランスや外傷、感染症など外的な刺激によってもできますが、根本的な原因は明らかになっていません。

突然できるあざ

突然できるあざでよく見られるものは、転んだりぶつけたり、皮膚を圧迫したりしたことが原因で起こる内出血によるあざです。血管内から漏出した血液が皮膚の中にたまり、皮膚が赤紫色になったり青黒くなったりします。内出血による赤いあざは時間の経過とともに薄くなって消える、健康には害のないものです。
他にも、主に加齢が原因でできると考えられる老人性紫斑や老人性血管腫などのあざ、肝機能障害などと関連のあるクモ状血管腫などがあります。

赤ちゃんに見られる赤いあざ(血管腫)

ここからは、赤ちゃんに見られる赤いあざについて解説します。赤ちゃんの赤いあざには、成長の段階によって見られる種類が異なります。

  • 単純性血管腫(平坦な赤あざ)
  • いちご状血管腫(半割したいちごを皮膚にのせたような赤あざ)

単純性血管腫(平坦な赤あざ)

単純性血管腫は生まれつき存在する平坦な赤いあざで、主に皮膚の表面に現れます。生まれつきの毛細血管の異常なので、毛細血管奇形と呼ばれることもあります。皮膚に広がる細い毛細血管が異常に増えて集まった状態で、大きさや形状はさまざまです。
単純性血管腫は年齢とともに色が変化することがありますが、完全に消えることはほとんどありません。また、身体の成長に伴い、あざの面積が拡大したり盛り上がったりすることもあります。

いちご状血管腫(いちご状に隆起する赤あざ)

いちご状血管腫は生後数週間から数ヶ月の間に現れることが多い血管腫で、最初は赤い斑点ができます。多くは半分に切ったいちごのように赤く盛り上がった形状になることからいちご状血管腫と呼ばれます。成長の初期段階で急速に大きくなって1才頃にピークに達し、その後はゆっくり色が落ちていき、多くの場合小学校低学年くらいまでの間に赤みや隆起もなくなることがほとんどです。

大きさや発生する場所はさまざまで、複数の部位に現れることもあります。大きくなる速度や最終的な大きさも、個々の血管腫によって大きく異なります。

大人に見られる赤いあざ(血管腫)

続いて、大人に見られる赤いあざについて、主要なものを解説します。

  • 老人性紫斑
  • 老人性血管腫
  • クモ状血管腫

老人性紫斑

老人性紫斑は、加齢にともない皮膚や血管、その周囲の組織が弱くなることが原因で内出血が生じている状態を指します。触れても痛みがないことが多く、転んだりぶつけたりした記憶がないことも多いため、突然紫色のあざがあらわれたと感じることも少なくありません。老人性紫斑は主に前腕に生じ、あざの周囲の皮膚との境目がはっきりしており、時間が経つにつれ自然に消失します。

老人性血管腫

老人性血管腫は、加齢とともに体幹や腕に見られる直径1〜3mm程度の小さな血管腫です。光沢のあるルビー色、ときには暗紅色をしており、半球状でドーム状に盛り上がった赤いホクロのような状態です。真皮の浅いところで毛細血管が拡張したり、増殖したりすることでできると考えられています。

クモ状血管腫

クモ状血管腫は、赤色の小さな斑点を中心に、クモの足が広がったように毛細血管が放射状に伸びている状態を指します。

妊娠中のエストロゲン上昇や、肝硬変などの肝機能障害時のエストロゲン不活化障害などを基礎として生じやすいことから、多くはエストロゲンの代謝異常による血中でのエストロゲン上昇に関連した血管拡張により発生すると考えられています。もちろんエストロゲンの上昇をともなわないクモ状血管腫も存在します。

赤いあざができたときに考えられる病気

赤いあざができた場合、何らかの病気のサインである可能性もあります。ここでは、赤いあざができた場合に考えられる病気について解説します。

  • 血友病
  • 急性白血病
  • 特発性血小板減少性紫斑病
  • 再生不良性貧血

血友病

血友病は、血を固める血液凝固因子が生まれつき不足している遺伝性の疾患で、出血が止まりにくいことが特徴です。血友病の症状には、関節や筋肉の内出血による腫れや痛み、鼻血、歯茎からの出血、皮膚の青あざ、血尿など身体のさまざまな部位に出血が起こります。

中でも関節内や筋肉内など深部組織での出血が多くみられ、運動するとひざが腫れたり、あざができたりしやすくなります。重篤な場合には、頭蓋内出血や消化管出血が生じたりすることもあります。

急性白血病

急性白血病は、骨髄内の造血幹細胞ががん化し、正常な血液細胞を作れなくなる病気です。急性白血病には主に急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病の2つのタイプがあります。

急性リンパ性白血病はリンパ球が、急性骨髄性白血病は骨髄球ががん化します。急性白血病の症状には、貧血による動悸や息切れ、感染症にかかりやすい体質、出血傾向などが見られます。

白血病を発症すると、異常な白血病細胞が骨髄で増えることによって骨髄での正常な血小板の産生が相対的に低下します。血小板が減少すると出血した際に血が止まりにくくなって皮下出血などの出血を生じやすくなり、あざができやすくなります。

特発性血小板減少性紫斑病

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、体内で血小板に対する自己抗体が形成され、血小板が過剰に破壊される疾患です。血小板の数が著しく減少するため出血しやすくなり、皮膚に点状や斑状の赤いあざ(紫斑)が現れます。

この病気には、発症後6ヶ月以内に改善する急性型と、6ヶ月以上続く慢性型があり、急性型は主に小児に、慢性型は成人に多く見られます。感染症後や、明確な理由なく自己抗体が生成されるケースがありますが、なぜ自己抗体ができるのかはいまだ解明されていません。

再生不良性貧血

再生不良性貧血は、骨髄の造血幹細胞の機能が低下し、赤血球、白血球、血小板3系統すべての産生が低下する病気です。これにより貧血、感染症への抵抗力低下、出血傾向といった症状が現れます。特に、紫色のあざは出血傾向のサインです。

赤いあざができたときの治療法

ここまで、赤いあざで考えられる原因について解説しました。

内出血によるあざは、何らかの基礎疾患が原因でなければ時間の経過とともに薄くなって消えるため、特別な治療を行わずに経過観察でよいでしょう。もしあざが進行性に拡大したり、その他全身性の症状をともなう場合は、まずは皮膚科や血液内科を受診し、診断と治療を受けることが重要です。

ここからは、それぞれの治療方法について解説します。

単純性血管腫の治療法

治療は、主にレーザーを用いて異常に増殖する血管を焼灼します。しかし乳児や幼児ではレーザー照射中に体を動かしてしまい病変部位に正確にレーザーをあてられないため、治療には全身麻酔を用いる必要があります。施術中じっとしていられる小学校高学年までは経過を見ることが勧められます。症例によっては色調がめだたなくなるケースもあるので患者さん本人が気にするようになるまで待つのが一般的です。

いちご状血管腫の治療法

いちご状血管腫はほとんどが自然に消退するため、積極的な治療を行わずに経過観察することが推奨されます。ただし、血管腫の位置や大きさが呼吸や食事の妨げになる場合や感染のリスクがある場合には、レーザー治療や薬物治療、稀に外科的除去が検討されることもあります。

老人性紫斑

加齢によって皮膚の血管が脆弱化し内出血が生じやすくなっていることが主な原因であるため、ほかの基礎疾患による可能性が否定できれば特別な治療を行わずに経過観察でよいでしょう。

老人性血管腫

老人性血管腫は年齢を重ねるにつれて現れることが多いですが、年齢だけでなく個人の皮膚の状態や健康状態にも左右され、若年層で発生することもあります。治療を希望する場合は、メスによる切除術やレーザー治療が用いられます。

クモ状血管腫

クモ状血管腫はエストロゲンの代謝異常により発生する症例もあるため、まずは皮膚科や内科を受診して、肝機能などの検査を受けるべきか相談してみましょう。

クモ状血管腫自体は基本的に経過観察でよいのですが、薬物治療やレーザー治療で血管腫をを焼灼する治療方法もあります。

まとめ

突然できた赤いあざや青黒いあざ、赤紫色のあざは内出血によるものであることが多く、基礎疾患や抗凝固剤(血液をサラサラにする脳梗塞や心筋梗塞後の治療)の使用によってあざができているのでなければ時間の経過とともに薄くなって消えるため、特別な治療を行わずに経過観察で構いません。

しかし生まれつきある赤いあざは血管の異常で発生する血管腫の可能性が高く、血管腫は乳児期に見られる平坦な単純性血管腫やいちご状血管腫から、成人後に生じる老人性血管腫、クモ状血管腫まで多くの種類があります。

多くの場合は焦らず様子を見て大丈夫ですが、血友病、急性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血など重篤な病気のサインであることもあるので油断はできません。

もしあざの範囲が急速に拡大したり、全身性の症状をともなう場合には、まずは皮膚科や血液内科の専門医を受診し、正しい診断を受けることが大切です。

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